アジアと欧州の関係について考える

駐日EU大使である私にとって、欧州とアジアの関係を深めることは、重要な業務の一つです。11月5日と6日にルクセンブルクで第12回アジア欧州会合(ASEM)外相会合が開催され、また来年のASEM設立20周年を控えたこの時期に、EUの対アジア関係についてじっくり考えることは、大変大きな意味があると思います。

グローバル化が進んだ今、アジアと欧州の両大陸は、20年前には想像だにできなかったほどに緊密に結び付いています。政治指導者、ビジネスマン、学者、市民の直接交流が飛躍的に拡大するのみならず、両者は、同様の地球規模の課題や脅威に直面し、その解決のために対話と協力の経路を積極的に開いています。

アジアにとって、欧州が製品市場や投資提供者でしかない時代は過ぎ去り、両者間の安全保障協力を発展させる可能性が高まっています。また、欧州が、世界的な安全保障と平和構築の担い手として見られることが多くなってきたのも当然だと思います。数カ月前に、イランの核開発計画に関する歴史的合意が達成されました。これは、仲介役を買って出たEUが国際舞台において建設的な役割を演じた好例といえましょう。

ASEMでは、合わせて世界の人口、貿易、経済生産の6割を占める51カ国と2地域機関が一堂に会します。しかしこれは、今では欧州とアジアの国々が定期的に開催する会合の、一つにすぎないのです。相互理解を深めること、そして共通の懸念について話しあうことが出来れば、世界はさらに住みやすい場所になることでしょう。対アジア関係を長年担当してきた私自身の経験から、「ユーラシア」という概念は、単なる地理や地質学の域を超えたものになると、確信しています。

 

ヴィオレル・イスティチョアイア=ブドゥラ
Viorel ISTICIOAIA-BUDURA
駐日欧州連合特命全権大使