クロアチアのEU加盟

© European Union, 2013
PART 2

欧州という家族の一員に
――ミラ・マルティネツ・クロアチア大使インタビュー

http://www.euinjapan.jp/media/news/news2013/20130628/181919/

本年7月1日にクロアチア共和国(以下、クロアチア)が欧州連合(EU)への加盟を果たした。2013年は同国と日本の国交関係樹立20周年にもあたる。6月下旬、秋篠宮ご夫妻のクロアチア公式訪問に同行したミラ・マルティネツ駐日クロアチア共和国大使に、クロアチア国内の様子や、加盟までの道のり、そして加盟後に期待される事柄について話を聞いた。

―クロアチアから戻られたばかりとのことですが、EU加盟直前のクロアチアはどんな雰囲気でしたか?

マルティネツ大使 首都ザグレブでは誰もが、ようやくEUに加盟できることを喜んでおり、7月1日の加盟式典の準備に追われていました。その鮮明な印象がまだ心に焼き付いています。交渉には長い時間がかかったので、加盟国としての準備は十分整っていると思います。

―加盟交渉の過程では、どんな課題がありましたか?

マルティネツ大使 22年前の1991年6月25日にクロアチアは独立しました。その当初から、私たちにはいくつかの目標がありました。ひとつは、旧ユーゴスラビアからの完全な分離です。残念ながら、そのためには、攻撃してくる旧ユーゴスラビア連邦軍と戦火を交えなければなりませんでしたが。その後の大きな目標は北大西洋条約機構(NATO)への加盟で、2009年に達成しました。そして、次がEUへの加盟でした。

加盟に至るプロセスには、2000年のザグレブ・サミット(※1)から12年以上がかかりました。まずは加盟候補国になることですが、それは2004年6月に実現しました。クロアチアは交渉分野が35に変更となって以降、初めての交渉国だったこともあり、その後の過程は厳しいものでした(編集部注:第5次拡大の31分野から再編)。とはいえ、クロアチアの法体系を、いわゆるアキ・コミュノテール(EU法の集大成)に正式に合致させなければならなかったのは、クロアチアにとって非常に良かったと思っています。

マルティネツ大使

EUに懐疑的な人たちは、一部のEUの規定はクロアチアにとって不利益だと考え、すべてをEUに合わせるのではなく、ある部分は独自のやり方で進めるべきだと主張しています。交渉過程では、多くの政治的疑問が投げかけられました。交渉には(加盟に関する)問題を熟知している1,500人以上の専門家がかかわりましたが、さまざまな意見をまとめ、一般市民に伝えていくのは難しいことでした。

また、すべてのEU法を翻訳するため、かなりの時間と費用を要しました。しかし、いくらかかったとしても、それは私たちが自由と民主主義を実現するために必要でした。そして、私たちはそれら法律の翻訳を近隣国とも共有しようと、贈り物としてセルビアに提供もしました。

―加盟に対して反対意見はあったのでしょうか?

マルティネツ大使 もちろん、専門的な交渉内容がわからない一般のクロアチア市民は、日々の暮らしがEUへの加盟でどのように変わるのか、例えば、農民たちは自分たちの農産物がEUの市場で保護されるのかどうかなど、不安視していました。そうした不安に対する説明を行うのは政治家の使命でありました。

クロアチア政府としては、EUに加わることに疑問の余地はありませんでした。私たちは歴史を通していつの時も、欧州の一部だと感じていましたから、EUの外にとどまるという選択はないし、加盟国となるのが自然(normal)だと考えていたのです。独立をめぐる内戦の間も、そして独立してからも、クロアチア人の大多数がEUに加盟すべきだと考えていました。2012年1月の国民投票で66.27%が加盟に賛成したことが、これを如実に表していると思います。

東京のEU代表部にも7月1日の朝、議長国リトアニアのメイルーナス大使、シュヴァイスグートEU大使、マルティネツ・クロアチア大使(以上、左より)の立ち会いの下、クロアチアの国旗が掲揚された Photo by M. Collins, EU, 2013

―加盟に期待することは何でしょうか?

マルティネツ大使 他の加盟国と平等な立場になることで、前向きな成果が期待できると思っています。まず国境がなくなり、他の加盟国市民と同様の機会が得られます。クロアチアの学生も同じ条件で国外の欧州の大学に留学できますし、税関を通さずに貿易が可能となります。また、欧州議会に議員を送る、つまり、自分たちも意思決定の一角を担います。私たちはまさに、欧州という大家族の一員になるのです。

―金融危機は懸念材料ではありませんか?

マルティネツ大使 欧州で金融危機が起こった時、クロアチアは既に自分たちの危機を抱えていました。ですから、影響はありますが、大きな衝撃はありませんでした。ユーロの導入は加盟とは別の話になります。加盟と同時にユーロを導入する義務はないので、決定までには十分な時間があります。実際、クロアチアだけで決められることでもないのです。ユーロの導入は、我々がいつ、どれだけ準備が整っているかにもかかっていて、EU側が審査を行います。クロアチアの通貨はクーナですが、一部ではユーロ建てで値段が表示されることもあり、私は、クロアチアがユーロを導入するのはそう難しいことではないと思っています。

―最後に、秋篠宮ご夫妻が訪問され記念行事も行われましたが、20周年を迎えた対日関係をどうご覧になりますか?

マルティネツ大使 日本とは大変友好的な関係を結んでおり、その関係は常に発展しています。20年の間に両国から相互に多くの訪問が行われています。例えば、2008年のクロアチア大統領の訪日や、秋篠宮ご夫妻の今回のクロアチア訪問も良い例です。ご夫妻はクロアチアの主要都市を回り、自然や湖の美しさに感動されていました。大統領や首相、その他大臣との会談もなさいました。

秋篠宮ご夫妻を迎えるイボ・ヨシポビッチ大統領夫妻(ご夫妻右側)と民俗音楽グループ「ラド」(2013年6月21日、ザグレブの大統領公邸ヴィラ・ヴァイス) 在日クロアチア大使館提供

日本の経済団体も昨年と本年の2年続けて、クロアチアを訪問しています。今のところ、マグロの輸出を除けば、クロアチアからの対日輸出は多くありません。ただ、他の加盟国がすでに対日貿易の土壌を作ってくれており、クロアチアもEUの法体制を整えましたから、EU加盟で貿易関係も進めやすくなると思います。今後輸出が増えていくことを期待しています。

クロアチアを訪れる日本人観光客は多く、昨年だけで約15万人と、この地域の他の国と比較しても、かなり大きな数字です。秋篠宮ご夫妻は訪問中、日本人観光客とも親しげに言葉を交わされ、皆さんとても喜んでいました。クロアチアの若者も日本に高い関心を持っています。

(2013年6月26日 取材)

(※1)^ EU加盟国とバルカン5カ国の首脳が集まった初のサミット。ここで、クロアチアをはじめとするバルカン諸国が潜在的な加盟候補国であることが確認された。