2013.2.19
MESSAGE
このところ、欧州連合(EU)にとって、また日・EU関係にとって重要ないくつかの動きがありました。
EUでは、まだ債務危機が完全に収束したわけではありませんが、金融市場が安定を取り戻しました。またそれと同じぐらい重要なことに、ユーロ圏諸国の経済が徐々に安定してきています。
多くの加盟国が、若年層を中心に高い失業率を抱えている中、今は自己満足に浸っている時では決してありません。EUとその加盟国が持続可能な経済成長を押し上げるための方策に一層の力を入れているのは、そのためです。
2月の初旬、欧州理事会は2014年~2020年の多年次財政枠組み(MFF)(※1)に合意しました。よくEUの「予算」と称されるMFFは、一定の期間における優先的歳出や、各政策分野における最大年間歳出額などを規定するものです。この最新のMFFは、未来志向であり、欧州における成長と雇用のための戦略を支えることに照準が当てられています。それは、EUの教育と研究への投資を継続すると同時に、新たなインフラ投資を促進し、若者の失業など緊急性の高い問題への対策を推進する内容となっています。
日・EU関係においては、EUビジネスマン研修計画(ETP)(※2)が1月に、日本での研修を再開しました。ETPは1979年に立ち上げられた野心的なプロジェクトであり、欧州のビジネスマンに、日本語と日本の商習慣を徹底習得する機会を提供するものです。3年近くの見直し期間を経て、日・EU間に最も重要な動きのある時に、すなわち日本とEUが政治枠組み協定と自由貿易協定に向けた交渉を正式に開始しようかという時に、ETPは再スタートを切ることになったのです。研修生の日本での滞在が実り多い経験となり、彼らが将来、日欧の懸け橋として活躍することを期待しています。
日本とのFTAを目指すことに加えて、EUは最近、米国との包括的な通商・投資パートナーシップに向けた交渉を開始する態勢が整ったことを発表しました。EUは、通商の自由化に価値を置いています。そして、第三諸国との通商および投資関係の拡大が、欧州経済の再活性化に必要な条件のひとつであるとの確信を持って、自由貿易という課題を追求しています。
ハンス・ディートマール・シュヴァイスグート
Hans Dietmar SCHWEISGUT
駐日欧州連合大使
(※1)^ 「多年次財政枠組み」については、本誌6月号の「質問コーナー: EUの予算はどのようにつくられるのですか?」をご参照ください。
(※2)^ 「ETP」については本号の特集「EUビジネスマン研修計画」をご参照ください。
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