2014.4.24

EU-JAPAN

品質と味にこだわったヨーロッパの食品

品質と味にこだわったヨーロッパの食品

アジア最大の「食と飲料」の専門展示会、FOODEX JAPAN 2014(国際食品・飲料展、日本能率協会・日本ホテル協会他主催)が3月4日~7日、千葉市の幕張メッセで開催された。食品・飲料のサプライヤーやバイヤーが一堂に会し、活発な商談を繰り広げるこの展示会に、今回、欧州連合(EU)として初めてブースを出展、品質と味を誇る食品を多数紹介した。

「本物の美味しさ」、そして「確かな品質」が保証された食品

今回、EUは、「Tastes of Europe – Quality guaranteed(ヨーロッパの本物の美味しさ、確かな品質)キャンペーン」の一環として初めてFOODEXに出展した。このキャンペーンは、EUの食品に関する4つの品質認証制度とその認証マークそして、品質認証された製品への日本の食品業界や消費者の関心を高めることを目的としている。今回は、38の生産者がEUブースに参加した。EUの食品・飲料は既に高い品質で定評があるが、その中でもさらに認証を受けることにより高付加価値を持つ飲・食料品に特化した出展だ。

EU法は食品の高い品質水準を保証するため、確固とした要件を課しており、さらに、高品質なヨーロッパ製品を保護・継承するための品質認証制度を制定し、高付加価値をつけている。この制度によって品質を保証された食品に表示されるのが、4つの「品質認証マーク」だ。それぞれについて簡単に紹介しておこう。

EUが定めた品質認証マーク
PDO(Protected Designation of Origin):原産地呼称保護
特定の地理的領域で受け継がれたノウハウに従って生産・加工・製造された農産物、食品、飲料が対象。
PGI(Protected Geographical Indication):地理的表示保護
特定の地理的領域と密接に関連した農産物、食品、飲料が対象。生産・加工・製造の少なくとも一段階がその地域で行われていなければならない。
以上の2つは地理的表示(GI)マークである。
TSG(Traditional Specialties Guaranteed):伝統的特産品保証
伝統的なレシピや製法に基づいて製造された製品であることを保証。
EUの有機基準を満たす食品につけられるマーク
EU有機認証マーク(EU Organic Logo)
食品の生産方法がEUの有機農産物の規定に準拠していることを証明する。

オープニングイベントやプレゼンテーションで魅力をアピール 

オープニングイベントで挨拶するシュヴァイスグート駐日EU大使。「このブースで紹介しているのは、EUの品質認証マークが表示された高品質な食品や飲料ばかりです」

FOODEX JAPAN 2014初日の3月4日、EUブース内でオープニングイベントが行われた。ハンス・ディートマール・シュヴァイスグート駐日EU大使は開会挨拶の中で、「欧州各地の38の生産者・生産者団体の製品を紹介します。これらはEU品質認証マークが表示された高品質な食品や飲料ばかりです。EUの4つの品質認証マークを見つけてください。これらのマークはその製品が厳格な規程に従って生産されており、製品が間違いなく本物であることを保証しています。今日はその美味しさを試してみてください」と、品質の確かさと、美味しさをアピールした。

料理の実演を行うコルビ氏。確かな品質の食材を使ったサラダや和え物は、簡単に作ることができて美味

大使の挨拶に続くオープニングイベントでは、世界的に有名な料理人養成学校ル・コルドン・ブルーのシェフ、ドミニク・コルビ氏による、洋風と和風、そして和洋コラボの料理の実演と試食も行われた。出展されている最高品質の製品、例えばPDO認証のモッツァレッラ・ディ・ブッファラ・カンパーナ(フレッシュモッツァレッラチーズ)を使ったサラダ、PGI認証のシュタイエルスカ-プレクムリェ・パンプキン・シードオイルを使った和え物など、シンプルで食品本来の味が生きる料理が紹介され、本物の魅力を伝えた。

会期中、ブース内のステージでは出展各社によるプレゼンテーションが順次行われ、来場者には試食で味と品質の良さを実感してもらっていた。

EUが保証する品質と味の作り手たちに聞く

認証マークとさまざまな食材をデザインに使ったEUブース。38の生産者・団体のコーナーが並んだ

それではEUブースを歩いてみよう。日本ではまだ知られていない食品の生産者と団体を訪問、自慢の食品について話を聞いた。

モッツァレッラ・ディ・ブッファラ・カンパーナ品質協会(イタリア)
CONSORZIO TUTELA MOZZARELLA DI BUFALA CAMPANA(Italy)
製品:モッツァレッラ・ディ・ブッファラ・カンパーナ(カンパーナ州の水牛のモッツァレッラチーズ)
品質認証:PDO(原産地呼称保護)

モッツァレッラチーズについて説明してくれたリベルティさん。「本物は、香りと色、そして味が全く違うんです」

1981年に設立されたモッツァレッラ・ディ・ブッファラ・カンパーナ品質協会。同協会は、イタリア中南部カンパーナ州で生産され、世界中で愛されているモッツァレッラチーズの保護、品質向上、販売促進を担っており、約300もの生産者の代表を務める。

PDOの品質認証を取得している、純血種の水牛の乳を使ったモッツァレッラチーズ

広報担当のリタ・リベルティさんに説明してもらった。「カンパーナ州のモッツァレッラチーズは、柔らかい状態のチーズを何度も何度も引き延ばして作られるフレッシュチーズです。水牛の新鮮な乳を使っていることがいちばんの特長で、そのため、たんぱく質、脂肪、ミネラルが極めて豊富、風味が豊かなんです。消化もいいんですよ」。他のモッツァレッラチーズと比べ、味がはっきりと主張され、それでいて上品だ。「品質の劣る類似品がたくさん出回っているので1996年にPDOを取得しました。純血種の水牛はイタリア南部にしかいません。本物は、香りと色、そして味が全く違います」。

インターポーク(スペイン)
INTERPORC(Spain)
製品:カパブランカのセラーノ・ハムほか
品質認証:TSG(伝統的特産品保証)ほか

カパブランカ(白豚)のセラーノ・ハムをスライスする。イベリコ豚に負けないおいしさ

「イベリコ豚と聞いて、スペインのハムを連想する方は日本にも多いと思います。では、カパブランカは? カパは豚、ブランカは白で、白豚という意味です。世界第4位、EUでは第2位の豚肉生産国であるスペインではたいへん有名で、TSGの認証も受けていますが、日本ではまだまだ認知されていません。カパブランカのハムは、いくつかのレストランで出されているのみです」と話してくれたのはアルムデナ・ビダルさん。紹介しているのはカパブランカ、つまり白豚のセラーノ・ハムだ。価格はイベリコ豚より安く、味と質にほとんど変わりはない。

「サンドイッチやアペタイザーに最適」と教えてくれたビダルさん

「スペインでは、昼も夜も毎日のように、セラーノ・ハムやサラミ・ソーセージのスライスをサンドイッチに挟んで食べるんです。オリーブオイルとトマトを入れるとさらに美味しいパントマカ、またはセラニートと呼ばれるサンドイッチのできあがり! ぜひ試してください」とのこと。また、「赤ワインと共にアペタイザーとして、お友達と気軽に楽しんでほしいですね」。白豚のセラーノ・ハム、日本でもすぐに人気が出そうだ。

ゲア(スロヴェニア)
GEA(Slovenia)
製品:シュタイエルスカ-プレクムリェ・パンプキン・シードオイル
品質認証:PGI(地理的表示保護)

「カボチャからオイルを取る方法が1750年に発明されて以来、パンプキン・シードオイルを作り続けています」と語るミヨシェクさん

「スロヴェニアのパンプキン・シードオイルには長い歴史があります」と説明してくれたのはデヤン・ミヨシェクさん。「スロヴェニアはオリーブができる土地ではないので、かつては油は動物から取ることしかできませんでした。しかし、動物性の油を摂り続けることは体に悪いので、人々は植物性の油を探しました。そして、カボチャからオイルを取る方法を発明したのです。それは1750年のことです。カボチャ30~35個から、パンプキン・シードオイル1リットルができます。それ以来ゲア社は国内最古の企業としてパンプキン・シードオイルを作っています。オリーブオイル、マカダミアオイル、ウォルナッツオイルなど、他の商品の製造販売も始めていますが、今もパンプキン・シードオイルに力を入れています」。

ロースト風味が魅力。そのままパンにつけて食べても美味しいパンプキン・シードオイルはPGIの品質認証を受けている

見た目は深緑色でオイルには見えない。が、口にすると濃厚で豊かな芳香。ナッツをローストしたような独特な味がする。オリーブオイルやごま油のように、料理にアクセントのある風味をつけることができるし、そのままパンにつけて食べてもおいしい。一般的なオリーブオイルの3倍の値段がするというこのオイルの人気の秘密は、ヘルシーさだけでなく、魅力的な香ばしい味だろう。

アングルシー・シー・ソルト(英国)
THE ANGLESEY SEA SALT COMPANY(United Kingdom)
製品:アングルシー島の天然海塩
品質認証:PDO(原産地呼称保護)、有機農産物

もともと水族館を経営していたウィルソンさん

アリソン・リー・ウィルソンさんが夫とともにアングルシー・シー・ソルト社を設立したのは17年前。しかしそれ以前、25年前から営んでいたのは、なんと水族館とのこと! 「水族館経営の傍ら、身近なものを使って何かビジネスができないかと考えていたんです。そんなとき、夫のデイビッドが東京のたばこと塩の博物館を訪れ、『塩を作れるのでは』と思ったのがきっかけです」。ウィルソンさん夫婦が住んでいるのは英国ウェールズ地方のアングルシー島。「海水をフライパンで濃縮したら、美しい塩の結晶が湧き上がってきたんです。それを商品として売り出したのが始まりです」。水族館は既に閉じ、今は海塩の製造販売に集中しているとのこと。「HALEN MON(ハレン・モン)というブランドで販売した海塩は、トップシェフにも愛用されるほど、ヨーロッパ中で人気が出ました。一方で、質の悪い類似品が出てきたのでPDO認証を取得したのです」。

「セロリ」「ガーリック」「うま味」など、さまざまな風味の海塩製品

HALEN MONの海塩には、セロリ、バニラ、ガーリック、チリなど、味付きの製品もある。そして最近では、世界に注目されつつある日本風の「うま味」や「わさび風味」なども売り出している。「友人が椎茸を栽培していたので、それを生かそうと考えたのが『うま味』という製品です。英国をはじめ、ヨーロッパ中で大ヒットしていますよ」。同社の海塩は現在15カ国に輸出中。日本では伊勢丹新宿店で取り扱っている。「冬限定ですが、HALEN MONの塩を使った味噌・醤油も販売しています。伊勢丹オリジナルの石狩鍋セットで、私たちの海塩を使ったお味噌を楽しんでいただくことができますよ」。

ヴィタモン(フランス)
VITAMONT(France)
製品:有機製品(ジュース、コーラ、ジャム)
品質認証:有機農産物

「フランスではオーガニック製品への関心が強い」と語るリシャールさん

1985年の創業以来、有機製品だけを作り続けているヴィタモン社。「フランスではもともと、有機製品への関心が強いんです」と説明してくれたのはマガリ・リシャールさん。「ヴィタモンの社長は、南フランスにプルーン農場を持っていました。その農場で獲れた果実を使ってジュースを作り始めたとき、有機製品だけに絞ろうと決めたのです。それ以来25年間、有機栽培された果実のジュース、ジャムを作り続けてきました」。創業翌年の1986年には有機認証を受けている。

有機栽培の果実に強くこだわり続けるヴィタモンのジュース類

「事業が大きくなった今は、契約農家が有機栽培した果実も使っていますが、本社の小規模ですが良い農場で獲れた果実も大切にし続けているんですよ」。日本では有機製品の小売店、高級雑貨店、ネット通販などで購入できる。

サンブレスティ・ワイナリー(ルーマニア)
SAMBURESTI WINERY(Romania)
製品:赤・白ワイン
品質認証:PDO(原産地呼称保護)、TSG(伝統的特産品保証)

「ルーマニアは、高級ワインの生産地」と語るオラレスクさん

「日本で、ヨーロッパのワインの生産国は? と聞けば、フランス、イタリア、あとはドイツを思い起こすでしょうか……。ルーマニアのワインをご存じですか? 実はルーマニアは、王室や政治家も好む、高級ワインの生産地なのです」と熱く語ってくれたのは、トレーディングマーケティングマネージャーのラウリアン・オラレスクさんだ。「現在の日本の高級ワイン市場はフランス、イタリアが席巻していますが、とにかく皆に一度、素直な気持ちでルーマニアのワインを試していただきたい。そうすれば、きっと誰もが好きになります」。オラレスクさんはブース前を通る人々に次々と声をかけ、試飲をしてもらう。すると、皆が香りと共に広がる味に感嘆の声を上げる。そして、オラレスクさんの勧めるままに白ワインから赤ワインと順番に試すうちに、ルーマニアワインの世界に引き込まれてしまう。

日本での普及に期待したい、ルーマニア産高級ワイン

基本的には一般市場向けの流通チャンネルには乗せず、限られた人たちだけが楽しめるものだったというルーマニアのワイン。「もちろん、将来は日本の高級レストラン、ホテルを狙いたいと考えています。まずは高級スーパーマーケットなどで、とにかく日本の多くの方にルーマニアワインの良さを知っていただきたいと思っています」。

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