英国との合意も弾みに、ポストコロナ社会へ踏み出す新年

冒頭、冬号のメッセージが遅れたことをお詫びいたします。しかし、待っていただいたおかげで、欧州委員会と英国の交渉団がEU脱退後のEU・英国関係に関する取り決めに合意したという、クリスマスにふさわしい、大変良いニュースをお知らせできることとなりました。

これはEUと英国の緊密なパートナーシップを構築する上で、大きな前進です。しかし、日本のような戦略的パートナーに確実性を提供し、日・EU・英の三者間のビジネスを円滑にするという意味においても、合意は同様に重要なのです。協定のない期間が生まれないよう、2021年1月1日から暫定適用されることを望んでいます。

行く年を振り返れば、異例の年であった2020年は、私たちの生活と働き方を見直し、健康を守り社会が回り続けるために必要不可欠な仕事をしている人々の役割を認識し、共に新型コロナ感染症のパンデミックと闘うための国際的な協力や協働の重要性を高める一年でありました。

新年は希望の兆しとともにやってきます。新型コロナ感染症のワクチンに進展があり、徐々により正常な生活に戻ることができるでしょう。同時に、変化も起きるでしょう。この一年の騒然とした出来事のせいで、仕事や生活の仕方に劇的に変わった部分があるからです。

過去数カ月の経験の多くは厳しいものでしたが、特に、共通の目標に向けた日本とEUの協力に新しい道を開く、前向きな動きに注目したいと思います。菅義偉総理は10月に、2050年までに日本を気候中立(実質排出ゼロ)にすると発表しました。パリ協定採択5周年の数週間前というタイミングで、日本の公約は気候アジェンダを前進させることへの国際的な関心を再燃させたのです。来年11月の第26回国連気候変動枠組条約締約国会合(COP 26)に向け各国が自国の国別貢献(NDC)を刷新する際には、全ての協定署名国が野心を高める必要があります。欧州連合(EU)は、つい数週間前に2030年の排出削減目標を1990年比で少なくとも55%に引き上げると決定し、その役割を果たしています。

2021年には、日・EU首脳協議が対面形式で開催され、シャルル・ミシェル欧州理事会議長とウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長を東京に迎えたいと願っています。これは、この一年の困難な状況にもかかわらず、戦略的パートナーシップをさらに深めていくという双方 の決意の証となるでしょう。 また、コロナ禍後のグリーンでデジタルな回復を推進し、生物多様性を保護し、循環経済を促進する上での日・EU間 の結束を示す、絶好の機会となるでしょう。

 

パトリシア・フロア
駐日欧州連合特命全権大使

Patricia FLOR
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary of the European Union to Japan