2012.2.17
FEATURE
議長国デンマークのロゴ
2012年1月1日、デンマークはEUの立法機関のひとつ「EU理事会」(閣僚理事会)の議長国となった。1973年にEC(欧州共同体)に加盟して以来、1973年下半期、1978年(上半期)、1982年(下半期)、1987年(下半期)、1993年(上半期)、2002年(下半期)に続き、7度目の議長国就任となる。ベテラン議長国デンマークのこれまでの特筆すべき実績のひとつに、1993年の任期中に、東欧諸国がEUに新規加盟する際の条件「コペンハーゲン基準」をまとめたことが挙げられよう。このたびの就任に際し、デンマークは半年にわたる議長国の重点項目として、「責任ある欧州」、「ダイナミックな欧州」、「環境にやさしい欧州」、 「安全な欧州」の4点を掲げている。
1)責任ある欧州
欧州が現下の危機を脱するためには、持続可能な成長と雇用創出が必要だ。昨年12月9日の欧州理事会で、加盟国の財政規律を向上させ、欧州に経済的安定をもたらすための重要な決定がなされた。デンマークは議長国任期中にこれらの決定の実行に取り組む。また、経済ガバナンス向上のために昨年導入されたヨーロピアン・セメスター(財政政策の監視と調整の枠組み)をはじめとする諸施策の着実な実施も課題であり、2014年から2020年までの予算に関する多年次財政枠組み交渉も重要な任務だ。
2)ダイナミックな欧州
短期的にも中長期的にも、欧州には経済成長と失業率低減を実現する必要がある。欧州経済の成長のためには、市民と企業の双方を利する単一市場の発展が重要であり、教育、研究、イノベーション、ジェンダーの平等、労働市場などの強化も求められる。
3)環境にやさしい欧州
EUは再生可能エネルギーの拡大、エネルギー効率の向上、温室効果ガスの排出削減を通じ、気候変動とエネルギーに関する目標達成に努めなくてはならない。環境に配慮した運輸政策、単一市場共通の環境基準、持続可能な消費・生産パターンの策定が求められる。
4)安全な欧州
欧州市民の安全を守り、欧州の国際的影響力を強化するには、加盟国間の協調が欠かせない。安全保障、貿易開発分野における欧州の影響力を維持するため、加盟国には移民政策、テロや国境を越えた犯罪対策のためにさらなる協力が求められる。デンマークはEU市場へのアクセスやEU拡大政策をはじめ、緊密な協調を求めるEUの近隣諸国を支持している。さらに、欧州対外行動庁の強化に積極的に取り組むことを表明している。
EUには、2つの理事会(Council)がある。ひとつは全加盟国を代表する閣僚によって構成され、欧州議会とともにEUの立法を司る「EU理事会」(Council of the European Union、閣僚理事会とも呼ばれる)。もうひとつは、EUの全体的な政治指針と優先課題を最高政治レベルで決定する「欧州理事会」(European Council、EU首脳会議とも呼ばれる)で、これは加盟国の首相または大統領、および同理事会議長と欧州委員会委員長で構成される。
EU理事会には議長として特定の人物がいるわけではなく、加盟国が6カ月ごとに輪番制でEU理事会議長国(Presidency)を務める。また、2009年12月1日に「欧州連合条約および欧州共同体設立条約を修正する条約(リスボン条約)」が発効するまでは、EU理事会議長国の首脳が欧州理事会の議長を務めていた。しかし、リスボン条約の発効によって欧州理事会がEUの正式な機関となり、欧州理事会に常任議長(President、現職はヘルマン・ヴァンロンプイ)が誕生した。任期は2年半、一度に限り再任が可能だ。常任議長は、同理事会の職務を円滑に進め、欧州理事会内の結束と意見一致の促進に努めるとともに、対外的には欧州委員会委員長やEU外務・安全保障政策上級代表と共に域外国との首脳会議でEUを代表する。
一方、EU理事会の議長国は、EU理事会の各会合の議長役を務める。EU理事会には、総務理事会、外務理事会、経済・財務理事会、司法・内務理事会、雇用・社会政策・保健・消費者問題理事会、競争理事会、運輸・通信・エネルギー理事会、農業・漁業理事会、環境理事会、教育・青年・文化理事会の10の政策分野別会合があり、実際には、議長国の各政策分野を担当する閣僚が議長となる。EU理事会の職務を進めて成果を生み出すことや、加盟国間で議論が対立する場合に妥協案を示すことが議長国の責務とされるため、議長国には誠実で中立的な調停役としての行動が求められる。
ただし、EU理事会の外務理事会はEU外務・安全保障政策上級代表(現職はキャサリン・アシュトン)が議長を務める。なお、リスボン条約発効以降、上級代表の指揮の下で欧州対外行動庁(EEAS)がEUの対外行動を司ることとなり、日本をはじめとするEU域外においては、欧州対外行動庁の下で活動するEU在外代表部が議長国の役割を担うこととなった。
デンマーク議長国のロゴで飾られたブリュッセルのEU理事会ビル
© The Council of the European Union
2009年12月ににリスボン条約が発効してからは、任期の連続する3カ国が「トリオ議長国」として協力するシステムが正式に導入された。これによって、1年6カ月にわたる共通政策プログラムに3カ国が一体となって取り組むこととなり、議長国制度の一貫性が高まった。また、長く加盟している国と比較的最近加盟した国がトリオを組むことにより、EU内の多様性やバランスが考慮され、EU理事会の効果的な運営に寄与すると期待されている。
現在、2007年から2020年上半期までで27の全加盟国の議長国任期が決められており、それ以降の就任順は2017年7月1日までに定めることとなっている。現在の「トリオ議長国」および今後議長国となる国々は次の通りだ。
2011年下半期
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2014年下半期
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イタリア
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2016年上半期
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オランダ
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2012年上半期
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2015年上半期
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ラトビア
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2016年下半期
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スロヴァキア
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2012年下半期
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キプロス
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2015年下半期
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ルクセンブルク
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2017年上半期
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マルタ
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2013年上半期
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アイルランド
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2019年上半期
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オーストリア
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2017年下半期
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英国
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2013年下半期
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リトアニア
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2019年下半期
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ルーマニア
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2018年上半期
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エストニア
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2014年上半期
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ギリシャ
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2020年上半期
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フィンランド
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2018年下半期
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ブルガリア
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2012年上半期の議長国であるデンマークは、2011年下半期の議長国であるポーランド、2012年下半期の議長国キプロスとともに議長国トリオを形成している。トリオの共通課題として、EUの新予算、北アフリカ情勢、東方パートナーシップ、失業・貧困との闘いが挙げられている。
デンマーク議長国公式サイト(英語)はこちら。
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