2020年東京オリンピックに向けて期すること

東京が2020年のオリンピック開催地に選ばれたことで、多くの人々が、1964年に初めて東京が主催したオリンピックをあらためて思い起こしています。この大会を通じて、日本は戦後見事に近代化を成し遂げた姿を世界に披露しました。

当時は、今の欧州連合(EU)の前身であった3つの機関は、まだ独立した共同体であった時代です。欧州石炭鉄鋼共同体、欧州経済共同体、欧州原子力共同体はいずれも1950年代に設立されましたが、この3つの共同体を欧州共同体として再編成するのは、1967年になってからです。

以後約50年の間に、日本もEUも大きな変貌を遂げました。1964年の東京オリンピック開催時に存在していた上記の3つの共同体を構成していたのは6つの加盟国にすぎず、すべて西欧の国々でした。その後、ベルリンの壁の崩壊、冷戦の終結を経て、今ではEUファミリーは欧州大陸を網羅する28カ国に発展しました。そして、そのうちの17カ国がユーロという共通通貨を使用しているのです。

1970年代から1980年代までの日・EU関係は、貿易摩擦に特徴づけられていましたが、その後、価値と考え方を共有するパートナーであるとの強い確信を持って、双方が対話と協力に向けて動きだしたのです。今、日本とEUは戦略的パートナーシップ協定と自由貿易協定の締結交渉を同時並行的に進めています。この2つの協定を妥結することに成功したあかつきには、日欧関係はより高い次元へ進み、両者の結びつきは、これまでにないほど深くなるはずです。

2020年に東京でオリンピックが開催される時には、日本とEUの関係がどのような深化を遂げているか——私は大きな期待を抱いているところです。

ハンス・ディートマール・シュヴァイスグート

Hans Dietmar SCHWEISGUT
駐日欧州連合大使