2014.2.25

FEATURE

EUが進める待ったなしの若年層雇用対策

EUが進める待ったなしの若年層雇用対策
PART 2

教育と就業機会の拡大へ

雇用機会獲得能力のある人材を育成

若年者を対象にした、雇用を得るための方策を2点紹介しよう。

1. 欧州の見習い制度のための連帯

若年者雇用率の向上に効果的な見習い制度 © European Union

オーストリアやデンマーク、ドイツ、オランダ、スイスなどで実施され、若年層の雇用率向上に効果を挙げている見習い制度の仕組みを採用している。見習い制度はデュアルシステムとも呼ばれ、学校や職業訓練センターなど教育機関での学習と企業での実務訓練を両立させることにより、労働市場の需要に合った人材を育成するのがねらいだ。そのためにはEUと各加盟国とで包括的に連帯し、互いに協力しやすい環境を整備することが重要となる。「欧州の見習い制度のための連帯(European Alliance for Apprenticeships)」は、EUレベルでは欧州委員会や欧州社会基金(ESF)、各加盟国レベルでは企業や社会的パートナー、商工会議所、教育・訓練機関、もちろん親や子自身など、あらゆる関係者が一丸となって連帯を組み、問題に取り組む。連帯を組むことにより情報が共有されるため、どの対象に欧州社会基金を配分するのが最も適切か、総合的に判断できるようになるのも利点だ。

2. 雇用者、被雇用者の間で契約を締結

ユーロバロメーター(EUの世論調査)によると、専門職に就く若者の約半数が職業訓練を受けているという事実がある。搾取されず、安価な労働力とならないためには、訓練により労働市場で求められる知識とスキルを身に付けねばならない。ところが、訓練プログラムの質は加盟国によりばらつきがあるのが実情だ。低報酬あるいは無報酬で働かせる、訓練中の労働条件が劣悪、訓練のための法整備がなされていないなど課題を抱える国も多い。そこで実りある職業訓練を実現するため、良質な枠組みが必要となる。そのためには契約がまず重要となる。契約は訓練の明確な定義と指針の役割を果たすものでなければならず、このような契約を強制的に締結させていく。例えば、社会保障の適用範囲、給与や手当て、分野と学習目的を定義する。期間を制限し、訓練が連続して行われないようにする。情報に透明性を持たせ、訓練への適正な参加方法を提示する。さらに利害関係者が連携することを明記する。併せて訓練の品質表示をして訓練を受ける側の判断材料とし、情報サイトにより適切な情報提供を行う。

有能な人材を活用できる仕組みづくり

EURESでは経験豊富な専門アドバイザーが他加盟国での就職を支援する © Belga

せっかく技能を習得しても、それを発揮できる場がなければ意味がない。そこで各国の職業安定所を結んだネットワーク「EURES」の活用が注目されている。1993年に設立されたEURESの目的はジョブマッチングによる労働市場の統合で、ポータルサイトと在籍する900人の専門アドバイザーにより、求職者や転職者への情報提供も行う。サービスの利用はすべて無料だ。国ごとに労働市場を開拓しようとすると、どうしても限界があるが、欧州全体で統合すれば、巨大な労働市場が誕生する。横断的にジョブマッチングを行うため、業界ごとに偏りがちな需要と供給の不均衡を是正でき、適材適所が可能となる。

EUでは2011年より「EURESで始める一歩(Your first EURES Job)と題した、18歳~30歳の若いEU市民向けに、履歴書の書き方指南や面接準備をはじめとする求職プロセスの情報提供とサポートを行っている。雇用サービスと職のあっせんの対象範囲に限定はあるものの、「EURESで始める一歩」を利用すれば、スペイン人看護師がEURESを通じてドイツ語レッスンを受け、ドイツの病院の求人に対する書類作成や面接指導、採用後の移住準備に至るまでの支援を受け、ドイツで就職を果たす、ということも可能になる。

EURESでは、他国で就業するのに欠かせない語学学習や技術研修、面接のための旅費、他の加盟国で就職するのに必要な費用を融資している。中小企業による雇用に対しては、統合プログラムへの出資も行う。2014年より若者の移動計画に対し、金融その他支援策がさらに幅広く適用されるようになる。

「EURESで始める一歩」の主要目標は、連続した3年の会計年で若者5,000人を雇用に結び付けることだ。EU資金による雇用サービスを活用し、最低6カ月間の雇用が12カ月で1,000人達成されており、すべての人が、居住する国以外の加盟国で就職を果たしている。越境的な労働市場の形成へとつながる、このような成功の背景には、「エラスムス」や「レオナルド・ダビンチ」など、他加盟国での学習や職業訓練を推進するプログラムを採用した点が大きい。2014年~2020年の多年次財政枠組みでは、「雇用社会革新のためのEU計画(EaSI, EU Programme for Employment and Social Innovation)」として、若者を含む特定の求職者群の労働移動性改革への資金提供が提案されている。

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