2019.6.24

Q & A

EUが最近採択した、一部のプラスチック製品を禁止する新指令について教えてください

EUが最近採択した、一部のプラスチック製品を禁止する新指令について教えてください

EUは、海洋ごみの8割以上を占めるプラスチック製品を大幅に削減するため、特定のプラスチック製品の販売禁止を含む、大胆な施策を取ることとした。2019年5月に採択された先進的なEUの「プラスチック指令」について、その内容と意義を解説する。

Q1. 欧州委員会が海洋ごみ対策の新たなEU指令を打ち出した根拠は何ですか?

海洋ごみの80%以上は、プラスチック製品です。2018年5月に欧州委員会は、欧州の海岸や海で最も頻繁に見つかる10種類の使い捨てプラスチック製品と、紛失・投棄された漁具を対象とする欧州連合(EU)規模の包括的な措置を指令として提案しました。これらの製品は海洋ごみ問題の最大の原因となっており、合計で全海洋ごみの70%を占めます。

2015年のEUの「循環経済行動計画」の重要な要素である「プラスチック戦略」の一環と位置付けられたこの提案は、政治的なコンセンサスに強く後押しされ、2019年5月21日のEU理事会による迅速な採択へと至りました。新指令は7月2日に発効し、加盟国は2年以内をめどに、本指令に対応した国内法を整備することになっています。

プラスチックは分解に時間がかかることから、EU域内をはじめ、世界中の海や海洋、海岸で蓄積されています。プラスチックの残留物は、ウミガメやアザラシ、クジラ、海鳥だけでなく魚介類などの海洋生物の体内でも確認されており、人間の食物連鎖に影響を与えています。プラスチックは便利で加工がしやすく、有用で経済的価値の高い素材である一方、より良く使用、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)される必要があります。海洋投棄による経済的影響は、素材としての経済的価値の喪失だけでなく、清掃にかかるコストのほか、観光業、漁業、海運業などが被る損失にも及びます。

プラスチックの残留物はさまざまな生物の体内で確認されており、海洋投棄の問題は食物連鎖にも深刻な影響を及ぼしている
© Pixabay

最も広く普及した使い捨てプラスチック製品を、より付加価値の高い革新的な代替物に置き換えることは、経済的な機会でもあります。繰り返し使用できるように設計された製品を導入することで、リユーススキームなどの画期的なビジネスモデルの創出につながる可能性があります。EUの研究助成プログラム「ホライズン2020」では、リサイクル可能なプラスチック素材の開発、高効率なリサイクルプロセス、再生プラスチックからの有害・汚染物質の除去に焦点を当てた取り組みを優先的に支援しています。

EU規模での法律の制定は、単一市場における投資やイノベーションに必要な明確性、確実性、規模の経済をもたらし、市場の細分化を防ぎます。EUはこの指令を通じて、欧州から発生する海洋ごみの問題に取り組み、世界レベルでの責務を果たそうとしています。

Q2. この指令は、海洋ごみの削減にどのような影響をもたらしますか?

この指令の目的は、10種類の使い捨てプラスチック製品の廃棄量を半分以上削減することを目指し、2030年までに220億ユーロのコスト負担につながりかねない環境破壊を防ぎます。また、2030年までに二酸化炭素(CO2)換算で340万トンの排出を食い止めます。

海洋ごみの削減は、環境破壊やそれに伴うコスト負担を防ぐための喫緊の課題となっている
© Gatis Sluka

Q3. 新指令の主な特徴は何ですか?

このイニシアチブは、欧州における海洋ごみの上位10種、すなわちEU域内の海岸で最も頻繁に見つかる10種類の使い捨てプラスチック製品、ならびに投棄・紛失・廃棄された漁具を直接的に対象としています。使い捨てプラスチックと漁具が海洋ごみ全体に占める割合は合わせて70%に上ります。

この指令は問題の根本的原因に取り組みます。つまり、これらの製品が企業や消費者によってどのように生産、供給、使用されているか、また処分方法や、その一部が海岸や海や海洋にどうやってたどり着くのかに焦点を当てています。

また、各使い捨てプラスチック製品の特徴に合わせて、主に以下のような柔軟な対策が取られています:

プラスチック製品の禁止:代替製品が手頃な値段で容易に手に入る以下の使い捨てプラスチック製品の販売が、2021年7月3日から禁止されます。

  • プラスチック製の綿棒の軸
  • カトラリー(ナイフやフォーク、スプーン、箸)
  • ストロー
  • マドラー
  • 風船棒
  • 発泡スチロール製の食品容器
  • 発泡スチロール製の飲料容器(キャップやふたを含む)
  • 発泡スチロール製の飲料用コップ(キャップやふたを含む)
  • オキソ分解性プラスチック※1 製の全製品

なお、プラスチック製のキャップやふたが付いた使い捨てプラスチック製飲料容器は、キャップやふたが本体に付いたままの場合にのみ、販売が許可されます。

これまで使い捨てにされてきた、ストローを含む10種のプラスチック製品が2021年にEU全域で禁止となり、環境に配慮した代替製品が使用されることになる
© European Union, 2019 – Source: European Parliament

消費の削減目標:加盟国は、独自の削減目標の設定、代替製品を店頭で利用可能にすること、使い捨てプラスチック製品が無料で提供されないように徹底することなどによって、プラスチック製の食品容器や飲料用カップの使用を減らす必要があります。

生産者の義務:生産者は食品容器や箱、包装(チップスや菓子類用など)、飲料容器・カップ、フィルター付きたばこ製品(たばこの吸い殻など)、ウエットティッシュ、風船、薄手のビニール袋の廃棄物管理や清掃にかかる費用のほかそれらに対する意識向上のための施策にかかる費用を一部負担することになります。生産者はまた、プラスチックを含む漁具のリユース、廃棄抑制、リサイクルおよび廃品回収を強化する必要があります。また産業界に対して、こうした製品に代わる低汚染の代替製品を開発することを奨励しています。

回収目標:加盟国は、デポジット・リファンド制度の導入などを通じて、2025年までに使い捨てプラスチック製の飲料用ペットボトルの77%を、2029年までに90%を分別回収することが定められました(いずれも重量ベース)。

ラベル表示の義務付け:特定の製品において、使用後の廃棄方法や環境に与える負荷、また製品に含まれるプラスチックに関する、明確で標準化されたラベル表示が求められます。生理用品やウエットティッシュ、風船が対象となります。

意識向上のための施策:加盟国は、使い捨てプラスチックや漁具の廃棄がもたらす悪影響や、これらの製品に関して利用可能なリユースシステムや廃棄物管理の選択肢について、消費者の意識を高めることが義務付けられます。

Q4. この指令は、マイクロプラスチックの問題にも取り組んでいますか?

EUは、マイクロプラスチックが意図的に加えられた化粧品や合成洗剤などの製品について科学的根拠を見直し、制限を設けることを検討中
© European Chemicals Agency, 2007-2019

海洋中に存在するマイクロプラスチックの大半は、大きなプラスチック片が壊れて細かな断片になることで生じるため、プラスチックごみの削減を目指すこの指令は、マイクロプラスチックの量を減らすことにつながります。マイクロプラスチックの中には、製品に意図的に加えられているものもあります(例えば化粧品や塗料、合成洗剤)。EUは現在、そうした製品の科学的根拠の見直しを進めており、EUの化学物質規制の下で制限を設ける可能性もあります。その他の海洋中のマイクロプラスチックは、製品の使用(例えばタイヤの摩耗で生じる粉塵や合成繊維の洗濯)や、プラスチックの一次生産(例えば製品生産の前段階の原料であるペレットの流出)が発生源となっています。欧州委員会は、ラベル表示や廃水処理を通じた除去、法的措置などの対策を検討しています。

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循環型経済に向けたEU初のプラスチック戦略 (EU MAG 2018年3・4月号 政策解説)

更新情報
2021/07/05 新指令発効日とプラスチック製品禁止施行日を明記

※1 オキソ分解性プラスチックは、ポリマー物質が非常に小さな粒子へ迅速に分解することを促し、潜在的にマイクロプラスチック汚染の原因となる可能性がある(内閣府食品安全委員会「食品安全関係情報」より抜粋)

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