2017.7.27

Q & A

EUの国際貿易について教えてください

EUの国際貿易について教えてください

世界最大規模の貿易圏の一つである欧州連合(EU)。国際貿易を巡ってさまざまな動きが見られる中、自由貿易を支持するEUの存在は重要性を高めている。物品・サービスの輸出入に関する最新の数値を挙げながら、EUの国際貿易の特徴について解説する。

Q1. 欧州連合(EU)は世界最大規模の貿易圏の一つといわれています。近年の貿易収支や輸出入の動向はどうなっていますか?

28カ国からなるEUは、中国や米国と並び、世界の三大貿易圏を構成しています。2016年には、EUの物品に関する対外貿易――加盟国同士の域内貿易を除いた国際貿易――の総額は3兆4,536億ユーロと算出されましたが(Q2表内の「輸出入合計」参照)、これは2015年に比べて、輸出入ともにわずかに減少しています。貿易収支については、2016年に前年の600億ユーロから380億ユーロにまで落ち込みましたが、依然として黒字を保っています。

2015年の世界の物品貿易においてEUは、輸出入ともに世界第2位の規模を誇っています。世界貿易に占めるEUの輸出の割合は15.5%。2014年に中国に初めて抜かれましたが(同国の2015年の輸出割合は17.8%)、米国の13.4%を上回っています。一方、輸入は米国が17.4%で世界最大であり、次いでEUの14.5%、中国の12.7%と続いています。

国際貿易において、EUは中国や米国と並び世界の三大貿易圏の一つとして重要な役割を果たしている © European Union, 2016

物品の輸出については、2008年から2016年にかけて、工業製品がEU輸出総額の83%を占めていました。2016年には「機械類および車両」が全体の43%、「その他の工業製品」が23%、「化学製品」が18%を占める一方、「飲料・食品」(7%)や「エネルギー製品」(4%)を含む一次産品が輸出総額の13%を構成しました。

物品の輸入についても、大半は工業製品で、その割合は2008年の58%から2016年には69%に増加しました。輸出内訳との違いは、「その他の工業製品」が輸出と同じでありながら、「機械類・車両」と「化学製品」の占める割合が小さいことです。また、「エネルギー」の割合が近年著しく減っており、2008年には輸入総額の29%を占めていましたが、2016年には原油価格の下落により15%にまで落ち込みました。

Q2. EUの主な貿易相手国はどういった国々ですか?

下の表が示すとおり、物品貿易の輸出先のトップは米国です。対米輸出は2002年の28.0%から2013年には16.7%までシェアが低下したものの、2016年には20.8%に回復しています。次いで中国の9.7%、スイスの8.2%が続きます。2015年にはトルコがロシアを追い越して第4位となり、2016年も引き続き、EUの輸出先として4.5%を占めています。米国、中国、スイス、トルコ、ロシア、日本、ノルウェーの上位7カ国だけで、EU28カ国の物品輸出総額の53.4%を占めています。

一方、2016年の輸入先の上位7カ国は、若干順位は異なるものの輸出先上位7カ国と同じ国でした。これら7カ国がEUの輸入に占める割合は60.2%で、輸出の割合よりも多く、輸入総額の6割を超えています。2016年、中国はEUの輸入総額の5分の1(20.2%)以上を占め、最大の物品輸入先となりました。米国(14.5%)、スイス(7.1%)とロシア(7.0%)が続き、トルコは第5位の商品輸入先であり、僅差で日本とノルウェーがそれに続いています。

EUの物品貿易相手先と規模(2016年)

出典:European Union, Trade in goods with China

Q3. EUの対外・域内貿易における、EU加盟各国の状況について教えてください。

EU全体の対外貿易(非EU加盟国との国際貿易)の加盟国別割合では、輸出入ともにドイツが群を抜いており、2016年は、輸出総額の28.7%、輸入総額の18.8%、約2割を占めています。輸出については、ドイツに次ぐ三大輸出国である英国(11.1%)、イタリア(10.5%)、フランス(10.5%)は、2015年と同水準にとどまっています(イタリアのEU域外への輸出がフランスを上回ったことを除く)。EU28カ国のうち、対外貿易の輸出額割合が2桁なのはこれらの国々だけです。

2016年の対外貿易の輸入上位国は、ドイツを筆頭に、英国(16.6%)、オランダ(14.2%)、フランス(9.4%)、イタリア(8.4%)と続いています。オランダが比較的高い割合を占めているのは、EUの主要港であるロッテルダム港を擁しており、そこからEU域内へ相当な量の物資が流れ込むからです。 ドイツの貿易黒字は1,809億ユーロに上り、イタリアが399億ユーロ、アイルランドが345億ユーロを記録しました。EU対外貿易で最大の貿易赤字は、オランダの1,159億ユーロ、次いで英国の897億ユーロとなっています。

EU対外貿易:物品貿易の加盟国別輸出入シェア(2016年)

出典:Eurostat (online data code: ext_lt_intratrd)

続いて2016年の域内貿易(加盟国同士の貿易)について見ると、対外貿易と同様、ドイツが輸出入双方で最大の国となっています。域内輸出ではロッテルダム港の恩恵を受けているオランダ(12.5%)のみが10%以上を占めている一方で、輸入に関して10%程度を維持しているのはフランス(11.8%)と英国(9.6%)だけです。

EU域内貿易:物品貿易の加盟国別輸出入シェア(2016年)

出典:Eurostat (online data code: ext_lt_intratrd)

EU加盟国の中で、域内貿易と対外貿易の比率がほぼ均衡を保っているのは、マルタと英国だけです。それ以外の国では、輸出入(発送・到着)の合計において域内貿易が対外貿易を上回っており、EU域内の市場がいかに重要であるかを明確に示しています。各国の域内・対外貿易の比率は、歴史的な結び付きや地理的条件によって大きく異なります。域内貿易の割合が最も高い(全貿易額の8割ほど)のは上位から順にエストニア、ルクセンブルク、ハンガリー、チェコ、スロヴァキアとなっており、最も低いのが49.3%の英国で、多様な結果を示しています。

Q4. 国際貿易の中でも、特に自動車はEU経済にとって非常に重要な品目だと思いますが、概要を教えてください。

乗用車、大型トラック、トラクター、オートバイ、トレーラー、自動車の部品・アクセサリーを含む自動車産業は、EU経済にとって非常に重要であり、また、国際貿易においても重要な役割を果たしています。2016年のEUの自動車輸出は世界最大であり、EU域外への輸出総額は1,920億ユーロに上りました。日本は世界第2位の輸出国(1,270億ユーロ)であり、米国(1,090億ユーロ)が続きます。一方、米国は、EU(770億ユーロ)や中国(640億ユーロ)をはるかに上回る世界最大の自動車輸入国(2,540億ユーロ)でもあります。

米国は、EUで生産される自動車の第一の輸出先(25%)であり、中国(16%)、トルコ(7%)、スイスと日本(5%)と続きます。逆に、2016年にEUに輸入された自動車の輸入先はトルコ(20%)、日本(19%)、米国(14%)、韓国(10%)、中国(8%)となっています。ただし、ここで留意すべきは、これらの輸出入は生産国と関連付けられており、製造企業の国籍には関係がないということです。

Q5. サービス貿易の概要を教えてください。

ますますグローバル化する世界において、金融、保険、輸送、物流、通信などのサービスは経済成長を促し、業績を向上させていく上で、非常に重要な役割を果たしています。EUのサービス貿易輸出は毎年増えており、2010年の5,690億ユーロから2015年には8,320億ユーロに増加しました。域外からの輸入も、4,610億ユーロから6,860億ユーロとなりましたが、結果的に黒字額は1,080億ユーロから1,460億ユーロに上昇しました。

EU対外貿易:サービス貿易の推移(2010年~2015年)

出典:Eurostat (online data code: bop_its6_tot)

2015年のデータによると、過去数年同様、域外へのサービス輸出額が最も高いEU加盟国は英国(1,880億ユーロ)で、次いでドイツ(1,200億ユーロ)、フランス(980億ユーロ)、オランダ(770億ユーロ)、アイルランド(560億ユーロ)となっています。域外からのサービスの輸入額が最も多いのは全体の17%を占めるドイツ(1,180億ユーロ)。次いでアイルランド(970億ユーロ)、英国(960億ユーロ)、オランダ(890億ユーロ)、フランス(790億ユーロ)となります。域内サービス貿易において輸出額が多いのは、英国、フランス、ドイツの順で、このうちドイツは、他のEU加盟国からのサービスの最大輸入国でもあり、輸入額は1,520億ユーロに上っています。

2015年、サービス貿易のカテゴリーのうち、最大の「その他のビジネスサービス」に分類される「研究開発、専門・経営コンサルタント、技術・貿易関連サービス、建築、工学・科学サービス、廃棄物処理、農業、鉱業、および他の部分に含まれないサービス(水道・スチーム・ガス・石油製品の流通および送電とは別の電気の流通、空調供給、保安・調査、翻訳・通訳、写真、建物清掃、不動産、その他の法人サービス)」は、対外輸出の28%に当たる2,350億ユーロを占め、2010年より3%増加しました。

一方、第2位の輸送サービスは、域外への輸出において、17%の1,440億ユーロを占めます。2015年の海上輸送はEUの輸送サービス輸出の52%を占め、輸入の43%を占めています。それに航空輸送(輸出の32%、輸入の37%)と道路輸送(輸出の15%、輸入の18%)が続きます。

旅行に焦点を当ててみると、2015年の出張旅行(business travel)はEUの旅行輸出の18%、旅行輸入の24%を占め、残りが個人旅行(personal travel)ということで、後者が旅行サービス貿易のかなりの部分を占めています。

Q6. 外国直接投資(FDI)の概要も教えてください。

EUの対内FDI(非EU加盟国からEU加盟国への直接投資)と対外FDI(EU加盟国から域外国への直接投資)のフローは、2014年に大きく落ち込み、2009年~2015年の間で最低を記録しました。これはEUの伝統的パートナーである米国とスイスからの大幅な投資引き上げ・削減、および米国によるEUからの投資引き上げ・削減が主な理由です。2015年のFDIフローは双方向とも、2013年と同様のレベルに戻りました。FDIのストックに関しては対内・対外ともに2015年には前年に増すペースで増加しました。2014年末から2015年末までのEUの対外FDIストックは14.9%増、対内FDIストックは20.7%増を記録し、前年の同期間の、10%と15.2%に比べ大きく伸びました。

EUの外国直接投資(FDI)ストック上位10カ国(2013年~2015年)

出典:Eurostat (online data codes: bop_fdi_main and bop_fdi6_pos)

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