2012.4.23
OTHER
2012年4月18日、駐日欧州連合(EU)代表部は、死刑のない世界を目指すEUの活動の一環として「死刑廃止に向けて:欧州の経験とアジアの見解」と題したシンポジウムを同代表部にて開催した。
EUインスティテュート・イン・ジャパン(EUIJ)早稲田との共催で行われたシンポジウムには、欧州、アジアおよび米国から死刑制度廃止論の第一人者が13人も出席し、約130人の聴衆を前にそれぞれの立場から死刑制度をなぜ廃止すべきなのか、どのように廃止していくかなどについて報告や意見交換を行った。
基調講演において平岡秀夫前法務大臣は、日本で本年3月下旬に1年8カ月ぶりに3件の死刑が執行されたことを遺憾とし、「死刑制度の存廃に関する国民的議論の枠組みづくり」に期待する、と発言した。また、本年1月に大統領が死刑制度廃止を宣言したモンゴルのソソルマー・チュルンバートル大統領アドバイザーは、「廃止のタイミングをもたらすのは政治の役割」と説いた。
第一部「国際社会における傾向と日本の現状について」では、190を超える国連加盟国中、140カ国以上が法律上または事実上死刑を廃止している世界のすう勢の中で、OECD加盟34カ国中、死刑存置国が米国と日本、事実上の死刑廃止国が韓国のみという現状において、日本社会の特殊性を理由に死刑を維持していくことは国際社会で孤立を招く――廃止は、もはやIfではなくWhenの問題であろう、という議論が展開された。
日本で死刑制度存続の理由として用いられる世論調査については、「85.6%が支持」という答えを導いた設問の不適切さ、および36%が「状況によっては廃止してもよい」と答えていることが指摘された。また、国民に対する一層の啓もう活動が肝要であるという点で意見の一致を見た。
第二部「死刑と刑事司法」では、死刑の抑止効果について、重大犯罪の発生率との相関関係の明確な証拠はないとする報告があった。被害者家族の感情や、命をもって罪を償わせるという意識については、死刑によっても満たされることはないであろう個人の感情に司法が左右されてはならないとの見解が出された。
また、死刑は非人間的かつ野蛮な刑罰、いわば「殺人」であり、冤罪もありえる中で国家が人の命を奪ってよいのか、という見方が示された。他方、日本における犯罪被害者の救済・補償制度への取り組みや、単純多数決で死刑が決定される現在の裁判員制度の見直しの必要性が指摘された。
さらに、日本は1979年に国連の国際人権規約を批准していながら、死刑廃止を規定している選択議定書は未批准のままであり、国際的な規範に則って司法を改革していくべき、とする主張もあった。
第三部のパネルディスカッションでは、死刑廃止はEUの加盟条件、国連から死刑制度廃止を検討するよう勧告を受けている、死刑存置の米国でも約3分の1の州は死刑を廃止・停止しているなど、世界の現状を周知し、国民的議論を始めるべきとする意見や、政治指導者の意志と国民への啓もうが重要などの見解が交わされた。国際社会からの支持や影響も変革の力となるという観点から、今回のシンポジウム開催への謝辞もあった。
本シンポジウムはUstreamを通じて生中継され、視聴者はのべ4,000人を優に超えた。駐日EU代表部は、日本において死刑制度問題が公開の場で偏見なしに活発に議論されるよう、引き続き行動していくつもりである。
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