2018.6.11

Q & A

シェンゲン協定と日本人のビザなし滞在について教えてください

シェンゲン協定と日本人のビザなし滞在について教えてください

EUの23カ国とEFTA加盟国で構成する「シェンゲン圏」では、原則的に出入国検査なしに自由に国を行き来することができる。圏内に短期滞在する際のビザ免除の条件や滞在可能日数、その計算方法などを解説する。

Q1. 日本人は欧州連合(EU)加盟国に短期滞在する場合は査証(ビザ)が必要ないということですが、さらに、域内を移動するのにパスポート提示が不要な国々はどこですか?

EU加盟27カ国のうちの23カ国(オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロヴァキア、スロヴェニア、スペイン、スウェーデン、クロアチア)は、EU域内での人の自由な移動を実現する「シェンゲン協定」(協定が締結されたルクセンブルク・シェンゲンの地名に由来)を結んで域内の国境管理をなくす一方で、対外国境では出入国管理に共通のルールを導入しました。シェンゲン協定には、EUとの関係が非常に深い欧州自由貿易連合(EFTA)加盟4カ国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)も入っており、これら27カ国は「シェンゲン圏」という単一旅行領域を形成しています。

シェンゲン協定締結国は、観光・出張などを目的とした短期(ある180日間のうちの90日以内)滞在用の圏内共通の査証(ビザ)、「シェンゲン・ビザ」を発行していますが、日本国発行の旅券(パスポート)の保持者はそのビザが免除されています。シェンゲン・ビザ保持者・免除者はいずれも、シェンゲン圏内であれば、原則的に出入国検査なしに自由に国を行き来することができます。

日本のパスポートがあればシェンゲン圏での短期滞在ビザが免除される

なお、EU加盟国のうちアイルランドとキプロスはシェンゲン圏に属しておらず、両国とシェンゲン圏との間には国境審査があります。また、ブルガリアとルーマニアは、2024年3月31日をもってシェンゲン協定締結国となりますが、空路と海路の国境管理はなくなるものの、陸路の国境管理に関しては今後決定される予定です。

Q2. 短期滞在ビザの免除に関し、条件や滞在可能日数などを教えてください。

短期滞在ビザが免除されるのは、1)観光、友人・親族訪問、2)文化・スポーツイベント参加や交流、3)ビジネス会議への出席、4)ジャーナリストや取材目的、5)治療、6)短期的な勉強や研修――などです。180日間のうちの最長90日間までの短期滞在期間中であっても、圏内で報酬を得て就労する場合は、当該国からビザを取得しなければなりません。

観光やビジネス会議出席などの目的であれば日本人は短期滞在ビザが免除されるが、報酬を得て就労する場合は当該国のビザが必要

ビザなし渡航の場合、パスポートに関しては、過去10年以内に発行され、有効期間がシェンゲン圏から出る予定の日から数えて少なくとも3か月以上残っていることが必要です。しかし、短期滞在ビザが免除されていても、シェンゲン圏およびその他のEU加盟国への無条件の入国・滞在が完全に保証されているわけではありません。最初のシェンゲン圏到着国(入域国)での審査に加え、圏内では、警察などによる任意の検査で、条件が満たされていないと判断されれば、入国・滞在を拒まれることがあります。また、シェンゲン圏と、圏外のEU加盟国との間では、国境でパスポートによる審査が行われます。

シェンゲン圏に属する国と属さない国の境界では、国境検査が実施される
© European Union, 1995-2018

シェンゲン協定において、短期滞在とは「あらゆる180日間における最長90日」と定義されています。これは、任意の基準の日からさかのぼって180日の間に「累積で90日を超えて滞在することはできない」という意味です。基準日は、次回の訪問予定日の場合もありますし、すでにシェンゲン圏に滞在中であれば、今後何日滞在できるかを計算するため、計算日当日の場合もあるでしょう。このルールにのっとれば、全くシェンゲン圏に足を踏み入れなかった期間が連続して90日間あった場合は、新たに90日間の滞在が可能になります。なお、シェンゲン圏入域日と出域日もそれぞれ1日の滞在とカウントされます。

Q3.「あらゆる180日間における最長90日」という滞在可能日数の計算方法を具体的に教えてください。

過去に何度かシェンゲン圏を訪れたことがある場合に、将来の滞在可能日数や入域可能日などが簡単に計算できる「Short-stay Visa Calculator」(シェンゲン圏滞在可能日数計算サイト)があるので、ご紹介しましょう。

図1

ステップ1:Date of entry / control 図1の(1)部分

サイトにアクセスすると、図1の(1)の部分にアクセス日が自動表示されています。ここは、「シェンゲン圏へ入る予定の年月日(Date of entry)」または「シェンゲン圏滞在中に、確認しようとする年月日(Date of control)」のいずれかの任意の日付(基準日)を、日日/月月/年年(西暦の下2桁)の形式で書き換えます。

ステップ2:Planning or Control 図1の(2)部分

(2)の部分にPlanning(計画)かControl(確認)を選択できる項目があります。将来シェンゲン圏への渡航を計画していて、これまでの渡航歴からして渡航後何日間滞在できるかをシミュレーションする場合はPlanningを、すでにシェンゲン圏に滞在していて、あと何日滞在可能か、あるいは、すでに滞在超過(overstay)になっていないかを確認する場合には、Controlを選びます。

ステップ3:Enter previous stay(s) in Schengen Area 図1の(3)部分

ステップ2で入力した年月日からさかのぼって180日の間に、シェンゲン圏に滞在した日数を(3)の表に入力します。旅券に押されたスタンプもしくはご自身の記録から、左の欄に「シェンゲン圏への到着日」、右の欄に「シェンゲン圏からの出発日」を日日/月月/年年の形式で入力します。例えば、2018年2月3日から2月18日まで滞在したのであれば左欄に「030218」、右欄に「180218」と記入します。「/」は入力後自動的に挿入されます。グレーがかかった欄は空欄のままにしておきます。なお、ステップ2でControlを選んだ人で、計算日にシェンゲン圏滞在中の場合は、便宜上、最後の出発日の欄にはステップ1で入力した基準日と同じ日付けを入れます。

ステップ4:Calculate 図1の(4)

(4)のCalculate(計算)ボタンを押すと、(3)で入力したそれぞれの滞在履歴に該当する滞在日数がグレーの欄に自動的に表記されるとともに、右のエリアに残りの滞在可能日数や滞在超過日数が表示されます(下の図2参照)。

参考例

図2の例では、5月28日(a)にシェンゲン圏を訪れる予定でそこからの滞在可能日数を調べます。過去に2018年2月3日~18日、3月1日~24日、4月15日~5月2日の3回にわたって滞在していたとして、それらを入力後、計算ボタンを押すと、(b)のグレー欄にそれぞれの滞在日数(16日間、24日間、18日間)が表示されます。右の(c)の部分には、基準日(5月28日)の180日前は2017年11月30日である(つまり、2017年11月29日以前の滞在日数はカウントされない)ことと、基準日からのシェンゲン圏最大滞在可能日数が32日であることが表示されます。

図2

なお、この計算サイトは、滞在可能日数の目安を提示するものです。計算で得た日数を法的に保障するものではないのでご注意ください。確実な情報が必要な場合には、当該国の出入国管理当局等への確認が必要です。計算サイトのユーザーマニュアルはこちら

Q4. その他、ビザなし短期滞在で注意することはありますか?

シェンゲン圏内の滞在日数は、シェンゲン圏以外のEU加盟国の滞在日数とは分けて計算されますので、例えばシェンゲン圏で最長90日間過ごした後、すぐにクロアチアに入ってそこで90日滞在することもできます。

また、オーストリアはシェンゲン協定加盟国ですが、日本との二国間ビザ免除取り決めがあるため、シェンゲン協定で定められた滞在期間を超えて、通常は6か月以内の滞在が許可されます。詳しくはこちらをご参照ください。また、ポーランドとも同様の取り決めがあります(詳細はこちら)。なお、前述の計算ツールは、あくまでシェンゲン協定下の滞在可能日数を計算するものなので、二国間の取り決めによる追加滞在日数や、シェンゲン圏外のEU加盟国での滞在は考慮されません。

就学ビザや就労ビザ、居住許可証などで滞在していて、それらの期間が過ぎた場合は、失効した日から「基準とする日からさかのぼって180日間に、累積最長90日間」というルールが適用開始となります。

さらに、EUではシェンゲン圏に短期滞在するビザを免除された、日本人を含む域外国の渡航者が、インターネットで事前に入国審査の申請を行い、認証を得る「欧州渡航情報認証制度(European Travel Information and Authorisation System=ETIAS)」を導入する予定です。詳しくはEU MAGのこちらの記事のQ5をご覧ください。

(注)
このページでは、シェンゲン圏の短期滞在に関する一般的なルール、滞在可能日数を確認するための1ツールについて解説したものです。個別ケースについて詳細に確認したい場合は、加盟各国の大使館・領事館などにお問い合わせください。

 

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