2014.1.28
FEATURE
世界を飛び回る航空機も地球温暖化の原因のひとつだ。しかし航空機からの温室効果ガスの排出量が増加しているにもかかわらず、削減の技術的解決の可能性は限られているのが現状だ。そこで、他の分野と同じように市場メカニズムを使い排出を削減することがもっとも有効であると欧州連合(EU)は主張してきた。
航空部門は温室効果ガス全体の排出量の約3%を占め、国際民間航空機関(ICAO)の統計では、国際航空機からの排出量は2050年までに2010年の水準の4~6倍になると予想している。ICAOでは、2010年の総会で、国際航空機からの排出量を2020年以降は増加させないという目標を掲げていた。航空部門をEU排出量取引制度(EU ETS)に含めることで、2015年までにCO2を約1億7600トン削減できると予想されている。
EU ETSは、対象となる企業や施設に排出量の上限(キャップ)を割り当て、その過不足分を市場で取引するキャップ・アンド・トレード型の制度だ。各加盟国は、排出枠の国別割り当て計画を作成し、欧州委員会の承認を受けたのち、対象施設に一定期間中の排出量の上限を課す。その上限を段階的に減らすことで総排出量が削減される仕組みだ。
これまで、第1フェーズ(2005~2007年)、第2フェーズ(2008~2012年)、第3フェーズ(2013~2020年)と展開している。第1フェーズでは、発電所、石油精製、製鉄、セメントなどのエネルギー多消費施設が対象だった。2012年に航空部門が対象に含まれ、第3フェーズからは、アルミ、化学(アンモニア等)が追加された。
対象施設は割り当てられた排出枠よりも少なくなるように、実際に排出量を抑えなくてはならない。排出上限よりも実際の排出量を少なく抑えられた施設は、余剰の排出枠を市場で売ることができる。一方で、上限を超えた排出をしてしまう企業は、自ら排出削減努力をするか、排出枠が足りなければ他企業から購入する。途上国や経済移行国(※1)での温室効果ガス削減事業によるクレジットも使うことができる。
第1フェーズと第2フェーズでは排出枠の大部分が無償割当だったが、第3フェーズからは排出枠は原則オークションで市場から購入することになった。2013年は排出枠の40%以上がオークションで扱われている。
また、第1、第2フェーズでは国別割り当て計画において配分される総量を決め、各施設へ割り当ててきたが、第3フェーズでは、EU全体で一つの総量を決め、それを段階的に減らしていく方法がとられている。
EUは航空機からの排出を2012年1月からEU ETSに組み込み、EU内の飛行場を発着するすべての航空機および、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー間のフライトにも適用するとした。2013年7月に加盟したクロアチアは、2014年1月からEU ETSの航空部門に組み込まれた。
しかし、米国などEU外の国々の航空会社からの反対は強く、EUは2012年11月、EU域外への国々に発着する航空機に対し、EU ETSの施行を一時的に停止した(ただしEU域内間のフライトは維持)。これは、ICAOの2013年秋の総会で温室効果ガスに対応する地球規模の仕組みに合意する時間を与えたかったからだという。
その成果といえるのだろうか。ICAO総会は10月、2016年までに温室効果ガス排出量削減のための世界規模の市場メカニズムを構築し、同制度を2020年までに稼働できるようにすることに合意した。そして制度稼働までの間、各国や各地域は暫定的な施策を講じることができるとした。
また、同制度とともに、排出量削減のための技術的開発(よりよい航空燃料や飛行ナビゲーションの分野での向上など)も推進される。
欧州委員会は2013年10月、EU ETSの航空部門への適用に関し、以前提案していたEU域内の空港に着陸する航空便の全飛行経路の排出量を対象にするのではなく、欧州の空域内を通過した距離に応じて排出量を算出する修正を提案した。この法改正は2014年1月から実施され、ICAOが2020年までに導入するとしている市場メカニズムの適用が実現されるまで有効となる。
EU ETSの改正の内容は以下の通りだ。
欧州委員会のコニー・ヘデゴー気候行動担当委員は、2014年3月までに欧州議会とEU理事会が速やかに提案を承認することを希望すると述べている。
(※1)^ 旧ソ連・東欧の旧社会主義諸国など、市場経済への移行過程にある国のこと。気候変動枠組条約および京都議定書では先進国と同様の義務を負うが、途上国への資金提供義務などが免除されている。
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