2020.5.28
OTHER
2020年5月26日、ミシェル欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、安倍総理大臣は、日・EU首脳テレビ会議を実施した。新型コロナウイルス感染症により打撃を受けた世界経済の復興や、感染拡大への国際的な対応、また戦略的パートナーシップ協定を中心とした今後のさらなる両者間の協力関係の継続・深化を確認した。
年に一度の「日・EU定期首脳協議(日・EUサミット)」が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により当面開催の見通しが立たない中、この世界的な喫緊の問題を含む懸案事項について協議する必要があるとの双方の首脳の認識から、今般の日・EU首脳テレビ会議が開催された。本会議は、2019年12月に欧州理事会に新議長が就任し、また新欧州委員会が発足して欧州連合(EU)が新体制となって以来、初めての日本とEUの首脳会合となった。
シャルル・ミシェル欧州理事会議長、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、安倍晋三総理大臣の3首脳は、新型コロナウイルス感染症が世界的にまん延している現状に対し、グローバルな連帯と協力、また効果的な多国間主義がこれまで以上に不可欠であるとの見解を共有した。また、生命を守り、新型コロナウイルス感染症による社会経済的影響を少しでも減らし、民主主義や人権、法の支配、無差別といった原則や価値を維持する重要性を確認した。これらに関し、日本とEUは今後も主要7カ国会議(G7)や20カ国・地域会議(G20)、国連などにおいて、他国と国際協調を進めていく考えである。
将来的な新型コロナウイルス感染症のパンデミック防止には、世界保健機関(WHO)などの国際機関を通じた対応が不可欠とし、関係機関の改革や効率化の必要性を確認した。また、EUが主導し、WHO年次総会で採決された同機関のこれまでの新型コロナウイルス感染症対策の検証を求める決議に関し、双方は公平で独立した検証の早急実施が必要とした。
新型コロナウイルス感染症の克服には、ワクチンや治療薬の開発と展開が急務である。日本とEUは、ワクチンをグローバルな公共財とし、全ての国の人々に適価で行き渡らせる必要性で一致した。そのための資金を持続可能に確保すべく、EUが本年5月4日に開始した75億ユーロの調達を目的とした「新型コロナウイルス・グローバル対応」誓約会合では、初日に74億ユーロが集まり、EUは域外国では最大額を誓約した日本の参加と協力に謝意を表明した。
日本とEUのGDPを合わせると、世界経済の3分の1近くを占め、日本はEUにとってアジアで2番目の貿易相手国であり、他方で日本にとってEUは世界で3番目の貿易相手である。双方は、2019年2月に発効した日・EU経済連携協定(EPA)によってさらに密接な経済的協力関係を敷き、同協定発効時点で、日本はEUからの輸入品の91%を非関税とし、移行期間を経て、最終的にその対象は97%となる。残りの3%の輸入品(主に農産品)については、関税割り当てや関税引き下げの恩恵を受ける。他方、日本からEUへ輸出される酒類、緑茶、水産物、自動車などのほぼ全ての製品に課されていた関税は、発効と同時にほとんど取り除かれ、段階的に完全撤廃。また、和牛や日本酒などのGI製品はEUでも保護され、対EU輸出の障壁だった規制が緩和される。なお現在、EU域内では60万人以上が対日輸出関連の仕事に携わっており、EUに進出した日本企業は域内で50万人以上を雇用している。
新型コロナウイルス感染症対策として、都市封鎖(ロックダウン)や経済活動の抑制など、各国でさまざまな措置が取られているが、自由貿易の妨げとならないよう透明性を確保し、暫定的な対応をすべきだとの見解で、3首脳は一致した。また、過度な人の移動制限や輸出規制を抑制し、グローバル・サプライチェーンを確保しつつ、医療品や農産品、各種サービスなどの国境を越えた流通を円滑に進める必要性を強調した。新型コロナ危機によってデジタル経済の重要性が顕著となったが、さらなる推進のために電子商取引のルール作りや公平な競争条件の設定が不可欠とした。
さらに3首脳は、新型コロナウイルス感染症による地政学的な影響についても議論し、ルールに基づく国際秩序への支持を確認した。ディスインフォメーションが国際関係に及ぼす影響が深刻化しているが、これには表現の自由や法の支配などの基本的原則を考慮しつつ、確固たる姿勢で対処するとした。それと併せて、サイバーセキュリティやテロ防止の分野でも協力を強化していく。
アフリカをはじめとする発展途上国への新型コロナウイルス感染症対策として、EUは200億ユーロ以上の支援金を約束している。他方、日本は医療保健制度の強化や経済打撃に対する中長期的な対応策で援助することにしており、3首脳は互いの支援策を歓迎した。
経済復興のためにEPAを一層活用するだけでなく、日・EU戦略的パートナーシップ協定(SPA)を土台に、より緊密な関係を維持していくことも再確認した。双方は、新型コロナウイルス感染症パンデミックが一段落したら、定期首脳協議を年内にでも東京で開催し、気候変動やデジタル変革、研究とイノベーション、エネルギー、自由かつ公正でルールに基づく貿易、安全保障、都市政策などのさまざまな分野での協力を推進していく、とした。
なお、研究・イノベーションの協力強化については、首脳テレビ会議と同日に、マリヤ・ガブリエル欧州委員会イノベーション・研究・文化・教育・青少年担当委員および竹本直一科学技術政策担当内閣府特命担当大臣が、EUの次期研究イノベーション助成プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」と日本の「ムーンショット型研究開発制度」の間の相乗効果を高めるための意図表明文書に署名した(詳細は関連情報を参照)。
ミシェル議長は、本テレビ会議後の記者会見で「2つの重要事項を確認した。1つは、日本とのパートナーシップは非常に強固であり、活気づいていること。もう1つは、新型コロナウイルス感染症の危機に対し一致団結して対応していくこと。われわれは同じ価値を共有している」と述べた。本会議は、日本とEUの立場と方向性を確認し、さらなる協調への新たな一歩となった。
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