現下の危機克服に必要な国際協力を追求する日本とEU

例年であれば、読者の皆さまがとても素敵な夏休みを過ごされるようお祈り申し上げる時期でありますが、残念なことに、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)により「ニューノーマル(新しい常態)」が強いられている本年は、そうもいかないと承知しています。

ここ数カ月は私たち全員にとって、困難な時期でした。まだ解明されていない点が多いこのウイルスの感染が拡大する中で、私たちは冷静さを保ちつつ、仕事や学業と生活のバランスを取ることに務めてきました。 一方、より従来型の生活スタイルに戻るのを助けるワクチンの開発は、まだしばらく先になりそうです。

しかし、いまや私たちの日常生活の一部となったソーシャルディスタンス(社会的距離)は、日・EU関係には全く当てはまりません。現に、シャルル・ミシェル欧州理事会議長、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長および安倍晋三総理大臣の間で5月26日に開催された日・EU首脳テレビ会議が建設的であったことからも分かるように、今回のパンデミックにより、両者の関係はさらに緊密になりました。

日本は、世界のどこかに新型コロナウイルスが存在する限り、それは私たち全員にとって潜在的な脅威であり続けるというEUの信条を共有しています。また日本とEUは、国際協力、とりわけ、新型コロナウイルス感染症の治療薬を開発・生産し、かつ世界中に普及し、さらに最も重要なこととしてワクチンを世界の公共財として誰もが入手できるようにするための協力は、あらゆる人の利益になると固く信じています。

こうした協力の精神と多国間主義に対する信念は、日本や欧州など世界が経済の力強い回復の実現を目指している現状についても当てはまります。EUは、こうした回復は持続可能で環境を重視した「グリーン」なものでなければならず、またデジタル化を推進するものでなければならないと考えており、これについて今後の進め方を、日本と継続的に議論できるよう望んでいます。

読者の中には、今月の私のメッセージがこれほど遅れたことを不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれません。夏季期間中、EU MAGは定期更新をお休みしてマイナーチェンジを行いますが、重要なニュースについては随時公開していく予定です。秋にまた皆さまにお目にかかれることを楽しみにするとともに、私たちが置かれているこの不慣れな環境の中でも、皆さまがゆっくりと休む時間をお取りになれることを心より願っています。


パトリシア・フロア

駐日欧州連合特命全権大使

Patricia FLOR
Ambassador Extraordinary and Plenipotentiary of the European Union to Japan