2024.7.8
WHAT IS THE EU?
欧州連合(EU)の母体である欧州経済共同体(EEC)の設立条約(ローマ条約、1958年発効)では、加盟国間で人、物、サービスおよび資本が自由に移動できる共同市場を創るという目標が掲げられました。
1985年、当時のEEC加盟10カ国のうち、西ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの5カ国が「人の移動の自由」の実現に向けて、域内国境を段階的に撤廃することに合意したのが「シェンゲン協定(The Schengen Agreement)」です。名称はフランス、ドイツの国境が交わるルクセンブルクの小さな村シェンゲンで締結されたことに由来します。
1999年発効のEUの改正基本条約「アムステルダム条約」には、「シェンゲン協定」および「シェンゲン協定を施行するための協定(The Convention implementing the Schengen Agreement)」が附属議定書として組み入れられ、法的にも「人の移動の自由」が保障されました。
シェンゲン協定締結国(シェンゲン圏)の域内では国境管理をなくす一方で、対外国境では出入国管理に共通のルールを導入。シェンゲン協定締結国は、観光・出張などを目的とした短期滞在用の圏内共通の査証、「シェンゲン・ビザ」を発行していますが、日本国発行の旅券(パスポート)の保持者は同ビザが免除されています。シェンゲン・ビザ保持者および免除者はいずれも、シェンゲン圏内であれば、原則的に出入国審査なしに自由に各国間を行き来することができます。
2024年6月時点で、EU加盟国27カ国中、アイルランドとキプロスを除く25カ国および非加盟国4カ国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)の計29カ国は、シェンゲン協定の下、域内国境審査の廃止に合意しています。ただし、2024年3月31日に締結国となったブルガリアとルーマニアに関しては、空路と海路の国境における出入国審査は廃止されましたが、陸路での出入国審査は継続しています。
<シェンゲン協定に定められた主な規則>
※ 域外国境での入国審査の際に、加盟国同士が特定の人および物に関するデータを共有・交換・照会できるシステム。犯罪や不法滞在の防止を目的とする。
日本国発行のパスポート保持者が、シェンゲン圏へのビザを免除される条件は、次の3つです。
滞在期間 | あらゆる180日期間内で最大90日間 |
渡航目的 | ・観光 ・出張などのビジネス目的 ・親族・友人訪問 ・文化・スポーツイベント参加や交流 ・ジャーナリストや取材目的 ・治療 ・短期的な勉強や研修 など |
パスポートの有効期間 | シェンゲン領域国からの出国予定日から3カ月以上残っており、かつ10年以内に発行されたパスポートを所持していること。 |
「あらゆる180日期間内で最大90日間」とは、任意の基準日から過去180日の間に「累積で90日を超えて滞在することはできない」という意味です。シェンゲン圏入域日と出域日もそれぞれ1日の滞在とカウントされます。
シェンゲン圏内の滞在日数は、シェンゲン圏以外のEU加盟国の滞在日数とは分けて計算されるため、例えばシェンゲン圏で最長90日間過ごした後、すぐにアイルランドに入ってそこで90日滞在することもできます。また、日本との二国間ビザ免除取り決めがあるオーストリア、ポーランドについては、シェンゲン協定で定められた滞在期間を超えて、通常は6カ月以内の滞在が許可されます。ただし、この両国からシェンゲン圏内外への移動の予定がある場合、目的国や経由国への出入国に問題がないか、経由するシェンゲン域内国の大使館や総領事館、入国管理当局などに事前に確認してください。
このほか、就学ビザや就労ビザ、居住許可証などで滞在していて、それらの期間が過ぎた場合は、失効した日からさかのぼった「180日間のうち90日間」というルールが適用されます。
既に何度かシェンゲン圏を訪れたことがある人は、EUの専用ウェブサイト「Short-stay Visa Calculator 」(英語)で滞在可能日数や入域可能日などを簡単に計算することができます。なお、このサイトは、滞在可能日数の目安を計算するもので、掲示された日数を法的に保障するものではないのでご注意ください。また、前述の二国間の取り決めによる追加滞在日数や、シェンゲン圏外のEU加盟国での滞在は考慮されません。確実な情報が必要な場合には、当該国の出入国管理当局等への確認が必要です。
①基準日の入力
「シェンゲン圏へ入る予定の年月日(Date of entry)」または「シェンゲン圏滞在中に確認しようとする年月日(Date of control)」の年月日を日日/月月/年年(西暦の下2桁)の形式で入力(サイトを開いた当日の日付から書き換える)。
②PlanningまたはControlの選択
①の日付について、計画中のシェンゲン圏への渡航で何日間滞在できるかをシミュレーションする場合はPlanningを、すでにシェンゲン圏に滞在していて、あと何日滞在可能か、あるいは、すでに滞在超過(overstay)になっていないかを確認する場合には、Controlを選択。
③過去の滞在期間の入力
左側の空欄に、①に入力した日付からさかのぼって180日以内の「シェンゲン圏への到着日」、右側に「シェンゲン圏からの出発日」を日日/月月/年年(西暦の下2桁)の6桁の数字で入力。例えば2024年2月3日から2月18日まで滞在したのであれば左欄に「030224」、右欄に「180224」。「/」は自動的に挿入され、「03/02/24」「18/02/24」と表示される。
シェンゲン圏滞在中で②でControlを選んだ場合は、最後の出発日の欄には①で入力した基準日と同じ日付を入力。
④計算ボタン
④のCalculate(計算)ボタンを押すと、③で入力したそれぞれの滞在履歴に該当する滞在日数がグレーの欄に自動的に表記されるとともに、右のエリアに残りの滞在可能日数や滞在超過日数が表示される。
⑤計算結果
2024年秋以降、シェンゲン圏の国に短期滞在目的で訪れる日本を含む非EU加盟国からの旅行者を対象に、電子登録による新たな出入域システム「EES(Entry/Exit System)」が導入される予定です。パスポートに記載されている氏名や生年月日、EESを使用した欧州各国への出入国日・場所、顔写真および指紋(生体情報)が電子的にシステムに登録されます。許可された期間を超過した場合や入国を拒否された場合も、その情報が記録されます。
EES導入の主な利点は、シェンゲン圏各国の国境審査の質と効率性の向上です。パスポートの出入国スタンプの代わりに国境管理手続きが自動化され、旅行者にとっては移動の利便性が増します。一方、出入国管理当局にとっては、国境警備の人員を増やさずに、EUへの旅行者の増加に対応できるだけでなく、許可のない長期滞在者(オーバーステイ)や、偽のID・パスポートを使用している渡航者を見つけることができ、最終的にはテロやその他の重大な犯罪の防止が期待されます。
EESによる個人情報の収集・記録は、データ保護規則を順守して行われます。また、こうした情報にアクセスできるのは、渡航者の入国および滞在を管理する欧州各国の当局のほか、法執行を目的とするユーロポール(Europol、欧州警察機関)などです。データは、入出国と入国拒否の記録に関しては、記録された日から3年間、個人情報を含む個別ファイルは最後の出国記録の日から3年と1日、出国の記録がない場合は滞在許可の有効期限から5年間の保管期間が終了すると自動的に消去されます。
具体的な運用開始時期など最新情報はEESの公式ウェブサイト(英語)を参照ください。
2025年以降、日本をはじめシェンゲン・ビザを免除されていた域外国からの渡航者は、シェンゲン協定加盟国への渡航前に、インターネット上で、「欧州渡航情報認証制度(European Travel Information and Authorisation System=ETIAS)」を通じて入国審査の申請を行い、認証を得る必要があります。これは、EU理事会が2018年9月にETIAS創設の規則を採択したことを受けた措置で、同様のシステムはすでに米国(ESTA)やカナダ(eTA)などで導入されています。
申請する内容は、(1)氏名や生年月日、出生地、国籍、自宅住所などの基本情報、(2)パスポート情報、(3)現在の就労先または在学先に関する情報、(4)ETIAS対象国への渡航・滞在計画、(5)過去の重大な過失や犯罪の有無、戦争・紛争地域への渡航歴、ETIAS対象国における入国拒否や強制送還の履歴といった適格性に関する質問―などです。
大半の申請は短時間で、遅くとも96時間以内に認証されることになっています。ただし、認証に時間がかかる可能性もあります。申請者によっては、追加の情報や書類の提出、あるいは、面接による審査を求められたりする場合があり、その場合はさらに30日ほどかかることがあります。このため、シェンゲン圏への渡航を予定されている方は、余裕をもって申請を行うことが望ましいです。
なお、申請1件につき7ユーロかかりますが、申請者が18歳未満もしくは70歳以上の場合は無料です。また、一度認証されると3年間有効となる見込みです(ただし、パスポートの残存期間が3年未満の場合はパスポートの有効期限日まで)。
具体的な運用開始時期など最新情報はEUのETIASの公式ウェブページ(英語)を参照ください。なお、同ページ以外にETIAS公式サイトは(日本語でも他言語でも)存在しませんので、ご注意下さい。
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