2017.4.12
Q & A
欧州連合(EU)主要機関の一つである「欧州理事会」。加盟国の首脳、欧州委員会委員長らをメンバーとし、全体的な政治指針と優先課題を決定するEUの政治的最高意思決定機関だ。EU首脳会議とも呼ばれている欧州理事会の位置付けや仕組み、活動、常任議長の役割などを解説する。
EUは28の加盟国によって構成され、国家間同盟とも連邦国家とも異なる仕組みによって成り立つ、歴史的に類を見ない国家連合体です。EUは、共通の理念を追求し目標達成を図るために、指針を立て政策を立案し法律を制定し、そして実施していくさまざまな機関を有しています(下の表参照)。
その中でも、全てのEU加盟国の首脳が集う、EU首脳会議またはEUサミットとも呼ばれる機関が「欧州理事会」です。
欧州理事会は、1974年にEU加盟各国首脳の非公式な会合として始まり、すぐにEUの目標と優先事項を定める役割を担うようになりました。1992年のマーストリヒト条約(EU条約)で、正式に立場と役割が与えられましたが、EUの機関として条約に規定されたのは、2009年発効のリスボン条約(改正条約)をもってのことでした。
欧州議会 (The European Parliament)
5年ごとの直接選挙で選ばれる議員で構成。欧州市民の利益を代表する機関で、EUの活動を監督するほか、法令を制定する権限をEU理事会と共有しています。 |
欧州理事会 (The European Council)
全EU加盟国の首脳(大統領か首相)および欧州委員会委員長、常任議長をメンバーとする最高政治機関であり、EU首脳会議とも呼ばれています。 |
EU理事会 (The Council of the European Union )
加盟国政府の閣僚で構成され、かつては閣僚理事会とも呼ばれていました。主たる役割はEUの法律を成立させることで、通常は欧州議会とこの立法権限を共有します。議題によって出席する担当閣僚が異なります。 |
欧州委員会 (The European Commission)
欧州委員会はEUの行政執行機関として、法令の立案、政策の施行、法の執行、国際条約の交渉などを行います。「EUの政府、内閣」、「EU基本条約の守護者」であり、欧州全体の利益を代表し、追求することが使命となっています。 |
EU司法裁判所 (The Court of Justice of the European Union)
EU法の順守と基本条約の適切な解釈・適用を保障する役割を担っています。 |
欧州中央銀行 (The European Central Bank)
単一通貨ユーロの管理と EU の金融政策を担当します。ユーロ圏内の物価安定を維持することを主たる任務としています。 |
欧州会計監査院 (The Court of Auditors)
各加盟国 1 名の委員で構成されます。EU 予算の全歳入・歳出について、適法・適正な会計処理が行われているか、また財務管理が健全であるかを監査します。 |
欧州理事会の役割はEU全体の目標と目標達成のための道筋=アジェンダを示し、主要なEU政策を推進することです。欧州議会やEU理事会とは異なり、欧州理事会に立法権はなく、政策の実施に直接関わることはありません。欧州理事会とEU理事会のほかに「欧州評議会(the Council of Europe)」という組織がありますが、こちらは人権や民主主義の問題に取り組む国際機関で、EUとは全く異なる独立した組織です。
Q1の回答で少し説明しましたが、欧州理事会はEU加盟各国の首脳、常任議長、欧州委員会委員長で構成され、EU外務・安全保障政策上級代表も会合に加わります。
欧州理事会の会合は通常年4回開催され、常任議長の権限によって特別会合が追加開催される場合もあります。本年 3月9日に開催された欧州理事会では、主に雇用・経済・安全保障、移民問題などの政治課題に焦点を当てた協議がなされるとともに、続いて開催された非公式会合では欧州委員会が発表した「欧州の将来に関する白書」に関する政治的考察などが行われました。また、英国からのEU離脱正式通告を受けて、離脱協定の交渉指針を議論する緊急会合が常任議長により4月29日に招集されています。
欧州理事会はEU全体の政策方針を決定しますが、立法権は持たず、原則として加盟国間での交渉は行いません。そのため欧州理事会の意思決定は合意形成(総意)が基本となっています。ただし議題によっては全会一致方式、または各加盟国の人口を反映して割り当てられる加重票に基づく特定多数決方式がとられる場合もあります。票決を取る場合、常任議長と欧州委員会委員長は参加しません。
欧州理事会の具体的な役割は大きく以下の4つに集約できます。
このような役割を遂行するため、欧州理事会は欧州委員会に対して課題解決の提案の策定を求めたり、EU理事会に取り組みを要請することができます。
欧州理事会が定めるアジェンダはEUの取り組みの中核をなし、将来的なEUのビジョンを指し示し、政策目標や合意期限などを定めるものです。協議された内容は “Conclusion”(結論)という形で毎回会合の終了後に発表されますが、その重要性の高さから、常に注目を集めています。
欧州理事会の常任議長は、従来まで加盟国の輪番制であった議長職に代わり、2009年に発効されたリスボン条約によって創設された役職です。議長になることができるのは加盟国内の公職についていない人物で、議長の任期は2年半。再選は1回のみです。初代常任議長はヘルマン・ヴァンロンプイ元ベルギー首相が2期務め、その後2014年12月1日にドナルド・トゥスク元ポーランド首相が後を継いでいます。トゥスク議長も、本年3月の欧州理事会で特定多数決方式による投票で5月以降の再任が決まりました(任期は2019年11月末まで)。
常任議長は欧州理事会において会合の調整役を担うほか、対外的なEUの顔としても活動します。日本ではEUの大統領と紹介されることもあり、主要国首脳会議(G7サミット)や20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20サミット)などには欧州委員会委員長とともに常任議長がEUを代表して出席します。3月21日にベルギーで開催された日・EU首脳会談でも、トゥスク議長とジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長の2名が安倍晋三総理大臣と意見交換し、3名で共同記者発表を行いました。
かつては輪番制の議長国で開催されていましたが、現在では通常、ベルギーのブリュッセルで開催されています。ただし本年2月にEU理事会議長国のマルタで、また3月にローマで開催された非公式会合のように、臨時の理事会がブリュッセル以外で開催される場合もあります。
ブリュッセルでの会合は、2016年12月に完成したEUの2つの理事会(欧州理事会とEU理事会)の新たな本拠地ヨーロッパ・ビルで行われます。3月9日から2日間開催された欧州理事会では、EU加盟国首脳が初めてこの建物に集結しました。
「欧州議会について教えてください」(2017年1月 質問コーナー)
「欧州委員会について教えてください」(2016年5月 質問コーナー)
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