2014.2.26

Q & A

EUはシリア情勢にどう対応していますか?

EUはシリア情勢にどう対応していますか?

Q1. EUとシリアとは、どのような関係にあるのですか?

欧州連合(EU)とシリアとの間では、1977年、主に貿易に関わる事項について協力協定が結ばれました。シリアはEUの欧州近隣政策(※1)の対象国であり、EUと地中海沿岸諸国との協力関係を促進するための機構「地中海のための連合(Union for the Mediterranean)」のメンバーでもあります。また、EUとのより緊密な関係を規定する連合協定(※2)の締結に向けた交渉も進んでいました。

2011年3月、シリア国内において政府と反体制派の間で内戦が勃発し、現在も暴力と抑圧が続いています。EUは和平会議などを通じた政治的な解決を強く求め、戦闘を止めるよう勧告を繰り返していますが、2013年9月までに犠牲者は10万人以上に上っています。2011年5月以降、連合協定締結に関わる交渉は凍結され、二国間協議は中断。また欧州投資銀行からの融資も現在は停止されています。

一方で、EUは化学兵器禁止機関(OPCW=Organisation for the Prohibition of Chemical Weapons)に積極的にコミットし、シリアの保有する化学兵器の廃棄をサポートするとともに、国際社会を通じた人道的な支援を行っています。

なお、EUのシリア問題に対する基本姿勢は、2013年5月に開催されたEU外務理事会の結論(Council Conclusion)によって示されています。

Q2. これまでに、EUはシリアに対し、どのような支援や措置を行ってきたのですか?

EUは、緊急支援や食糧支援、水、衛生設備、避難所、物流システムなどの提供といった人道支援に対して8億4,300万ユーロを援助してきました。EU加盟国からの援助額も合わせると総額13億ユーロとなり、これは世界各国からのシリアへの人道支援の中でも最大規模となります。

最近では2013年12月、国連が2014年のシリアでの活動のために47億ユーロを調達しました。そのうちEUとEU加盟各国は、20億ユーロ以上を提供。騒乱の勃発以降、EUは国際社会を通した関与を進め、最大の資金提供元となっています。また、シリアの近隣国であるトルコとヨルダンには約325万ユーロに相当する物資援助を行いました。そのうち4億6,100万ユーロは、主要コミュニティや地域社会の支援、教育のために利用されました。

Q3. EUのシリアへの、国際社会を通した関与とは、どのようなことですか?

EUは国連などとの連携を図りながら、シリア問題に関与していく。2014年1月12日、ジュネーブでパン・ギムン国連事務総長(右列)と会談するキャサリン・アシュトンEU上級代表(左列手前) © European Union, 2014

世界各国の代表がジュネーブに集い開催されるシリア国際平和会議への参加や、OPCWを通した活動などを行っています。

OPCWは国連と緊密に連携しながら作業を進める独立した国際機関で、「化学兵器の開発、生産、貯蔵および使用の禁止並びに廃棄に関する条約」の実現を監視する役割を担っています。

2013年8月の戦闘においてシリアで化学兵器が使用されたことに、国際社会からは強い非難が起こりました。化学兵器の生産設備と化学物質未充填の弾頭や爆弾の破壊についてはすでに完了しており、残りの化学兵器についても2014年6月末までの全廃を目指して今も活動中です。EUは引き続き、国連やアラブ諸国、諸外国との連携を図りながら、シリア問題への関与を進めていきます。

Q4. EUとOPCWとの関係はどのようなものなのですか?

OPCWのマーク © OPCW

OPCWは182の締約国で構成されていますが、特にEUはOPCWと緊密な関係を築いてきました。2004年以降は世界中で実地されるプロジェクトについて、組織の活動をサポートしています。2013年10月にはOPCWの要請に応え、シリアでの活動をサポートするために10両の装甲車を調達し、加えて活動に必要な現地の詳細な地図も提供しました。

ジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長は、EUとOPCWについて次のように述べています。「100年前の第一次世界大戦の際、ヨーロッパ自身が化学兵器に苦しんだ経験から、EUとして国連と共同で活動するOPCWを支えてきました。国際社会には化学兵器を根絶する共同責任があります。これからもEUはさまざまな面から最大の支援者としてOPCWの活動に貢献していきます」。

OPCWの化学兵器廃絶に向けた活動に対して、2013年10月にはノーベル平和賞が授与されました。この受賞に関してEUのキャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表は、「OPCWのノーベル平和賞受賞は、あらゆる大量破壊兵器を撤廃するという国際協定の実施に向けた、OPCWの不断の努力に対する、国際社会からの褒章です」との声明を出しています。

Q5. 今後はシリアに対してどのような関与を続けますか?

「EU平和の子ども(EU Children of Peace)」基金の中から、イラクに逃れてきたシリア難民の子どもたちの保護、教育に資金を提供するプロジェクトのポスター

EUは民主主義、自由と平等、法の支配、人権尊重というEUの理念に基づき、支援を必要とする人々や国々へ援助の手を差し伸べます。憂慮すべき動向がさらに強まったことを踏まえ、継続してOPCWを通じたシリアへの支援を行います。具体的にはOPCWの基金に1,200万ユーロを拠出し、シリアの化学兵器の廃棄に貢献します。この基金によって、化学物質や廃液の運搬・処理・廃棄を国連とOPCWが共同で実施する予定です。

また、EUは、2012年に受賞したノーベル平和賞の賞金を基に立ち上げた、紛争地域の子どもたちのための「EU平和の子ども(EU Children of Peace)」基金から、イラクに逃れてきたシリア難民の子どもたちの保護、教育に資金を提供しています。

2014年2月10日のEU外務理事会では、長引くシリア危機が周辺地域に及ぼす影響について検討しました。今後も、EUはシリアの、また周辺地域の平和と安定のために、積極的に取り組んでいきます。

(※1)^ 欧州近隣政策
2004年のEUの大規模な拡大に伴い、域内と域外の間に断絶が生まれないよう、近隣諸国とのより安定的な関係性を図るために設けられたEUの政策枠組み。同枠組みの中に地中海沿岸や東方など、地域ごとの枠組みがある。

(※2)^ 連合協定
EUと非EU諸国との間の政治、貿易、社会、文化、安全保障上の結びつきを強める協定。
参照:http://eumag.jp/issues/c0214/

 

記事更新 2014年3月5日(Q3の回答内、「2015年6月末までの全廃を目指して」との記載がありましたが、正しくは「2014年6月末まで」となります。お詫びして訂正いたします)

 

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