2012.11.2

Q & A

アジア欧州会合(ASEM)とは何ですか?

アジア欧州会合(ASEM)とは何ですか?

更新情報:2018年2月にQ1の参加国・機関にかかわる部分とQ3のEUの欧州対外行動庁に関する部分を最新情報に更新しました

Q1. アジア欧州会合(ASEM)とは何ですか?

ASEMのロゴ。アジア的な毛筆体とローマ字Eを組み合わせることにより、アジアのAとヨーロッパのEの2文字を表現している。 © Asia-Europe Meeting

アジア欧州会合(Asia-Europe Meeting=ASEM)は、グローバル化の加速に伴い、活発な変容と発展を遂げる欧州・アジアの両地域間の対話を強化する必要があるとの共通認識から、1996年に設立された相互協議の場です。ASEMは、欧州・アジア間の非公式な協議の場と位置付けられており、両地域の間に未来を見据えた新しい協力関係を構築していくことを目的にしています。

1996年3月、タイのバンコクで開催されたASEM第1回首脳会合には、欧州連合(EU)加盟国15カ国(当時)と欧州委員会およびアジア10カ国が参加しました。ASEMはその後拡大を続け、EU28カ国を含む欧州側30カ国とアジア側21カ国、およびEUとASEAN事務局計51カ国2機関により構成されるまでになっています(2018年2月現在)。ASEMの全参加国を合わせると、世界全体の人口、GDP、貿易額の全てで、約6割を占めています。

 

アジア欧州会合(ASEM)参加国・機関(2018年2月現在
欧州:30カ国1機関 アジア:21カ国1機関
ベルギー、ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、エストニア、アイルランド、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、イタリア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロヴェニア、スロヴァキア、フィンランド、スウェーデン、英国(以上EU加盟国)、ノルウェー、スイス、EU ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム(以上ASEAN10カ国)、オーストラリア、バングラデッシュ、中国、インド、日本、カザフスタン、韓国、モンゴル、ニュージーランド、パキスタン、ロシア、ASEAN事務局

 

Q2. ASEMの特徴は何ですか?

ASEMの大きな特徴として、以下の4点が挙げられます。

  • 非公式性(Informality)
    ASEMは、欧州とアジアが、政治や経済、社会等の互いに共通する関心事項について、既存の枠組みにとらわれることなく、幅広く対話するオープンな場を提供します。
  • 多元性(Multi-dimensionality)
    ASEMにおいては、欧州とアジアが関心を共有し得る政治、経済、社会に関する事項がすべて同等に扱われ、また協議されます。
  • パートナーシップの平等性の強調(Emphasis on equal partnership)
    ASEMは、援助を土台とした二者間関係とは異なり、相互尊重と相互利益を土台とした協力と対話のプロセスを育みます。
  • ハイレベルと草の根レベルの双方の重視(Dual focus on high-level and people-to people)
    ASEMは、首脳会合の開催などを通じて、欧州・アジア間のハイレベルでの関係強化に取り組むと同時に、市民による草の根レベルの相互交流をさまざまな分野で促進させることに尽力しています。

Q3. ASEMの具体的な活動について教えてください。

ASEMの首脳会合は、2年ごとに開催されます。また、外務大臣会合、経済大臣会合、財務大臣会合についても定期的に開催されているほか、教育、環境、文化など各分野の担当閣僚会合や、高級実務者会合も開催されています。

なお、ASEMは常設の事務局を置かないことから、EUとアジアから2カ国・機関ずつ、合計4カ国・機関が調整役を順番に務めています。ただし、EUの場合は欧州対外行動庁(European External Action Service=EEAS)とその時のEU理事会の議長国がASEMの調整役を務めますので、EEASは常に調整役を担っていることになります。

ASEM第8回首脳会合(2010年10月、ブリュッセル) ©European Union, 2012

ASEMは、政治分野、経済分野、社会・文化・教育分野を3本柱に活動を行っています。

  • 政治分野(Political Pillar)
    政治分野における協議は、ASEMでも最も活動に行われてきた活動のひとつです。これまでに、国際情勢、安全保障、多国間主義といったテーマを中心に、テロ対策や大量破壊兵器、移民問題、環境・気候変動、人権やグローバリゼーションなど、欧州・アジア地域はもちろんのこと、グローバルな関心に沿った幅広いテーマについて、自由かっ達な意見交換が行われてきました。EUは、地域統合や環境問題・持続的な開発、社会的統合の強化、文化的多様性などに対する取り組みを通じて得られた知識と経験を、ASEMを通じてアジアと共有することで、その役割を果たしています。政治分野における協議の成果は、欧州・アジア両地域のコンセンサスとして、議長声明(「すべて人々の幸福と尊厳のために」-ASEM8)や政治宣言(ブリュッセル宣言「グローバル経済のより効果的なガバナンスのために-ASEM8)の形で世界に向けて発出されます。
  • 経済分野(Economic Pillar)
    ASEMは、ダイナミックに変容している欧州・アジア間の経済関係を、対話を通じて強化する役割を担っています。これまでに、貿易や投資における規制の撤廃や、自由貿易と多国間主義の促進、世界貿易機関(WTO)の協議の推進を図るなど、グローバリゼーションと持続可能な開発を念頭においたさまざまな協議が行われてきました。その成果は、ASEM貿易円滑化行動計画(EFAP)やASEM投資促進行動計画(IPAP)となって結実しています。また、欧州とアジアの民間セクターが参加する協議の場として、毎年、アジア欧州ビジネスフォーラム(AEBF)が開催されています。AEBFにおいては、官民の意見交換や民間セクター間の交流が、欧州・アジア両地域をまたいで行われます。特に、経済政策や貿易・投資体制に関する民間セクターからの問題提起や提案は、現状に即し実用性に富むと高く評価されています。
  • 社会・文化・教育分野(Social Cultural and Educational Pillar)
    ASEMは、欧州・アジア両地域における多様な歴史・社会・文化的背景を相互に尊重する目的で、さまざまな文化や芸術、教育交流を実施しています。教育や文化、環境、労働や移民問題に関する担当閣僚会合を通じて、両地域間の対話と理解の促進が図られているほか、欧州・アジアの新しい時代を担う人材の育成など、市民による草の根レベルの相互理解を深める活動も多く実施されています。草の根レベルの交流事業は、シンガポールにあるアジア欧州財団(Asia-Europe Foundation=ASEF)が中心となって実施しています。ASEFは、ASEM参加国の拠出金により運営される、ASEM唯一の常設機関です。EUは、ASEFに対する資金の拠出はもちろん、文化交流・教育プログラムやワークショップ、レクチャーツアー、セミナー等の実施を通じて、ASEFの活動を活発に支援しています。一例を挙げれば、ASEFは2週間の異文化学習プログラム「ASEF大学」を開催しており、そこに参加した若者たちは、ASEFUANという同窓会組織を立ち上げ、長期的な交流活動を続けています。また、欧州委員会の留学支援プログラム「エラスムス・ムンドゥス(Erasmus Mundus)」が、ASEM教育大臣会合の高い評価を受けた結果、ASEM参加国を対象とする高等教育レベルの学術交流プログラム「アセムンドゥス(ASEMUNDUS)」(ASEFと欧州委員会が共同出資)が実施されることとなりました(2009年-2012年)。

「第18回ASEF大学」には、欧州・アジア33カ国から42人の学生が参加した(2012年8月-9月) © Asia-Europe Foundation 2012

Q4. ASEMはその他の多国間・多地域間機関とどう異なるのですか?

ASEMにおける対話の場は非公式とされており、ASEM参加国は、既存の枠組みにとらわれることなく、自由な立場で協議に臨み、より開かれた対話を行うことができます。そこで、例えば、将来的な政策の方向性についてアイディアを自由に表明して意見交換を図ることや、その他の多国間協議の場で具体的な結論を出す前の事前協議の機会として、ASEMが活用されています。いうならば、ASEMは、欧州・アジア両地域間に「本音トーク」の場を創出し、相互理解を増進させるとともに、既存の二国間、あるいは多国間・多地域間の枠組みを補完する役割を果たしているのです。

Q5. 直近のASEMの活動について教えてください。

絹糸9本をモチーフに、アジアのaとヨーロッパのeの2文字を表現しているASEM9のロゴ。絹製品はラオスの伝統工芸品である Copyright © 2011 ASEM9

2012年11月5日-6日には、ASEM第9回首脳会合(ASEM9)がラオスの首都ビエンチャンで開催されます。ASEM9には、EU加盟国の首脳とともに、ヴァンロンプイ欧州理事会議長とバローゾ欧州委員会委員長が出席し、アジアのパートナーの首脳たちとの協議に臨みます。ASEM9は、ASEMにとって本年最も重要な行事であると同時に、ホスト国ラオスにとっては、これまで開催を受け入れた中で最大規模のイベントとなるそうです。また、ASEM9においては、ノルウェー、スイス、バングラデシュの新たな参加国を迎える式典も行われることになっています。これにより、ASEM参加国・機関数は51に上ることとなります。

ASEM9のテーマは、「平和のための友好、繁栄のためのパートナー(Friends for Peace, Partners for Prosperity)」です。首脳会合においては、食糧・エネルギー保障、持続可能な開発、経済危機、気候変動、災害対策、社会・文化交流、また今後のASEMの方針になどついて、幅広い協議が行われる見込みです。また、ASEM9に関連して、ラオスは第7回アジア欧州議員会議(ASEP、2012年10月)、第9回アジア欧州市民フォーラム(AEPF、2012年10月)、第13回アジア欧州ビジネスフォーラム(AEBF、2012年11月開催予定)が開かれています。

なお、2012年、閣僚レベルでは、ASEM第4回環境大臣会合(2012年5月)、ASEM第5回文化大臣会合(2012年9月)、ASEM第4回労働・雇用大臣会合(2012年10月)がそれぞれ開催されています。

関連情報

EUとASEMの関係(EEASのサイト)
ASEM公式サイト
ASEM第12回首脳会合公式ページ(2018年10月、ブリュッセルで開催)
EUとASEMの商品貿易統計(プレスリリースの日本語仮抄訳)

更新情報

Q1とQ3の内容の一部とリンク先を更新 (2018/02/21)

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