2024.4.1

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「国際女性デー」とEUが掲げるジェンダー平等

「国際女性デー」とEUが掲げるジェンダー平等

創設時からジェンダー平等を基本原則と捉えてきた欧州連合(EU)は、女性の地位向上や社会進出の拡大を実現するため、さまざまな施策を実施してきた。国連においては、女子差別撤廃委員会(CEDAW)が2024年10月に新しい一般勧告(GR40)の採択を予定しているが、EUもこの勧告を歓迎している。3月8日の「国際女性デー」に合わせて、2020年に開始した「ジェンダー行動計画 III (GAP III)」を中心に、EUのジェンダー平等社会実現への取り組みを紹介する。

「全ての人に女性の参加促す責任」

EUは、各国政府、国際機関、民間企業、市民団体などさまざまなパートナーと協力し、ジェンダー平等社会の実現を目指している。女性の社会参加は、持続可能な開発、経済的繁栄、平和の達成と維持、そして安全保障の実現に必要であり、多様な人の声や視点を受け入れることは、全ての人に良い変化をもたらす。こうしたインクルージョンの促進は、より安全で豊かな明日につながる。

EUは2024年の「国際女性デー」を迎えるにあたり、ジェンダー平等に向けた取り組みに幅広い参加を呼び掛けるため、「全ての人に女性・女児の社会参加を促す責任がある」というメッセージを打ち出した。そして、その中で重点的に取り組むテーマとして、①女子教育による貧困状態からの脱出②女性政治参画による民主主義の強化とより良い意思決定の実現、③テクノロジー分野への女性進出による安全な社会実現―の3点を掲げている。

ジェンダー平等促進のための行動計画

欧州委員会とジョセップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は2020年11月、対外行動においてジェンダー平等と女性の地位向上を促進するための「ジェンダー行動計画III (GAP III)」を発表した。

2021年〜2025年を対象としたGAP IIIは、以下5つの行動の柱で構成されている。国際公約の達成と誰もが活躍できる世界の実現に向けて進展を加速させること、そして1995年の世界女性会議で北京宣言および行動綱領が採択されて以降この25年間で達成した進歩を守ることを目指している。

  1. 2025年までに、全ての新しい対外行動のうち85%をジェンダー平等と女性の地位向上に資するものにする。
  2. 多国間・地域・国それぞれのレベルで加盟国やパートナーと戦略的ビジョンを共有し、緊密に協力する。
  3. ジェンダーに基づく暴力との闘い、女性と女児の経済的・社会的・政治的地位向上の促進など主要分野に焦点を当て、進展を加速する。
  4. EUが模範を示して先導する。
  5. 結果を測定する。

記者会見するボレルEU上級代表(2020年11月25日、ブリュッセル)©European Union, 2020

ボレル上級代表は、GAP III発表時の記者会見で、「女性や女児の参画やリーダーシップは、民主主義、正義、平和、安全、繁栄およびより環境重視の地球にとって欠かせない。この新たなジェンダー行動計画でEUは、ジェンダー平等に向けてより多くの、またより早い進展を目指している」と強調した。

ジェンダー平等目的の新規対外行動

EUは、EU諸機関や各加盟国と連携する「チーム・ヨーロッパ(Team Europe)」アプローチの一環として、パートナー諸国や市民社会のジェンダー平等に向けた取り組みを支援し、ジェンダーに基づく暴力からの女性と女児の保護の強化、公的・政治的生活への参画拡大、教育・保健・社会的保護へのアクセス拡大、経済的地位向上など大きな成果を挙げてきた。欧州委員会と欧州対外行動庁は、GAP III開始から3年目を迎えた2023年11月、同計画に関する共同中間報告書を発表。計画期間を2025年から2027年まで延長することも明らかにした。

報告書で言及された主な成果は次の通り。

  • ジェンダーの平等を主要または重要な目的とする新規対外行動の割合を2025年までに85%にするという目標に関し、GAP III採択前の2019年の71%から2022年には72%に上昇した。
  • ジェンダー平等と女性の地位向上に対する資金は、2021年の約93億ユーロから2022年には約131億ユーロに増加。人道援助予算については、2021年度以降、全活動の96%でジェンダーと年齢への配慮を「強く」または「ある程度」組み込んでいる。
  • 2022年、EUと約100のパートナー諸国との間の政治、安全保障、人権に関する対話においてジェンダー平等が議題に上がった。そのうち33カ国では、ジェンダー平等に焦点が当てられた。
  • ジェンダー行動計画をパートナー国の状況に適応させた131の国別実施計画(CLIP)を策定した。
  • 2022年、全EU代表部の84%がジェンダー平等に関する市民社会との対話に参加した。
  • 国連と協力し、女性に対する暴力撲滅に向けた闘い、国連女性地位委員会への貢献、気候問題やデジタル分野の意思決定におけるジェンダー視点の推進を実施した。

駐日EU代表部で行われたジェンダー関連イベントに出席したヘレナ・ダッリ平等担当欧州委員(前列右)(2023年6月26日、東京)© European Union, 2023

ジェンダー平等に対するEUの戦略的かつ新たな取り組みには、加盟国や国際機関、パートナー諸国、市民社会、民間部門との緊密な協力が引き続き必要である。このような協力は、真の変化をもたらし、多くの女性・女児の発言力と主体性を高めることができる。

「国際女性デー」とは

北米とヨーロッパ全域で20世紀初頭に現れた、女性の労働条件改善や参政権などを求める運動に端を発し、「国際婦人年」に当たる1975年に国連が3月8日を「国際女性デー」に定めた。

2024年のテーマは「インスパイア・インクルージョン(包摂)」。ジェンダー平等を達成する上でインクルージョンが果たす重要な役割を強調し、全ての女性が評価され尊敬される環境をつくるための行動を呼び掛けている。

EUは今年の「国際女性デー」に際し、インクルージョンを促し、ジェンダー平等達成に向け尽力している女性や男性の声をウェブサイトで紹介している。

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