英国国民投票―EUの反応と今後の手続きは?

Q1. 英国の国民投票の結果を受け、欧州連合(EU)の指導者たちはどのように反応しましたか?

2016年6月23日に行われた国民投票で、英国はEUからの離脱を決めました。英国離脱の決定を受け、ドナルド・トゥスク欧州理事会議長、マルティン・シュルツ欧州議会議長、EU理事会議長国オランダのマルク・ルッテ首相、およびジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長は翌24日に共同声明を発表し、その中で「この決定は残念であるが、尊重する」と述べました。また、フェデリカ・モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長も声明を出し、「EUは現在もそうであるが、今後も、強力な主体であり、我々の世界中の友人にとって信頼できるパートナーであり続ける」と強調しました。

Q2.国民投票に先立ち、英国政府の要請で英国とEUが交渉した条件についてはどうなるのですか?

2016年2月18日、19日の欧州理事会(EU首脳会議)で合意された「EU内の英国の特別な地位を強化する合意(the UK Settlement)」は、消滅しました。

Q3. 離脱に関してEUの条約にはどのような規定があるのですか?

加盟国の離脱に関する規定は、EUの基本条約である「EU条約(Treaty on the European Union)」の第50条に定められています。同条は、第1項で、「全てのEU加盟国は、その憲法上の要請にしたがって、EUからの脱退を決定することができる」、第2項で「脱退を決定した加盟国は、その意図を欧州理事会に通告する。・・・」とし、続いて脱退交渉のための取るべき手続きを詳細に定めています。この手続きにかかる時間は、双方が延長に合意しない限り、最大で2年です。

なお、同50条の下で交渉を行っている間、EU法は英国に適用され続けます。

加盟国の離脱に関する規定は、2009年12月に発効した改正EU条約(リスボン条約)に、初めて盛り込まれた © European Union, 1995-2016

Q4. 50条手続きとはどのようなものですか?

英国からEUを離脱するという通告を受けた後、欧州理事会は、英国首脳を除いた会合において、脱退のための取り決めを定める協定の交渉指針に全会一致で合意しなければなりません。協定は、同じくEU基本条約である「EUの機能に関する条約」の第218条第3項にある国際協定に関するルールによって交渉されます。

つまり、欧州委員会が英国を除いた加盟国の閣僚からなるEU理事会に勧告を提出し、同EU理事会が交渉開始の承認およびEU側の交渉官または交渉団の長を指名する決定を採択します。交渉された協定は、EU理事会において、英国を除いた27カ国の65%の人口を代表する72%以上の票による特定多数決で採択される必要があります。また、最終合意は欧州議会の単純多数決で承認されなければなりません。

補足情報

^ EU条約第50条

  1. 全てのEU加盟国は、その憲法上の要請にしたがって、EUからの脱退を決定することができる。
  2. 脱退を決定した加盟国は、その意図を欧州理事会に通告する。欧州理事会が定める指針に照らして、EUは、当該国のEUとの将来の関係のための枠組みを考慮しながら、脱退のための取り決めを定める協定を当該国と交渉し、締結する。その協定は、EUの機能に関する条約218条第3項にしたがって交渉される。同協定は、欧州議会の同意を得た後、特定多数決でEU理事会によりEUを代表して締結される。
  3. EUの諸条約は、脱退協定の発効日より、もしくは協定を締結できない場合には第2項に言及された通告から2年後より、欧州理事会が当該国との合意の上でこの期間の延長を全会一致で決定しない限り、当該国への適用を終える。
  4. 第2項および第3項の目的を果たすため、脱退する加盟国を代表する欧州理事会もしくはEU理事会の構成員は、欧州理事会もしくはEU理事会の議論あるいはそれに関する決定には参加しない。特定多数決は、EUの機能に関する条約第238条3項(b)によって定義される。
  5. EUから脱退した国が再加盟を要請する場合、その要請はEU条約第49条に規定された手続きに従う。

 

関連情報

「欧州連合条約(Treaty on the European Union)」および「欧州連合の機能に関する条約(Treaty on the Functioning of the European Union)」(英語

EUの法律はどのように決められていますか?」(EU MAG 2013年8月号 質問コーナー)