EUの新型コロナウイルス感染症ワクチンに関する取り組みを教えてください

新型コロナウイルス感染症のパンデミック収束への希望であるワクチン接種が世界で進行する中、主要なワクチンメーカーが生産拠点を置くEUの動向が注目されている。域内外の安定かつ公平なワクチンの供給に対するEUの戦略と具体的な取り組みを説明する。

質問一覧

Q1. EUがワクチン戦略を策定したのはなぜですか?
Q2. EUはどのようにワクチンを確保していますか?
Q3. EU加盟国は個別にワクチンの購入契約を交渉することができますか?
Q4. EUのワクチン輸出承認制度について教えてください
Q5. EU域外、特に日本へのワクチン輸出の状況を教えてください
Q6. EUはワクチンへの国際的な取り組みにどう関わっていますか?
Q7. デジタルグリーン証明書とは何ですか?
Q8. 加盟国がロシアのスプートニクや中国のシノファームなどを使用することに対するEUの立場を教えてください

Q1. EUがワクチン戦略を策定したのはなぜですか?

2020年6月17日、欧州委員会は、新型コロナウイルス感染症のワクチンの開発・製造・供給を加速させるための「欧州連合(EU)ワクチン戦略」を発表しました。

この戦略の策定に先立ち、EUと加盟各国は、欧州で質の高い安全で有効なワクチンを製造し、EU加盟国とその市民に迅速にワクチンを届けるためには、EUレベルで協調行動を取ることが最も確実かつ効率的であるとの考えで合意しています。EU加盟国は単独では、十分な数のワクチンを開発・製造するための投資を確保できません。共通の戦略に基づいて、投資リスクを分散・共有して共同出資を図ることで、スケールメリットを獲得でき、開発・製造を大規模化し加速させることができます。

また、新型コロナウイルス感染症への対応については世界的な連帯が求められており、本戦略は、できるだけ早期に世界中の国々が手頃な価格で公平にワクチンにアクセスできることも目指しています。

戦略を推進する財源には、27億ユーロの「緊急支援手段(Emergency Support Instrument = ESI)」の大部分が使われます。ESIは、EUの予算を活用して緊急支援を提供する仕組みで、現在進行中のパンデミックなどの危機による人的・経済的影響にEU全体で取り組むことを可能にします。

ワクチン接種を受けたフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長 ⒸEuropean Union, 2021 / Source: EC – Audiovisual Service/ Photographer: Dati Bendo

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Q2. EUはどのようにワクチンを確保していますか?

欧州委員会は、EUワクチン戦略に基づいて、EU加盟国を代表して個々のワクチンメーカーと「事前購入契約(Advance Purchase Agreements = APA)」を取り交わします。APAを締結することで、欧州委員会は所定の期限内に指定された数量のワクチンを購入する権利を得るかわりに、ワクチンメーカーが必要とする初期費用の一部を負担。その金額は、EU加盟国が実際に購入するワクチンの頭金とみなされます。

この契約に基づいて製造されたワクチンが、新型コロナウイルス感染症に対する安全性と有効性が確認され、EUの医薬品規制当局である「欧州医薬品機関(EMA)」の科学的に実証された提言を受けて、EUレベルでワクチンの使用が認可されれば、全てのEU加盟国で安全で有効なワクチンが同時に入手可能となります。また、公平性を担保するため、ワクチンは人口比に基づいて配分されます。欧州委員会は、これまでに6社(アストラゼネカ、サノフィ/グラクソ・スミスクライン、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ビオンテック/ファイザー、キュアバック、モデルナ)とAPAを締結し、26億回分のワクチンを確保。2021年4月半ば時点で、上記6社のうち、EMAはビオンテック/ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソンの4社のワクチンを認可しています。

アストラゼネカのワクチンⒸEuropean Union, 2021 / Source: EC – Audiovisual Service/ Photographer: Adam Berry

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Q3. EU加盟国は個別にワクチンの購入契約を交渉することができますか?

全てのEU加盟国は、EUワクチン戦略の枠組みに参加し、協力することに合意しています。この合意によれば、EU加盟各国は、特定の企業とEUとの随意契約に参加する場合には、当該企業と個別に交渉することはできません。ただし、EUの契約に参加しない場合には、当該企業と二者間で交渉を行う権利があります。つまり、EUが企業と締結した契約に参加する加盟国は、同じメーカーの同じワクチンに関して単独での契約を平行して結ぶことはできません。1カ国ではなく加盟する全27カ国を代表して交渉することで、より有利な条件で契約を結ぶことができるからです。

イタリア・ミラノにはドライブスルーのワクチン接種センターが設置され、多くの市民が訪れている ⒸEuropean Union, 2021 / Source: EC – Audiovisual Service/ Photographer: Piero Cruciatti

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Q4. EUのワクチン輸出承認制度について教えてください

APAを締結した製薬会社の中でEUに拠点を置く企業に対して、新型コロナウイルス感染症ワクチンのEU域外への輸出を承認するのが「ワクチン輸出に関する透明性・承認制度(輸出承認制度)」であり、2021年1月31日に一時的な措置として導入されました。

輸出承認制度は、次の4つの目的で実施されています。

  • EUからのワクチン輸出に関する透明性を担保する
  • 契約上の取り決めに従って、EU市民にワクチンをタイムリーに提供する
  • 貿易相手国や最も弱い立場に置かれた国々に与える影響を限定する
  • 国際的な義務や公約を守る

この制度の下、新型コロナウイルス感染症のワクチンやその有効成分を輸出しようとする企業は、製造拠点があるEU加盟国の所轄官庁に対して「2020年10月30日以降のワクチンの輸出量」および「2020年12月1日以降EU域内に供給したワクチンの本数、予測生産量」を届け出る必要があります。各社の申請は①契約の順守、②必要な全ての情報の提供、③製造の遅延や不足が生じた場合の、EUと輸出先との間の均等かつ公平な配分――という3つの承認基準で審査されます。

2021年3月24日には、ワクチンの安定供給をさらに確実にするため、相互主義と比例性に関する原則が承認基準に追加されました。EUとのAPAを履行しているかどうかの確認に加えて、輸出先の国が自国のワクチンや原材料の輸出を制限していないか(相互主義)、および輸出先の国の感染拡大の状況やワクチンの接種率および在庫量(比例性)が考慮されることになったのです。

こうした措置は、世界貿易機関(WTO)や主要20カ国・地域(G20)の下でのEUの国際的な義務と完全に整合が取れており、「WTO貿易・保健イニシアティブ」に関連してEUが提案した内容とも合致しており、輸出禁止措置には該当しません。

なお、輸出承認制度は、2021年6月30日までの適用予定です。

スペインのサン・ホアン・デスピにあるジョンソン・エンド・ジョンソンの工場で生産されるワクチン ⒸEuropean Union, 2021 / Source: EC – Audiovisual Service/ Photographer: Josep Lago

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Q5. EU域外、特に日本へのワクチン輸出の状況を教えてください

輸出承認制度が導入された2021年1月30日から5月3日までの期間に提出された世界各国向けの輸出申請854件のうち、却下されたのはオーストラリア向けの1件のみです。また、EU加盟国は合わせて45の輸出先に同日までに1億7,800万回分のワクチンを出荷しており、総量で経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最大の輸出元となっています。

EUは日本に対して、約7,240万回分のワクチンの輸出を承認しています(欧州委員会の5月6日付の情報。出荷は各製薬会社の責任で行われる)。日本は現在、EU域内で製造されたワクチンの最大輸出先です。

なお、約4億4,770万の人口を抱えるEUでは5月5日までに域内におよそ1億9,270 万回分のワクチンが供給されています。

ベルギー北部プールスにあるファイザーの工場で製造されたワクチンの配送用の箱にドライアイスを詰める従業員 ⒸEuropean Union, 2021 / Source: EC – Audiovisual Service/ Photographer: Mathieu Golinvaux

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Q6. EUはワクチンに対する国際的な取り組みにどう関わっていますか?

EUワクチン戦略は、世界の連帯に対するEUのコミットメントと両立するものです。ワクチンが世界的に不足する中、EUとその加盟国は「全ての人が安全でなければ、誰も安全ではない」という考えに則り、世界各国にワクチンを提供しています。

例えば、企業の生産力の増強を支援し、世界の人々のためになる研究開発を促進・支援するほか、世界に貢献するワクチンの加速度的な開発・製造に向けて先行投資を行っています。さらに、世界保健機関(WHO)、感染症流行対策イノベーション連合(Coalition for Epidemic Preparedness Innovations = CEPI)、GAVIワクチンアライアンスなどの国際機関に資金を提供することで、EUは全世界にワクチンを届ける活動を支援しています。

EUが交渉しているメーカーは、域外の国々にもワクチンを供給することを約束しています。前述の輸出承認制度は、人道支援を目的とするワクチン供給や新型コロナウイルス感染症ワクチンの国際的共同購入枠組み(COVAXファシリティ)の対象となる国々への供給、EUの近隣諸国※1への出荷については、適用されません。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックとその影響に関する取り組みにおいてパートナー国を支援するため、EUは「チーム・ヨーロッパ」を立ち上げました。「チーム・ヨーロッパ」は、EUおよびEU加盟国に加えて欧州投資銀行や欧州復興開発銀行などの欧州の金融機関の財源を組み合わせて、パートナー国への支援に活用しています。

2021年3月末、「チーム・ヨーロッパ」は、EU予算から拠出される10億ユーロをはじめとする24億7,000万ユーロの資金をCOVAXファシリティに提供しました。この資金拠出により、EUはCOVAX全体でも最大の資金提供者の一つとなっています。同時に、2021年末までに92の低・中所得国向けに13億回分のワクチンを確保することを発表しました。

COVAXファシリティを通じてモンテネグロの空港に到着したワクチン。EUの「チーム・ヨーロッパ」はCOVAXファシリティへの最大の資金提供者である ⒸEuropean Union, 2021 / Source: EC – Audiovisual Service/ Photographer: Bojana Ćupić

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Q7. デジタルグリーン証明書とは何ですか?

2021年3月17日、欧州委員会は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中で安全で自由な市民の移動を促進するため、「デジタルグリーン証明書」を導入する法案を策定しました。「デジタルグリーン証明書」は、EU域内で次のいずれかを証明するものです。

  • 新型コロナウイルス感染症のワクチンを接種済みである
  • 検査結果が陰性である
  • 新型コロナウイルス感染症から回復した

「デジタルグリーン証明書」は、その所持者が渡航先のEU加盟国の市民と同様に、自由な移動に対する制限を免除されるための書類で、パスポートのような渡航用の書類ではありません。また、その所持は人がEU域内の移動の自由の権利を行使するための前提条件ではありません。

デジタルグリーン証明書のサンプル © European Union 2021

EU加盟国が「デジタルグリーン証明書」の所持者に依然として隔離措置や検査の実施を求める場合は、欧州委員会および他のEU加盟国にその旨を通知し、そうした決定の理由を説明する必要があります。

「デジタルグリーン証明書」の発行は、病院、検査場、保健当局など各国の当局が管轄します。デジタル証明書はスマートフォンなどのモバイル端末に保存することができ、また書面での発行を希望することもできます。いずれも、基本情報を記載したQRコードと、証明書が本物であることを保証するデジタルシール(組織印の電子証明書)が付されます。

「デジタルグリーン証明書」は、国籍にかかわらず、EU市民およびその家族に発行されます。欧州委員会は、EU加盟国またはシェンゲン協定の加盟国に合法的に在留するEU以外の国籍の保持者や、他のEU加盟国に渡航する権利を有する滞在者に対しても「デジタルグリーン証明書」を発行することを提案しています。証明書に関しては、EU市民とEU市民ではない人々との間の取り扱いに差はありません。2021年3月17日に提出された本法案は、EUの立法機関であるEU理事会および欧州議会で審議中です。

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Q8. 加盟国がロシアのスプートニクや中国のシノファームなどのワクチンを使用することに対するEUの立場を教えてください

EU加盟国は、EUの医薬品に関する規則の第5条(2)に定められている緊急使用許可に準拠し、EUワクチン戦略が対象としていないワクチンを調達し、投与することができます。それについては、加盟各国が権限を有し、使用に伴う法的責任を負っています。そのため、現状EUワクチン戦略の対象外となっている中国のシノファームやロシアのスプートニクのワクチンの使用を許可するかどうかは、EU加盟国が決定することができます。

EUワクチン戦略は欧州委員会とEU加盟国が共有する戦略であるため、例えばシノファームやスプートニクをEUワクチン戦略の対象に含めるなど、ワクチンの種類を多様化する場合は、欧州委員会とEU加盟国が必ず共同で決定することになります。現在は、両ワクチンとも検討対象とはなっていません。

既に認可された4社(Q1 参照)のワクチンメーカーから供給予定のワクチンは、現在製造が進められており、EU加盟国に順次納品されています。EUは2021年夏までに成人の接種率70%という目標を達成できると確信しています。

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更新情報
2021/05/07 Q5のワクチン輸出申請件数およびEU加盟国からのワクチンの輸出先国数とワクチンの分量を2021年5月6日付の数値に更新しました
2021/04/30 Q5のワクチン輸出申請件数およびEU加盟国からのワクチンの輸出先国数とワクチンの分量を2021年4月27日付の数値に更新しました
関連情報
「EUワクチン戦略」概略(日本語)
ワクチンに関する欧州委員会のウェブページ (英語)

※1 3月24日に導入された新しい規則で引き続き本制度の適用外となる国は、アンドラ、フェロー諸島、コソボ、サンマリノ、バチカン、「EUの機能に関する条約」の附属書IIに記載されている海外領土、ビュージンゲン、ヘルゴラント、リヴィーニョ、セウタおよびメリリャ、アルジェリア、エジプト、モロッコ、パレスティナ、シリア、チュニジア、ウクライナの各国。