2020.12.24

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EU、2030年までの排出量55%以上削減をパリ協定の国別貢献として提出

EU、2030年までの排出量55%以上削減をパリ協定の国別貢献として提出

欧州連合(EU)理事会は2020年12月18日、EUおよびEU加盟国を代表して、2030年までに1990年比で温室効果ガスの排出量を55%以上削減するという目標を盛り込んだ、パリ協定に基づく「国別貢献(Nationally Determined Contribution=NDC)」に関する文書を国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に送付した。NDCは、排出量の削減および気候変動の影響への適応に関する各国の取り組みを定めたもので、パリ協定の下で締約国が果たすべき重要な義務である。EUは、EUおよびEU加盟国全体として、1つのNDCを提出している。

EUの2030年の削減目標はこれまで1990年比で40%以上だったが、今般その目標を引き上げることとした。これは、12月11日の欧州理事会会合でのEU各国首脳の合意に続き、同17日のEU理事会の承認を受けたもの。

パリ協定の下、2050年の気候中立に向けたEUのロードマップ(英語)。クリックで拡大

この野心的な新目標は、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が2019年12月の就任時の公約と合致する。2050年までの気候中立(実質排出ゼロ)の実現を目指す「欧州グリーンディール」戦略の道筋をつけることにも貢献している。なお、このEUの新たな2030年目標は、今後制定予定のEU「気候法」の中で法整備がなされていく。

「EUとEU加盟国は、パリ協定とその目標に強くコミットしている。われわれの目標は、2050年に気候中立化することだ。改定した目標を含むNDCを提出したことは、他国が後に続くようにという力強いメッセージを世界に発信している。われわれは気候危機に直面しており、その解決には全ての人の参加が必要だ。こうした意欲的な目標を掲げたことで、他国はEUがこの地球規模の移行の先頭に立つと頼りにしてよい」。送付にあたり、EU理事会議長国ドイツのスベンヤ・シュルツエ環境・自然保護・原子力安全大臣はこのように述べた。

送付に先立つ12月12日、国連および英国とフランスが共催した「気候野心サミット(Climate Ambition Summit)」においてシャルル・ミシェル欧州理事会議長は、「パリ協定から5年。オンライン形式でブリュッセルから参加し、こうした良い知らせ、力強いメッセージを届けることができて嬉しく思う。昨日、27EU加盟国の首脳は会合し、具体的かつ明確で野心的な公約をした。2030年までに温室効果ガスの排出量を55%以上削減するという野心的な目標だ。ちょうど1年前の2019年12月に、われわれは2050年に気候中立(実質排出ゼロ)を実現するという目標を掲げた。これは、われわれにとって完全なパラダイムシフトであり、今後も引き続き全面的に取り組んでゆく」と発言した。

NDCは、パリ協定とその長期的な目標の達成において中心的な役割を担っている。2015年、地球の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2度未満に抑えること、および、1.5度未満に抑える努力を追求することを目標に掲げた多国間合意であるパリ協定に、195の締約国が署名した。同協定では、2020年およびそれ以降5年ごとに、NDC の中で2020年以降の気候対策を発表することを各国に求めている。 NDCは、排出量の削減および気候変動の影響への適応に関する各国の取り組みを定めている。UNFCCC事務局に各国から送付されたNDCは、同事務局のNDC登録簿上で公表される。

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