2019.3.18
OTHER
2019年2月1日の日・EU経済連携協定(EPA)の発効を機に、EUはFOODEX JAPAN 2019にパビリオンを出展。日本とEUの有名シェフによるクッキングショーやテイスティングで欧州の農産品をプロモーションしたほか、専門家によるEPAセミナーを開催し、EPAが日・EU双方の主要農産品の貿易にもたらすメリットを強調した。
毎年3月に開催されるアジア最大級の食品・飲料専門展示会「FOODEX JAPAN(フーデックス・ジャパン)」(主催:一般社団法人日本能率協会ほか)。2019年3月5日~8日に幕張メッセ(千葉市)で開かれたFOODEX JAPAN 2019において、欧州連合(EU)は5年ぶりに独自のパビリオンを出展し、95カ国、約3,500の国内・海外出展者が一堂に会するこの大舞台で、欧州の農産品の安全性、品質そして本物の持つ素晴らしさをアピールした。
EUパビリオンのオープニングにあたり、パトリシア・フロア駐日EU大使は、「2019年は日・EU間のEPAが発効した特別な年。そのような年に、5年ぶりにFOODEXへEUが出展したのは非常に意義深いことで、今日はEPAを祝う最良の機会だ」と挨拶した。続いて、ベルギー・ブリュッセルから来日した欧州委員会のイェジー・プレヴァ農業・農村開発総局総局長が「EUは食品・飲料の分野で世界最大の輸出・輸入者であり、これからは日・EU双方が農産品貿易で利益を共有し、EPAの成功例を築いていくだろう」と今後の展望を語った。また、来賓の松島浩道農林水産審議官が「EPAは4年にわたる困難な交渉だったが、EU側の農業分野における事務方の総責任者であるプレヴァ総局長の貢献により、無事に合意することができた。EPAのおかげで日本とEUの消費者の食卓がますます豊かなものになるだろう」と期待を示した。
FOODEX JAPAN 2019でEUが掲げたスローガンは、「Enjoy It’s from Europe」。EUパビリオンからは、以下の3つの価値を日本の消費者に楽しんでほしいというメッセージを発信した。
EUパビリオンは、欧州の農産品に関する情報を発信するハブとして、来場した日本の食品業界関係者にさまざまな形でPRを行った。4日間に16のクッキングショーやプレゼンテーションを行ったほか、オリーブオイル、菓子(チョコレート、ビスケット、パスタ、パンなど)、ワイン・ビール・スピリッツ、青果(果物・野菜)、乳製品(チーズなど)、肉類(牛・豚)の6つのカテゴリー別に味わえるテイスティングコーナー、SNS用に自撮りを楽しめる欧州の農産品の展示コーナーなどを設けた。
パビリオン内では、EUが定めた品質認証マークである「原産地呼称保護(Protected Designation of Origin=PDO)」および「地理的表示保護(Protected Geographical Indication=PGI)」について説明する大画面ビデオが常時上映された。クッキングショーでも、調理の合間に司会者がPDOやPGIの違いを分かりやすく解説。そのほか、EUの有機農産物に付けられる「ユーロリーフ」、食品の安全性の確保、動物衛生について啓発する配布物も用意された。
EUパビリオンを訪れた来場者のうち、飲食業界で働いている男性は「欧州の本場の味を知ることができて勉強になった」と話し、また埼玉県の介護施設で調理を担当している女性は「欧州の良質な食べ物が安く手に入るのであれば、施設での導入も検討したい」と語った。
開会当日、FOODEX会場に隣接した国際会議場では、日欧の食品業界関係者を対象に、「日欧のEPAセミナー:農産品セクター」が催され、関税の撤廃・引き下げ、知的財産保護、地理的表示(GI)保護、農業部門での協力など、EPAがもたらす機会について日本・EU双方からの専門家6人がプレゼンテーションを行った。
マリュット・ハンノネン駐日EU代表部通商部部長がモデレーターを務め、開会のスピーチには再びプレヴァ総局長と松島農林水産審議官が登壇した。
各プレゼンテーションの概要は、以下のとおり。
EPAでは、「神戸ビーフ」(兵庫県)や「西尾の抹茶」(愛知県)など48産品の日本側GIがEU域内で保護される一方、日本国内で保護されるEU側GIは71産品。これらのGI保護は日・EU双方にとってさまざまなメリットがあり、日本では模倣品の取り締まり、産地での担い手の増加、取引・販路の拡大、価格の上昇などが期待されている。
GI保護に関しては日・EU双方で定めた広範な法的制度があるが、消費者側でもよく理解することが必要。「GI登録された産品は価格が高い」という特性は、生産者にとって付加価値を増し、より安全で高品質であることを示している。例えば、豪州との自由貿易協定(FTA)でシャンパーニュのGI保護のレベルを引き上げたことで、消費が増加したという結果がある。同様に、日・EUのEPAでもGI産品の輸出を伸ばせると考えられる。
EUが高水準を誇る「食の安全」と「食の持続可能性」に加え、アイルランドが取り組んでいるのは10カ月間牧草で育てる「牧草肥育」。同国は欧州最大の食肉生産者かつ主な輸出者にして、北半球で最大の牛肉純輸出国であり、その最大の輸出先として日本に照準が当てられている。乳製品・食肉・魚介類・酒類など全てのカテゴリーが日本向けの輸出対象で、EPAでさらなる日本市場への参入を目指している。
EUから日本への牛肉の輸入が増えているが、その特色として、EUは牛の品種の宝庫であり、多様な種類の牛肉が供給可能だということがある。これを生かし、いろいろな牛肉の食べ方を宣伝すれば、欧州産の牛肉が日本市場に入る余地は十分にある。逆に、“憧れの対象”となっている和牛が欧州で受け入れられる今後の見通しも同様にある。
EPAによりワインの関税が即時撤廃され、日本では欧州のワインが注目されているが、同時に日本ワインが欧州に輸出される可能性も開かれた。国産ワイン製造に関するルールが変わり、EUへの輸出にも視野を広げている日本のワイナリーも増えている。特に、日本の在来ブドウ品種「甲州」で作られた日本ワインの製造・輸出の増加に期待したい。
価格帯によってEPAに影響される度合いは変わるが、ワイン関税撤廃により価格が下がったことで、日本で1998年、2012年以来3度目の大きな欧州ワインブームが起きるのではないかと予測される。より多様なワインが欧州から日本へ輸入され、ワイン市場は飛躍的に拡大するだろう。
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