EUの予算はどのように作られるのですか?

Q1. EU予算はどれぐらいの規模なのですか?

欧州連合（EU）は人口が約5億人、27加盟国のGDP合計が12兆2,840億ユーロ（2010年）あるため予算も膨大と思われがちですが、実際はさほど大きくありません。例えば2012年の予算額約1,472億ユーロは全加盟国のGDP全体の1％であるのに対し、加盟国の国家予算の総計は同GDPの44％に相当します。

2010年予算のEU加盟国国民１人当たりの負担額は1日67セント ^(※1)でコーヒー1杯の半分にも満たない額です（年間約245ユーロ相当）。なお、EU予算の特徴のひとつは、常に収支バランスが取れるように組まれることです。支出が収入を超過することは決してなく、支出額の約94％はEU加盟国のための政策やプログラム実施に充てられます。

Q2. EU予算の使途は?

2012年予算の分野別（大項目）の予算額は表1のとおりです。大項目を太字で示しています。分野として最も大きいのは持続可能な成長で45.9％、ついで自然資源の保護と管理の40.8％、この2つの分野で全予算の約86.6％を占めます。各項目または事業の予算全体に占める割合は表をご参照ください。

[表1] 2012年次予算

大項目／事業項目	予算額（単位：10億ユーロ）	予算全体に占める割合
持続可能な成長	67.5	45.9%
成長と雇用のための競争力（次の5項目を含む）	14.8
第7次研究枠組み計画	(9.6)	6.5%
生涯教育とエラスムス・ムンドゥス計画	(1.2)	0.8%
欧州横断ネットワーク計画	(1.4)	1.0%
競争力と技術革新枠組み計画	(0.6)	0.4%
社会政策アジェンダ	(0.2)	0.1%
成長と雇用のための結束（次の2項目を含む）	52.8
構造基金	(40.9)	27.8%
結束基金	(11.8)	8.0%
自然資源の保護と管理	60.0	40.8%
市場関連支出および直接支出（次の2項目を含む）	44.0
農業市場	(43.6)	29.6%
動植物の健康	(0.3)	0.2%
農村開発	14.6	9.9%
漁業	1.0	0.7%
環境と気候変動	0.4	0.3%
市民権、自由、安全、司法	2.1	1.4%
自由、安全、司法	1.4
市民権（次の1項目を含む）	0.7
公衆衛生と消費者保護	(0.1)	0.1%
グローバルプレイヤーとしてのEU	9.4	6.4%
加盟前支援施策	1.9	1.3%
欧州近隣・パートナーシップ施策	2.3	1.6%
開発協力施策	2.6	1.8%
人道援助	0.8	0.5%
民主主義と人権	0.2	0.1%
共通外交・安全保障政策	0.4	0.3%
安定のための施策	0.3	0.2%
運営	8.3	5.6%
欧州委員会	(3.3)	2.2%
他のEU機関	(3.5)	2.4%
総計	147.2*

*太字で表示した予算額の合計（大項目の数字が四捨五入されているため、合計は一致しない）
資料：“EU budget 2012” ©European Union, 2012を基に作成

Q3. EUの主な歳入源は何ですか?

EUの歳入のほとんどは、次の3種類の独自財源(own resources)でまかなわれています。全EU予算の99％を占めるこの財源の合計額は、EU加盟国の国民総所得（GNI ^(※2)）の総額の1.23％を上限とすると定められています。2010年の予算における加盟各国の拠出金と全体に占める割合等は表2のとおりです。

EU域外国原産の輸入品に課される関税ならびに砂糖課税（伝統的な独自財源）
EU加盟各国で商品やサービスに課される付加価値税（VAT）の一定割合
EU加盟各国の相対的な富裕度に応じて決定される分担拠出金

これらのほか、EUのプログラムに参加する第三国からの拠出金、前年に使われなかった予算の収支差額、EU職員の給与の税金、独占禁止法等に違反した企業の課徴金、支払延滞利子等の収入も歳入予算に含まれます。

[表2] EU加盟各国のEU予算への拠出金額と割合および対GNI比（2010年次予算）

EU加盟国	各国の拠出金* （単位：百万ユーロ）	拠出金全体に占める割合	拠出額の対GNI比
ベルギー	3,293.6	3.2%	0.92%
ブルガリア	310.2	0.3%	0.88%
チェコ	1,308.3	1.3%	0.96%
デンマーク	2,073.7	2.0%	0.87%
ドイツ	20,708.1	20.0%	0.82%
エストニア	125.1	0.1%	0.90%
アイルランド	1,208.6	1.2%	0.96%
ギリシャ	2,094.7	2.0%	0.94%
スペイン	8,937.3	8.6%	0.85%
フランス	18,173.5	17.6%	0.93%
イタリア	13,664.4	13.2%	0.89%
キプロス	158.1	0.2%	0.93%
ラトビア	158.3	0.2%	0.86%
リトアニア	230.1	0.2%	0.85%
ルクセンブルク	248.5	0.2%	0.84%
ハンガリー	862.5	0.8%	0.92%
マルタ	51.4	0.0%	0.88%
オランダ	3,864.3	3.7%	0.65%
オーストリア	2,460.3	2.4%	0.87%
ポーランド	3,339.0	3.2%	0.98%
ポルトガル	1,713.7	1.7%	1.03%
ルーマニア	1,042.2	1.0%	0.87%
スロヴェニア	320.0	0.3%	0.90%
スロヴァキア	540.1	0.5%	0.83%
フィンランド	1,575.2	1.5%	0.86%
スウェーデン	2,808.8	2.7%	0.80%
英国	12,145.8	11.7%	0.70%
EU27カ国合計	103,415.6	100%	0.84%

*　VATの一定割合と分担拠出金の合計
資料：“EU budget 2010 Financial Report” ©European Union, 2011, National contribution by Member State and traditional own resources collected on behalf of the EU in 2010 (million EUR)（p. 60）を基に作成

Q4. EUの予算はどのように決められるのですか?

EUの基本条約は5年以上の多年次にまたがる財政枠組みをEU理事会規則として策定し、該当期間内の総支出の上限を大まかな政策分野別に定めることを規定しています ^(※3)。各年の予算はその枠組みに基づいて決定されます。2012年のEUの財政は、2007-13年の多年次財政枠組みに沿って運営されています。また、同財政枠組みに基づいた2013年の予算も現在審議中です。

単年予算の策定について、2013年の予算を例にとると、本年4月25日 ^(※4)、欧州委員会が2013年の予算原案をEU理事会と欧州議会に提案しました。EUの成長と雇用を増進するための財政再建と将来の成長に対する投資を組み合わすという欧州理事会（EU首脳会議）の意見を反映しています。予算額はコミットメントベース ^(※5)で総計約1,509億ユーロです。6月現在、EU理事会と欧州議会が審議中です。EU理事会の意見を受けてから42日以内に欧州議会が承認するか、あるいは議会で議決できなかった場合に予算が成立します。

なお、2014-20年の多年次財政枠組みは、2011年6月29日に欧州委員会が提案を採択し、同年7月1日にEU理事会と欧州議会に提出しました。現在提案は継続審議中であり、各国の厳しい財政状況下、歳入源のあり方を含む論議の行方が注目されます。

（※1）^ 100セント＝１ユーロ

（※2）^ Gross National Incomeの略、GDP（国内総生産）に海外からの所得の純受取を加えたもの。

（※3）^ EUの機能に関する条約第312条第1項

（※4）^ 条約上は9月1日までだが、慣例として4月末から5月初めに提案されている。

（※5）^ 予算案を策定する段階ではプロジェクトやプログラムの詳細が確定しないため、資金支出のコミットメント（法的約束）額で計上。通常、実際の支払額はコミットメントベースの額より低い。