2012.12.7
Q & A
EU加盟国が武器を輸出する際は、EUの共通外交・安全保障政策(Common Foreign and Security Policy=CFSP)の下、2008年12月に採択された武器輸出に関する「共通の立場(Common Position)」と呼ばれる規定に沿って決定を下します。この規定はEU加盟国が武器輸出の際に考慮すべき基準を定め、各加盟国の武器輸出に関する決定に統一性を持たせています。
***
EUは1998年6月に「武器輸出に関する行動規範(European Union Code of Conduct on Arms Exports)」を採択しました。この規範はEU加盟国が武器輸出の際に考慮すべき基準や、輸出が不認可になった際の報告の仕組みなどを整え、EU加盟国間の武器輸出管理政策の協調に大きく貢献しました。この行動規範を改定・強化し、武器輸出の仲介や輸送、技術移転なども対象としたのが「共通の立場」です。
「共通の立場」は、EU加盟国が武器の輸出を許可する際に、以下の8基準を考慮するよう定めています。
(1) 輸入国に対する国連安保理やEUによる制裁の有無
(2) 輸入国内での人権の尊重や国際人道法の尊重
(3) 輸入国における武力紛争あるいは緊張状態
(4) 輸入国地域の平和、安定、安全の維持
(5) EU加盟国や友好国、同盟国の安全保障に対する脅威
(6) 輸入国の国際社会――特にテロリズム、同盟関係、国際法への配慮――におけるふるまい
(7) 輸入国内における、あるいは第三国への武器移転の可能性
(8) 輸入国の技術・経済力の水準に見合った武器の輸出、さらに輸出武器の安全保障への必要性
武器輸出の許可・不許可は「共通の立場」に基づきEU加盟国政府がそれぞれ決定します。不許可の場合は、各加盟国は不許可の決定とその理由を他の加盟国に通知します。各加盟国は基本条約(※1)に基づいて自国の政策を「共通の立場」に一致させることになっています。
1989年6月の中国・北京での天安門事件では、中国政府が民主化を求める学生・市民を武力鎮圧し多数の死傷者がでました。欧州理事会(EU首脳会議)は事件直後に人権重視の立場から中国に対する武器禁輸措置を宣言しました。当時はEUとしての法的措置をとる手段がなかったため、この宣言は政治的な宣言でしたが、この禁輸措置は現在も継続しています。
またEUは、EUの機能に関する条約第215条に基づき、第三国に対し武器禁輸を含む制裁措置を科すことができます。直近では、内戦が続くシリアへの武器禁輸を2011年5月に決定し、以来同国への制裁措置を強化してきました
ほかにもEUはベラルーシ、コートジボアール、エリトリア、ギニア、イラン、リベリア、リビア、ミャンマー、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン、ジンバブエなどへの武器の輸出を禁止しています(※2)。
EUはさらに通常兵器の国際取引を規制する「武器貿易条約(Arms Trade Treaty=ATT)」の国際社会による受け入れを推進しています。ATTの論議は現在も続いており、2013年3月にはATTに関する国連会議の開催が予定されています。
(※1)^ ニース条約第15条(共通の立場採択時。現リスボン条約第29条)
(※2)^ 2012年10月時点
2024.9.2
MESSAGE
2024.8.23
FEATURE
2024.8.16
WHAT IS THE EU?
2024.8.8
FEATURE
2024.8.6
EU-JAPAN
2024.7.8
WHAT IS THE EU?
2024.7.17
FEATURE
2024.8.1
Q & A
2024.8.5
EU-JAPAN
2024.8.8
FEATURE
2024.8.16
WHAT IS THE EU?