2013.1.29
FEATURE
欧州連合(EU)は、世界中の産学界のトップクラスの専門家の力を結集して、各分野での研究を行う資金助成制度を発展させてきた。現在進行中の制度は「第7次研究・技術開発枠組み計画(FP7)」と呼ばれ、2014年からは800億ユーロ規模の次期制度「ホライズン2020」が始まる(Part 2参照)。
EUはまた、域内のみならず、域外国と協力協定を結ぶことで、相互の科学技術の発展を促すことにも力を入れている。現在日本を含む19カ国との二者間科学技術協力協定がある。日本との協定は2011年に発効、以来多くの共同研究プロジェクトが実現しつつある。
例えば、FP7の枠組みを活用して現在着手されている日欧共同プロジェクトの中には、世界最高効率の集光型太陽電池(ソーラーパネル)の開発を目的とする山口真史・豊田工業大学教授とマドリッド工科大学のアントニオ・ルケ教授が率いる共同研究がある。日本の新エネルギー・産業技術総合研究開発機構(NEDO)とEUが支援するこの研究により、太陽エネルギー普及への大きな課題である太陽電池のエネルギー変換効率の向上と低コスト化を実現できれば、世界のエネルギー問題の解決へ大きく貢献することになるだろう。
各国が独自に太陽エネルギー開発に取り組めば、限られた予算が研究課題のさまざまな側面に分散して使われてしまう。FP7という仕組みを活用することで、共同助成や研究者の交流が可能となり、2014年までの4年間に総予算12億円の共同研究が実現できたのだ。このプロジェクトには日本とEU加盟6 カ国の大学や官民の主要研究機関が戦略的に連携して、世界最高水準となるセル変換効率(※1) 45%以上の高効率の太陽電池の開発を目指している(※2)。
また日本とEUは他の全世界的な課題、例えば超伝導やレアアース代替の材料研究(いずれも科学技術振興機構との共同助成)、さらには新型超音速航空機(経済産業省との共同助成)やインターネットの将来(総務省および情報通信研究機構との共同助成)に関する研究にも取り組む予定だ。
この他にも、日欧研究協力の可能性は広がっている。日本とEUが共に直面する課題である「ヘルシーエイジング」や、気候変動や海洋などの環境関連の研究、日欧がそれぞれ高いレベルでの研究を積み重ねてきた防災の分野でも、両者による共同研究が実現すれば、大きな成果をもたらすだろう。
こうした共同研究の利点は計り知れない。先の事例にあるような第三国との協力、世界中に分散する有望な最先端研究へのアクセス、共同助成、機動性、産官学連携などに加え、長期的には各国産業の競争力を強化し、各国の経済成長を後押しする。また共同研究は、研究の集約や相乗効果に加え、国際標準の設定に向けた議論を推進させる効果がある。さらには、各国の世界的な課題への取り組みが国際的に注目を集める機会にもなる。
(※1)^ 太陽光発電セル1枚あたりの光エネルギーから電気エネルギーへの変換効率
(※2)^ この共同研究への参加機関: 豊田工業大学、シャープ、大同特殊鋼、東京大学、産業技術総合研究所、マドリッド工科大学、フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(ドイツ)、インペリアルカレッジロンドン(英国)、イタリア新技術・エネルギー・環境庁(イタリア)、BSQソーラー(スペイン)、PSE(ドイツ)、CEA国家太陽エネルギー研究所(フランス)
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