2019.5.23

EU-JAPAN

着実に進むEUと日本の関係強化 ~第26回日・EU定期首脳協議~

着実に進むEUと日本の関係強化 ~第26回日・EU定期首脳協議~

本年に入って発効したEPAと暫定適用が開始したSPAにより、日・EU間の協力関係はますます深まっている。26回目の開催となる4月下旬に開かれた日・EU定期首脳協議では、これら2協定の実施状況を評価するとともに、約2カ月後に控えたG20大阪サミットを視野に入れた話し合いが行われ、今後のさらなる二者間の連携を示す共同声明を発表した。

志を同じくするパートナーであることを再確認

2019年4月25日、欧州連合(EU)のドナルド・トゥスク欧州理事会議長およびジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長と、日本の安倍晋三総理大臣との間で、第26回日・EU定期首脳協議がブリュッセルで開催された。本協議には、EUからフェデリカ・モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長、ならびに欧州委員会のユルキ・カタイネン雇用・成長・投資・競争力担当副委員長とセシリア・マルムストロム通商担当委員も参加した。

日本とEUは志を同じくするパートナーであり、相互の協力関係は、本年2月1日に発効した経済連携協定(EPA)と、同時に暫定適用が開始した戦略的パートナーシップ協定(SPA)により、大幅に深化している。今次の首脳協議もこれを反映し、両者間の友好と順調な協力関係を十二分に感じさせるものであった。

日・EUのEPAは、これまでに発効した貿易協定の中で世界最大の規模を誇る。EU企業の対日輸出は物品・サービス貿易を合わせて年間約860億ユーロ(2018年7月時点)に上り、EPA発効後は13%以上の増加が見込まれている。また、SPAは二者間、地域的また多国間の問題についての幅広い協力と対話を促進する協定で、世界の平和と安全、連結性(コネクティビティ)、持続可能な開発、気候変動、データ保護、司法・警察協力といった分野における二者間の関係強化の基礎を成すものだ。

今回の日・EU首脳協議は、EPAとSPAの実施状況を首脳同士が初めて評価する機会であったとともに、地球規模の問題に関し、ルールに基づく国際秩序や多国間主義、民主主義、大量破壊兵器の不拡散、開かれた市場、そして世界貿易機関(WTO)を軸とした国際貿易体制による自由で公正な世界貿易の促進への支持を再確認する機会でもあった。さらに、6月28日~29日に大阪で開催予定の、日本が初めて議長を務める20カ国・地域首脳会合(G20サミット)に向け、互いの立場を調整する場ともなった。

今回の首脳協議は、約2カ月後に開かれるG20大阪サミットへの足掛かりとしても重要な会合となった(2019年4月25日、ブリュッセル)
© European Union, 2019 / Source: EC – Audiovisual Service / Photographer: Etienne Ansotte

また、双方の首脳は、EPAの実施状況を確認した上で、個人データ保護についての国際的な議論の推進に向けてイニシアチブを取ることや、持続可能なコネクティビティと質の高いインフラで連携すること、二者間安全保障パートナーシップを強化する可能性について議論を進めることなどに合意した。

共同声明で鮮明に打ち出されたさらなる国際的協同と二者間関係の進展

首脳協議後に発表されたトゥスク議長、ユンカー委員長、安倍総理の共同声明では、冒頭で「われわれ日本とEUの首脳は、国際法の尊重に基づく平和、安全保障、持続可能な開発および繁栄のために協力する決意を再確認する」と表明。今後さらに協力関係を進展させていく意思を共有していることを強調した。

首脳協議の結果に関するトゥスク議長の発言をまとめたビデオ
© European Union, 2019

以下、声明の内容をかいつまんで紹介する。

1. 二者間関係

  • SPAの暫定適用開始とEPAの発効を、両者関係における最大の成果の一つとして歓迎する
  • 二者間および国際間での、ルールに基づく連携性へのコミットメントを明確に示す
  • 日・EU運輸協力を深化させる(可能な限り、本年中に両者の航空安全に関する協定に署名。航空業務の一定の側面に関わる協定についても、可能な限り早期に交渉する)
  • データが安全に流通する世界最大の地域を創出し、両者の仕組みの高い水準の類似性に立脚した、データ保護に関する相互の「十分性認定」決定を歓迎する
  • 研究とイノベーションに関するSPA条項へのコミットメントを再確認し、共同プロジェクトへの支援拡大に取り組む
  • エネルギーの安定供給とエネルギーイノベーションに関する連携強化の意思を確認する
  • 「日・EU教育・文化・スポーツ政策対話」を歓迎する

2. 地球規模の課題とガバナンス

  • ルールに基づく国際秩序を支持し、主要7カ国会議(G7)とG20の場で協力する
  • WTOを中心とする、ルールに基づいた多角的貿易体制を強化し、WTO改革の進展にも引き続き協調して取り組む
  • 両者間のデジタル協力を強化する。G20議長国である日本が「信頼性のある自由なデータ流通」(DFFT)イニシアチブの構想を提示するとともに、データの潜在性を活用するための「大阪トラック」の立ち上げに向け、協働する
  • 開かれた、自由で安定し、アクセスと相互運用が可能な、信頼できる、かつ安全なサイバー空間に対する強い支持を再確認する
  • 人工知能(AI)に対する人間中心のアプローチを推進する
  • 17の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げる国連の「2030アジェンダ」へのコミットメントを再確認する
  • パリ協定の目標達成のための取り組みを勘案し、国、企業、市民社会に対し、全ての面において気候変動に対する一層の行動を取るよう呼び掛ける
  • 環境に関する課題に取り組む決意を再確認し、特にプラスチックごみの環境への悪影響に対処する

3. 外交・安全保障政策

  • 国際的な平和と安定の促進に共同で貢献することへのコミットメントを確認する
  • 特に、海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティと危機管理の領域において、安全保障と防衛に関する対話と協力をさらに強化する

首脳協議後の共同記者会見における各首脳のコメント

トゥスク議長は、「われわれの戦略的パートナーシップが、現在ほど強かったことは過去にない。それは、われわれが自由民主主義と人権という価値を共有していること、そして開放性、協力関係、自由で公正な貿易に共同でコミットしていることに基づいている」と両者関係を評価した。また、日本が議長国を務める本年のG20の成功への全面的支援を示し、「日本にはEUを信頼していただきたい。われわれは、サミットが両市民のためだけではなく、ルールに基づいた全世界の秩序のために成功するよう最善を尽くす」と述べた。

トゥスク議長はまた、両者の地域情勢についても次のように触れた。「われわれはウクライナの独立性、領土の完全性、そして主権に対する全面的な支持を表明し続ける。また、朝鮮半島の平和維持についても、日本と関心を共有している。われわれは朝鮮民主主義人民共和国に対し、非核化すること、また全核兵器の完全かつ検証可能で不可逆的な解体に具体的に取り組むことを求める」。

首脳協議後に開かれた共同記者会見でコメントを発表する(左から)安倍総理、トゥスク議長、ユンカー委員長(2019年4月25日、ブリュッセル)
© European Union, 2019

ユンカー委員長は、EPAについて「日・EUは合わせて世界のGDPの3分の1を占め、合わせて6億人以上の人口から成る、新しい拡大市場を創出した」と、その意義を強調。また、連結性がいかに重要であるかにも言及し、「エネルギー、デジタル技術、運輸といった分野における連結性は、まず何よりも、市民をつなぐことを意味する。これが、われわれが学問分野を含めて文化面での関係も強化する理由だ。この点における両者の協力関係は、安倍総理のリーダーシップでますます容易になった感がある。何千キロ離れていても、両者は連帯と共通の価値を通じて結ばれている」と述べた。

安倍総理も「日・EU関係は、着実に深化している」と明言した上で、「国際社会で不確実性や経済的な保護主義が拡大する中、普遍的価値を共有する日・EU連携の重要性はますます高まっている」と発言。特に両者の連結性戦略に言及し、「わが国が推進する自由で開かれたインド太平洋とEUの欧州・アジア連結性戦略は、欧州とアジアをつなぐ広範な地域に繁栄をもたらすコンセプトであり、多くの共通点を有している。これらを軸に、日・EUのさらなる連携を模索していく」と強調した。

 

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