2012.10.4

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死刑制度問題に関する国民的論議を!

死刑制度問題に関する国民的論議を!

10月に入って急に気温が下がり、秋の気配を感じるようになりました。同時に、年末が急に接近してきたような気もします。今月は、第三国において人権を推進する欧州連合(EU)が、その努力の支柱とする死刑廃止の実現にとって意義深い月でもあります。

2008年、EUと欧州評議会(※1)は、10月1日を「欧州死刑廃止デー」に定めました。死刑は人の尊厳を侵害するものであり、決して凶悪犯罪の抑止につながらないと、EUは考えています。司法の失策の結果として科せられる極刑のすべては、取り返しのつかない人命の損失を意味するからです。

世界のすう勢は死刑廃止に向かっており、世界全体の3分の2を超える国々が正式に極刑を廃止するか、その適用を中止しています。国連も一連の決議を通じて死刑廃止を視野に入れた執行停止を呼びかけています。

日本では2年近くも死刑が執行されなかったにもかかわらず、本年に入って7人の死刑囚に死刑が執行されました。EUはこの事態を極めて遺憾に思い、深く憂慮しています。日本において死刑制度問題に関する国民的論議が広がるためにも、日本政府が死刑執行停止を真剣に考慮されることを、強く求めるものです。

日本とEUは多くの民主的価値を共有するパートナーであり、高齢化、エネルギー安全保障、気候変動など、共通の課題に力を合わせて取り組んでいます。今後も協働し続けることによって相互の関係を深め、さらに強靭にしたいと考えています。死刑の適用を止める国々が増え続ける中、日本もその一員に加わる日が来ることを切望して止みません。

ハンス・ディートマール・シュヴァイスグート

Hans Dietmar SCHWEISGUT
駐日欧州連合大使

(※1)^ 1949年にフランスに設立された国際機関。EUの機関ではない。日本もオブザーバー参加している。

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