史上最大規模のEU研究助成プログラム開始

© European Union, 1995-2014
PART 2

拡大を続ける日欧の協働

優先分野を中心に広がる日・EUの科学技術協力

パート1では、FPの時代から行われてきた日本の研究者の参加についても紹介したが、科学分野における日本の先進性を考慮すると、まだまだ共同研究の分野や件数を増加させる余地はある。EUでは、ホライズン2020でも、科学技術分野における日本との協働をさらに拡大していく方針だ。

日・EU科学技術協力合同委員会の第2回会合では、過去2年間の共同公募の成果や、3つの重点項目(希少原料、航空、ICT)をはじめとする各分野での協力強化について議論が交わされた(2013年6月21日、東京)  © 1998-2014 Delegation of the European Union to Japan

そもそも日本と欧州委員会(EC)は、1994年以来、数年ごとに「科学技術フォーラム」を開催し、双方の科学技術政策や研究者交流などで対話や協力を続けてきた。この科学技術協力をさらに拡充・強化するために日・EU科学技術協力協定が締結され、2011年3月に発効した。その後、2011年、2013年に日・EU科学技術協力合同委員会が開催され、科学技術協力を強化し深化する議論が活発に交わされてきた。

こういった合同委員会の活動に基づいて、これまでにEUが日本と共同募集を行った分野には、情報通信技術(ICT)、希少原料(レアアース)、航空、超電導、太陽光発電などがあり、特にICT、レアアース、航空を含む輸送の3分野を優先度が高い分野に位置付け協力を強化している。もちろん他のさまざまな分野における参加も同様に活発化が望まれる。ここ2回の日・EU首脳協議では「日・EU科学技術協力の潜在力を解き放ち、研究・イノベーション分野におけるパートナーとしてさらなる協力を促進する」ことを確認している。政府間のハイレベルな合意と同時に、研究者からのボトムアップも十分に吟味しながら、日・EUの協力関係はより具体的なものへと変化している。

日・EU間の科学技術協力における優先分野

以上の優先3分野のほかにも日・EU間では、液体水素燃料電池、エネルギー貯蔵、炭素の捕捉と貯留、電気自動車、エネルギーの緊要物資などの非核エネルギーの分野、大気圏再突入に向けた実証機の開発、将来の航空宇宙機熱防御システムなどの宇宙産業の技術セクターのほか、医療・健康面では国際ヒトエピゲノムコンソーシアム、国際ヒトマイクロバイオームコンソーシアム、国際がんゲノムコンソーシアムなど多国間協力のイニシアティブをとっている。

日本とEUは、米国、ロシア、中国、韓国、インドなどの各国と共同で、国際熱核融合実験炉 (ITER) などの大型国際共同プロジェクトに参加している。同時に、ITER計画を補完・支援する目的で、日本とEUは原型炉に必要な技術基盤を確立するための先進的研究開発を実施する「幅広いアプローチ(BA)」活動を行っている。

ホライズン2020への参加ステップ

ホライズン2020には、EU加盟国28カ国に加え、関連諸国も特別な協定に基づきGDP比に応じた予算を持ち寄ることで参加できる(2014年12月現在、域外からの参加国は11カ国(※1))。参加国に住む5億を超える人々の生活を向上させるのが、ホライズン2020の目標である。欧州には世界人口の7%が住み、全世界の研究予算の24%が使われ、高被引用論文の32%が発表され、32%の特許が出願されている。ホライズン2020への参加は、このような膨大な知識の蓄積へのアクセスを意味する。前回のFP7から30%増、EU予算の8%を投じて行われる巨大プロジェクトである。FP7プロジェクトの枠内では、日本から直接参加した例は100件以上に上り、共同公募などの連携も年々進化してきた。これらの共同研究の概要、進捗や成果についてはEUの研究開発に関するデータベースCommunity Research & Development Information Service (CORDIS)で確認することができる。1990年以来、CORDISはEUが出資するプロジェクトの主たる情報源として活用されており、日本が参加する共同プロジェクトの情報も掲載されている。ホライズン2020は、世界で最もオープンな研究助成計画であり、日本の研究者にも多国間研究プロジェクトへの参加を呼び掛けている。

日本のパートナーは原則的に自らが参加する研究の資金を用意する必要があるものの、大規模プロジェクトに参加してパートナーと負担を分け合うことで、国際的なグループとの協働によって研究を加速できる。プロジェクト参加で国際標準化に関与できるメリットも見逃せない。日本の研究者が支援を受けられるERCおよびMSCAの運営は、大部分がEUの資金で賄われている。 ホライズン2020の資金助成は、ポータルサイト(下記)に詳細が記載されている。研究者、大学、企業などに幅広く参加を募るべく、FP7よりも事務手続きを簡略化しているのも大きな特徴だ。またホライズン2020の参加者支援としてナショナルコンタクトポイント(NCP)ネットワークが存在しており、日本では日欧産業協力センターが担っている。



(※1) ^ アイスランド、ノルウェー、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビ ナ、マケドニア、モンテネグロ、セルビア、トルコ、イスラエル、モルドバ、スイス

 

ホライズン2020のポータルサイト では、資金助成に関する詳細情報が確認できる。参加や公募情報に関する詳しい情報はHow to get funding から。  © European Union, 1995-2014

 

ホライズン2020が日本の研究者にもも たらす恩恵を強調するカラピペリス科学技術部部長

イノベーション大国であり産業先進国でもある日本にとって、なぜ研究分野での国際協力が不可欠になりつつあるのだろうか。駐日EU代表部のレオニダス・カラピペリス科学技術部部長「日本が、より規模の大きな多国間研究協力ネットワークに参加する恩恵は計り知れません。1国だけでは、研究にも、資金にも、ネットワークにも限界があります。ホライズン2020は、異分野の専門知識や多角的な視点とスキルを獲得して研究を進める格好の機会となります。論文の発表機会も増え、その影響力も効果的に増大できるでしょう」と語る。

先端科学が実現するイノベーション。研究室から市場へのダイナミズム。EUが繰り出す過去最大のプログラムは、これまで以上のブレイクスルーと、新発見と、世界初の技術を生み出すに違いない。