欧州の「本物の美味しさ」を保証する認証制度

日本の食通の間では、フランスのシャンパン、ポルトガルのマデイラ・ワイン、ドイツのミュンヘナー・ビール、フランスのバイヨンヌ産生ハム、英国のウェスト・カントリー・ファームハウス・チェダーなど、欧州からの輸入食品はよく知られているだろう。だが、日本の消費者のし好に合い、品質も保証された欧州の農産物製品はほかにもたくさんある。欧州連合(EU)の品質認証のシステムが、日本人消費者にとって、よく知られていない良質な欧州の食品を発見する手がかりになるだろう。

11月10日から13日にかけて、欧州委員会のダチアン・チオロシュ農業・農村開発担当委員が、欧州の食品·飲料会社、業界関係の団体などの代表者31人と共に来日する。その目的は、欧州の品質保証認証を受けた製品について、日本の業界関係者や消費者に情報を提供すること、同時に日本独特の農業や食文化に関する認識を高めることだ。

フランスのシャンパンやバイヨンヌ産生ハムは日本でも知られているが、キプロスのお菓子「ロクム」(右端)など、まだ知名度の低い欧州食品も多い

今回来日する業界の製品は肉、乳製品、オリーブオイル、果物や野菜、およびワイン、スピリッツ、ビールといったアルコール飲料など多岐にわたるが、いずれも有機農産物、あるいは製品の品質や評判、その他の性質が原産地と結びついているとして地理的表示(GI=Geographical Indications)製品に認定されているものばかりだ。

その中で、まだ知名度の低い製品としては、例えばキプロス共和国の「ロクム(キプロス・ロクム)」というお菓子、チェコ共和国のビール生産の特別な原料であるザーツ産ホップ、またギリシャのヒオス島特産でマスティハ(マスティック)の木から抽出される樹脂(お菓子、健康食品やリキュールなどに使用される)などが挙げられる。

原産地と結びついた伝統の味と安全の保証

世界中の消費者が、次第に食品の品質や生産環境に関心を払うようになってきている。食品を購入する際に製品の生産地や特徴、また有機原料の使用について気にかける消費者も増えてきた。EUも加盟国内で生産された食品の品質認証制度を積極的に推進している。域外からの輸入食品に関しては、第三国からの申請があればEUの制度を適用する一方、第三国の認証制度との相互承認も進めている。

EU法では高い水準を保証するために断固とした要件を課している。安全な食品を保証するための厳格な衛生規定のほかに、EUは高品質な欧州製品を保護・継承するための品質認証制度を制定している。原産地呼称保護(PDO=Protected Designation of Origin)、地理的表示保護(PGI=Protected Geographical Indication)、伝統的特産品保証(TSG=Traditional Specialties Guaranteed)として知られているものだ。

これらの制度で保護されている商品は、特定のマークで簡単に識別することができる。

EUの品質認証マーク
PDO – 原産地呼称保護

特定の地理的領域で受け継がれたノウハウに従って生産・加工・製造された農産物、食品、飲料が対象。有名な例として、英国のウェスト・カントリー・ファームハウス・チェダーチーズ、およびギリシャのシティア・オリーブオイルなどが挙げられる。

 

PGI – 地理的表示保護

特定の地理的領域と密接に関連した農産物、食品、飲料が対象。生産・加工・製造の少なくとも一段階がその地域で行われていなければならない。有名な例として、フランスのバイヨンヌ産生ハムや、イタリアのシチリア産ブラッドオレンジが挙げられる。

 

TSG – 伝統的特産品保証

伝統的なレシピや製法に基づいて製造された製品であることを保証。例として、グーズやクリークなどのベルギー産ビール、魚や肉を詰めて焼いたフィンランド名物のパン、カラクッコなどが挙げられる。

 

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また「EU産有機農産物マーク」が制定され、EU内で包装済みのすべての有機食品に対する表示が義務化されている。食品の原産地と品質がEUの有機農産物の規定に準拠していることを証明する。

EUの品質認証マークは、品質が劣る商品や、風味の異なる模倣品に消費者が惑わされることを防ぐ役割を果たしている。これらのマーク付きの商品を購入すれば、欧州の特定地域でのみ手に入る特定の原材料を使用し、長年の伝統と知識に基づいて生産された、最高品質で独特の風味を持つ本場の製品を購入していることが保証されるのだ。

チオロシュ農業・農村開発担当委員

「今日、限定生産地域内にて語り継がれたノウハウに基づいて生産され、地理的表示(GI)製品に認定された食品およびワインなどのアルコール製品は3,200種類以上にも及びます」とチオロシュ委員は言う。

しかしこれらの食品は、美食家の間で親しまれてはいるものの、一般の消費者に認知されているとは言い難い。「これらは世界でも、欧州を代表する美味として評判を得ている食品です。日本の方々にも、欧州が誇る最高の食品と飲料をぜひ味わっていただきたい。限られた食通だけでなく、世界中の消費者が、こうした食品を気軽に楽しんでほしいのです」とチオロシュ委員は語る。「私の今回の訪日の目的は、まさにそこにあります。ですから、ヨーロッパの『本物の美味しさ』を広めるために、さまざまな販促イベントを企画しています」。

『ヨーロッパの本物の美味しさ、確かな品質』をスローガンに掲げたさまざまなPRイベントの一環として、「The Tastes of Europe Restaurant Week」(11月11日~17日)が開催される。EUと食関連の情報サイト・ぐるなびが提携し、日本国内のレストラン10店で、EUの品質認証マーク付きの食品を活用した、特別料理を提供することになっている。

多くの日本の消費者が買い物の際に品質認証マークやEU産有機農産物マークを認識するようになり、高品質の欧州食品が、日々の食卓に上がるようになることが、訪日代表団の願いだ。

生鮮野菜も、EUの地理的表示保護制度の対象だ

日欧の関係強化を促進する絶好のタイミング

日欧間の自由貿易協定(FTA)締結交渉が進行中であり、日本にとってEUは3番目の貿易相手国であること、また一方で、欧州においては日本料理への関心が高まっている環境下において、この訪問は双方向の関係強化を促進するよい機会となるはずだ。

2012年には、日本からEUへの農産物の輸出額は1億8,000万ユーロ(230億円)となっている。一方EUから日本への輸出額は52億ユーロ(およそ6,640億円)となっており、EUの農産物輸出総額の5%を占めている。(※1)

FTAの締結が実現すれば、EUと日本の消費者は、お互いの国の多様な製品をもっと享受することができる。日欧間のFTAを通じて、EU域内のみならず、日本でも地理的表示(GI)製品の価値が認識され、尊重されるようになれば、EUのこの品質認証制度により、粗悪な製品や模倣品が阻止され、日本の消費者が本物の製品を購入することが保証される。EUのGI製品輸出において、日本はまだまだ成長の余地がある重要な市場なのだ。

(※1)^ 出所:http://ec.europa.eu/agriculture/trade-analysis/map/2013-1_en.pdf

2013年10月31日 更新

関連情報

駐日EU代表部のプレスリリース