2012.5.25
Q & A
Q1. 欧州連合(EU)には議長や委員長などの役職があると聞きますが、それぞれ何を代表しているのですか?
EUには理事会(Council)、議会(Parliament)および委員会(Commission)という主要機関があり、それぞれの長はすべて英語でPresidentと呼ばれます。駐日EU代表部ではこれら3人のPresidentsの日本語を区別し、理事会と議会は「議長」、委員会は「委員長」としています。英語では企業のトップも国の代表もpresidentですが、日本語では所属機関の性格によって、「社長」「会長」「大統領」など、異なる肩書きを用いるのと同じです。
理事会には全加盟国の首相・大統領が集う欧州理事会(European Council、EU首脳会議)と加盟国の閣僚が集うEU理事会(Council of the EU)があり、どちらも加盟国を代表します。また、欧州議会は直接選挙で選ばれた議員を通じて加盟国の市民を代表します。なお、EU理事会の各会合の議長は外務理事会を除いて加盟国が輪番制で務めます(Q3参照)。
欧州理事会は政治的最高意思決定機関としてEUの進むべき指針を示し、EU理事会と欧州議会は共同でEUの立法の責任を担います。ただし、欧州理事会は立法権限を持っていません。欧州委員会はEUの行政機関として、法令の立案、政策の施行、法の執行、国際条約の交渉などを行います。
Q2. EU全体を代表してG8サミットなどに出席するのは誰ですか?
2009年12月にEUの機構制度改革を定めたリスボン条約が発効しました。これに伴って創設された欧州理事会の常任議長(Permanent President of the European Council)は、従来の各加盟国輪番の議長に代わる職責として注目され、日本の報道では「EU大統領」と紹介されました。ただ、欧州理事会の議長は多くの国の大統領のように国民の直接または間接選挙によって選ばれるのではなく、欧州理事会を構成する首脳によって選ばれます。
初代の常任議長に就任し、本年6月の再任が決まっているヘルマン・ヴァンロンプイ議長は、主要8カ国首脳会議(G8)と主要20カ国・地域首脳会議(G20)の正式メンバーであるEUの代表として会合に出席します。また、欧州委員会委員長(現職ジョゼ・マヌエル・バローゾ)にもEUを代表する権限が与えられています。G8やG20など首脳レベルの国際会合においてEUを代表するのは、欧州理事会議長と欧州委員会委員長の2人なのです。
Q3. EUの上級代表は何をする人ですか?
リスボン条約(Q2参照)で新設されたもう一つの役職が、EU外務・安全保障政策担当上級代表(High Representative of the Union for Foreign Affairs and Security Policy)です。国で言えば外務大臣に相当するポストで、現職はキャサリン・アシュトン上級代表です。EU理事会の従来の輪番の議長に代わり、加盟国外務閣僚が構成する外務理事会会合の議長を務めるほか、欧州委員会の副委員長も兼任します。外交、安全保障、通商、開発、人道援助、国際交渉などのEUの対外政策を連係させ、より効率的で一貫した行動が取れるようにしているのです。アシュトン上級代表は、G8 の外務大臣会合にEU代表として参加するほか、例えば日本の外務大臣との閣僚級二者間協議においてEUを代表します。
欧州連合の主な機関
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欧州理事会常任議長の役割
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常任議長の任期は2年半で、一度だけ再任ができます。その役割はほぼ次のようなものです。 (1) 欧州理事会の会合の議長を務め、議事を円滑に進行する 欧州理事会は全加盟国の首脳ほか、常任議長と欧州委員会委員長で構成され、外務・安全保障政策上級代表も参加するEUの政治的最高意思決定機関です。常任議長は、欧州理事会の円滑な進行を確保し、外務・安全保障政策上級代表の権限を侵さない範囲で、EUの共通外交・安全保障政策(CFSP)についてEUを対外的に代表します。 |
欧州委員会
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欧州委員会は欧州連合(EU)の行政執行機関で、EU加盟27カ国の各国から1名ずつが委員に任命されます。欧州委員会は主に次の4つの役割を果たします。 (1) 欧州議会および欧州理事会に法案を提出する 欧州委員会の委員長の任期は5年です。 |
欧州議会
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EUの立法機関である欧州議会には5年に一度の直接選挙で選ばれる議員が754人(※1)います。加盟各国の人口に比例して国別に議席数が割り当てられます。議長は2年半ごとに選ばれます。現在の議長は2012年1月に選ばれたマルティン・シュルツ議員(ドイツ出身)で、任期は2014年7月初めまでです。 |
EU理事会と議長国
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欧州議会とともにEUの立法機関であるEU理事会は全EU加盟国政府の閣僚で構成され、会合には10の政策分野(一般、外務、経済・財務、司法・内務、雇用・社会政策・保健・消費者問題、競争力、運輸・通信・エネルギー、農業・漁業、環境、教育・青年・文化)ごとに担当の閣僚が出席します。外務理事会以外のこうした会合の議長を務めるのは6カ月ごとに交代する議長国(Presidency)です。 議長国の役割は、全体的な政治課題を設定し、EU理事会の職務を進めて成果を生み出し、加盟国間で議論が対立した際には妥協案を示すことであり、誠実で中立的な調停役の機能が求められます。2020年上半期まで全27加盟国の議長国の順番が決まっています。 |
(※1)^ 2013年7月にクロアチアが加盟すれば766人に増える。リスボン条約(2009年12月発効)では議員数は750人+議長1人と定められており、次期選挙までは移行期にあたる
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