2019.3.18

欧州委員会、対中関係を見直し10の具体的行動を提案

欧州委員会、対中関係を見直し10の具体的行動を提案

中国の強まる経済力と政治的影響力を背景に、欧州委員会と欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表はEU・中国関係とそれに関連した機会や課題について見直し、2019年3月12日に10の具体的行動を提案する共同コミュニケーション(政策文書)を発表した。

本文書は対中関係に関する行動を提案しているものであるが、同時にEUの国際競争力と安全保障にも関係している。文書で提案されているEUの対応には、以下の3つの目的がある。

  1. 中国との共通の利益を世界レベルで促進するため、同国との関与を深める
  2. 両者間の経済関係を統治する、より均衡のとれたより互恵的な条件を強く求める
  3. 長期にわたってその繁栄、価値、社会モデルを堅持するため、分野によっては、EU自身が変化する経済的現実に適応し、域内政策と産業基盤を強化する必要がある

フェデリカ・モゲリーニ上級代表兼欧州委員会副委員長は「EUと中国は、政策が異なる、もしくは競合するような部分でも、相互に関与し続けるという意思を持っている。10の行動は、相互尊重の精神で対中関係を強化することを提案するものだ」と述べている。

ユルキ・カタイネン欧州委員会副委員長(雇用・成長・投資・競争力担当)は「EUと中国の間に、公正な競争、互恵的な貿易・投資関係があれば、双方にかなりの経済的恩恵をもたらすだろう」と述べ、同提案はEUがどのように競争力を強化し、互恵性と公平性を保障し、起こりうる市場歪曲からEUを守ることができるか、を示していると説明した。

提案された10の行動は以下のとおり。

行動1:EUは、人権、平和と安全保障、開発という国連の3つの柱全てで共通の責任を果たすために、中国との協力を強化する。

行動2:より効果的に気候変動と戦うために、EUは中国に対し、パリ協定の目標に沿って、2030年より前に温室効果ガス排出量のピークを持ってくるよう要請する。

行動3:EUは、イランとの包括的共同行動計画(JCPOA)策定の際の積極的な二者協力を基盤に、平和と安全保障への関与を深める(註:中国はJCPOAの参加国)。

行動4:パートナー諸国の安定、持続可能な経済発展および優れたガバナンスへの関心を保持するために、EUは既存の二者間協定および資金提供手段をより確実に適用し、欧州とアジアの連結に関するEUの戦略の実施を通じて、同じ原則に従うよう中国に働きかける。

行動5:よりバランスのとれた相互的な経済関係を実現するために、EUは中国に対し、既存の共同コミットメントを履行するよう求める。これには、特に補助金や技術移転の強制をめぐる世界貿易機関の改革、および二者間の投資協定を2020年までに、地理的表示協定を速やかに、また航空安全協定を来る数週間のうちに、それぞれ締結することが含まれる。

行動6:中国において互恵主義を促進し調達機会を広げるために、欧州議会とEU理事会は、2019年末までに「国際調達文書」を採択すべきである。

行動7:価格だけでなく、高水準の労働・環境基準も確実に考慮されるよう、欧州委員会は、2019年半ばまでに、外国の入札者や製品がEUの調達市場に参入する際のガイダンスを公表する。欧州委員会は加盟国と共に、市場の抜け穴を特定するために2019年末までに現在の枠組みの実施状況を概観する。

行動8:外国国家による所有と資金調達がEU域内市場にもたらす歪曲的な影響に完全に対処するために、欧州委員会は2019年末までに現行のEU法の不備を正す方法を特定する。

行動9:重要なデジタルインフラに対するセキュリティー上の深刻な影響を防ぐために、第5世代(5G)ネットワ​​ークのセキュリティーに関するEU共通の取り組みが求められる。着手に向け、欧州委員会は来る欧州理事会会合の後に勧告(Recommendation)を発表する。

行動10:重要な資産、技術およびインフラへの外国投資がもたらす安全保障上のリスクの検知と認識向上のため、加盟国は外国直接投資の審査に関する規則の迅速で完全かつ効果的な実施を確実に行う。

以上を提案した共同コミュニケーションは3月21日~22日の欧州理事会(EU首脳会議)に提出され、政治的最高意思決定レベルでの承認を得る。次回のEU・中国首脳会議は4月上旬に予定されている。

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