2013.1.29
FEATURE
欧州連合(EU)は、加盟各国間の共同研究を促進し、EU全体の科学技術基盤の整備・強化を図るため、1984年に「研究・技術開発枠組み計画(Framework Programme for Research and Technological Development、略称FP)」を立ち上げた。FPは研究や技術開発の重点分野を定める政策・戦略であると同時に総合的な資金助成制度でもある。
開始以来、FPはEUの科学技術開発に大きく貢献してきた。現行の「FP7(2007年~2013年)」は、2000年3月の「EUを世界で最もダイナミックで競争力のある知識集約型経済地域とする」とした10年間の政策目標(通称「リスボン戦略」)に沿った研究開発の実施や、戦略の一環である欧州の研究開発を統合する構想「欧州研究領域(European Research Area=ERA)」の実現に向けて重要な役割を担ってきた。FP7には7年間で国際共同研究、先端基礎研究など6部門に総予算535億ユーロが充てられている。2012年7月までに7万9千以上の大学、研究機関、企業などが参加した約1万9千ものプロジェクトを支援してきた。
Part1では、日欧の共同プロジェクトを紹介したが、日本、欧州および第三国が参加する共同研究の一例としては、RFID(無線ICタグ)の標準化への取り組みがある。各国がさまざまな国際標準作りにしのぎを削っている中で、FP7は、商品や物流の管理などに利用されるRFIDに関し、欧州、中国、日本、韓国、米国などの機関が参加する「標準化に向けたRFID国際相互運用フォーラム」に45万ユーロを助成。本プロジェクトは2008年6月から2010年2月まで世界各国で会合を開催し、RFIDの国際標準設定のため、各国間の連携強化に貢献した。
FP7の最終年にあたる2013年には、総額80億ユーロの、FP7下で実施される最大規模の提案募集を行っている。この金額は、EUの2013年の研究予算108億ユーロの大部分を占める。
ノーベル賞物理学賞受賞者を2人も輩出したFP7 |
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FP7の対象分野のひとつに、先端基礎研究を対象とする助成プログラム(総予算75.1億ユーロ)がある。2007年にEUが設立した研究助成機関「欧州研究会議(European Research Council=ERC)」が実施するこのプログラムでは、選ばれた研究者はEU加盟国やEUとFP7の実施で合意している13カ国にある研究所などで研究チームを率いる。2010年のノーベル物理学賞の受賞者で英マンチェスター大学のコンスタンチン・ノボセロフ教授(ロシア出身)はERCの若手研究者向け助成金を受けており、また、2012年の同賞はERCの上級研究者向け助成金を受けたフランスのセルジュ・アロシュ博士が米国の研究者と共に受賞した。 |
EUはリスボン戦略を引き継ぐ10カ年経済成長戦略「欧州2020(Europe 2020)」を2010年に始動させた。この新戦略にはイノベーション(革新・新機軸)の推進によるEUの競争力強化を目標とする「イノベーションユニオン」と呼ばれる取り組みがある。
FP7の後継プログラム「ホライズン(Horizon)2020」は2014年から7年間にわたり800億ユーロを研究やイノベーションの実現に向けて投資し、「イノベーションユニオン」の実現で中心的な役割を担う。
ホライズン2020では以下の3つの目標に沿ってさまざまなプログラムを実施する。
(1)卓越した科学
欧州における科学のレベルを向上させ、世界最先端の研究が常に実施されている環境を通じ欧州の競争力を長期にわたり維持する。さらに欧州内のアイデア、才能を支援するとともに研究者に最良の研究環境を提供し、世界中から才能を集める。
(2)競争力のある産業
欧州をイノベーションや研究開発に向けた投資先として魅力ある地域とする。情報通信技術、ナノテクノロジー、先端素材、バイオテクノロジー、最新の製造技術、宇宙開発などの重要な産業技術や、中小企業によるイノベーションを支援する。
(3)より良い社会の構築
欧州内外の市民の関心事への研究に取り組み、以下を重点分野とする。
またホライズン2020では従来の規則や手続きが簡素化され、研究者が助成を受けやすくなっている。欧州議会と欧州理事会は、欧州委員会による原案を審議、折衝の上2013年末までに採択し、ホライズン2020は2014年1月から始動する。
FP7の2013年の助成金の提案公募情報(英語)
欧州委員会「FP7」サイト(英語)
集光型太陽電池の開発プロジェクトのプレスリリース(日本語)
欧州委員会「ホライズン2020」サイト(英語)
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