2024.2.14
EU-JAPAN
5年前の2019年2月1日、欧州連合(EU)がこれまでに締結した最も野心的な貿易協定の一つである、日・EU経済連携協定(EPA)が発効した。両者を合わせた経済規模は世界のGDPのおよそ30%に達しており、このEPAはEUがこれまでに締結した中で最大の二者間貿易協定となっている。
このEPAには、物品貿易に関する高度の自由化(EUは99%、日本は97%の物品の関税撤廃)と、非関税障壁の削減が含まれている。同協定は、両者間の貿易上の障害を防ぐための協力の土台となっており、EUと日本は高い基準と共通の価値に沿った世界貿易ルールの確立を目指している。世界経済において保護主義的な動きがある中で、このEPAは、EUと日本という世界有数の経済圏が保護主義を拒否し、自由貿易を堅持・促進するという力強いメッセージとなっている。
また、本EPAでは、衛生植物検疫措置、貿易の技術的障害、サービス貿易、投資の自由化および電子商取引、政府調達、補助金、知的財産権保護、貿易と持続可能な開発、農業分野での協力および紛争解決など広範にわたる貿易に関するルールのほか、EUが締結した貿易協定の中で初めて気候変動に関するパリ協定に対する具体的な約束が盛り込まれた。さらに、日・EU双方の規制当局が合意した、規制協力のための新たな枠組みを扱った章も含まれており、貿易・投資に関する規制措置における透明性の向上を目指すとともに、優れた取り組み(グッド・プラクティス)についての情報交換などを行っている。
日本にとってEUは、中国、米国に次ぐ第3位の貿易相手であり、輸出先としては、中国、米国に次いで第3位になっている。一方、EUにとって日本は、アジアでは中国に次ぐ大きな貿易相手国で、2022年のEUの対外貿易では、輸出先として第6位、輸入先として第9位だった。
日・EU EPAの発効後に新型コロナウイルスのパンデミックを受けて世界経済が減速した時でさえも、両者間の貿易均衡は保たれ、その規模も堅調に増加してきた。
輸出と投資を促進するこのEPAは、双方に利益をもたらしている。ユーロスタット(EU統計局)の最新の数字によれば、物品とサービスを含むEUと日本の二者間貿易は、2022年に1,940億ユーロに達し、同協定発効前の2018年の1,600億ユーロから21%増加した。
また、対外直接投資をEU側から見れば、2021年に日本からの直接投資は2,116億ユーロ、日本への直接投資は847億ユーロとなった。
<EPA発効後の貿易額の増加>
2018年 | 2022年 | 増加率 | |
物品貿易 | 1,174億ユーロ | 1,410億ユーロ | 20.4% |
サービス | 426億ユーロ | 523億ユーロ | 23% |
このEPAの実施にあたっては、年1回、日・EU合同委員会(閣僚級)を開催し、立法措置の進展に関する情報交換や貿易上の懸念事項への対応など、多くの貿易に関するテーマについて協議している。合同委員会の下には13の専門委員会・作業部会を設置し、合同委員会への報告を義務付け、協定の内容を着実に実施してきた。
合同委員会はこれまでに4回開催され、欧州委員会のヴァルディス・ドンブロフスキス執行副委員長(貿易担当)と林芳正外務大臣(当時、現官房長官)が出席した最終会合は2023年4月4日に開かれた。
EPAの発効により、貿易の自由化以外の側面においてもEUと日本の間の連携は大きな成功を収めている。
EUと日本はこの5年間で、EPAの保証対象となる地理的表示(GI)を拡大してきた。GIとは、その地域ならではの伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの中で育まれてきた産品の名称の表示で、日・EU EPAでは対象産品は双方の市場内で同等に保護される。2019年のEPA発効時、EUでは211件、日本では56件のGIが保護対象となっていたが、2023年時点ではそれぞれ295件と132件にまで増加している。EU側のGIにはフランス産のブルーチーズ「ロックフォール」、イタリアのスパークリングワイン「プロセッコ」などがあり、日本側のGIには「神戸ビーフ」や「夕張メロン」などがある。
持続可能な開発に関する活動を支援するため、日・EU EPAは、双方の政府関係者が市民社会と対話する機会を設けることを定めており、これまでに共同対話は4回実施されている。この対話により、労働、環境および気候など、持続可能な開発に関するさまざまなテーマについて市民社会が関与できるようになるとともに、双方の政府との交流を深めることが可能になった。
さらに、国際労働機関(ILO)の中核的条約・勧告を批准するため、双方が自ら率先して継続的かつ持続的に努力することも合意に盛り込まれた。これはEUと日本の間で定期的に議論されてきたテーマであったが、日本が2022年7月にILOの「強制労働の廃止に関する条約(第105号)」を批准、翌年7月に発効し、重要な一歩が踏み出された。日本は太平洋地域で同条約を批准した初の国となり、リーダーシップを発揮した。
また、本EPA下の専門委員会の一つである「貿易・持続可能な開発委員会」やより専門的なレベルでの会合における人権デュー・ディリジェンス法制に関する両者間の取り組みは、2022年9月に日本政府が策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に貢献した。日・EU EPAの締結は、国際基準の採用と普及に寄与しただけでなく、EUと日本の企業がアジアやその他の地域のサプライチェーンで協力する機会を増やしたともいえる。
EUと日本の協力を拡大させるためにEPAは将来を見据えた構造になっており、同協定の範囲は新たな分野へと拡大しつつある。例えば、洋上風力発電分野における両者の規制協力など、EPAは気候変動対応にも役立っている。
また、EUと日本はEPAに「データの自由な流通」に関する規定を含めることに関して交渉してきたが、2023年10月、大筋で合意することを確認した。この合意により、煩雑な管理要件や保管要件なしにデータを効率的に扱うことが可能になり、企業の成長に向けた法的環境が整備される。同合意には、デジタル貿易に関する最新のルールが含まれており、金融サービス、運輸、機械から電子商取引に至るまで、大半の分野で活動する企業に実利をもたらすことが期待されている。
駐日EU代表部は2024年3月4日(月)、日・EU EPA 5周年記念イベントを開催する。イベントの模様をオンラインで配信し、これまでの5年間の緊密な協力と互恵的な貿易にかかわってきたEUと日本双方の当局者や企業などによる講演、成功事例やビジネスアンケート結果を紹介する。
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