EUの対外行動において文化が果たす役割

欧州連合(EU)といえば、気候変動への対応から、人道・開発援助の提供、世界各地で発生している紛争や対立の平和的解決の仲介まで、政策ずくめのように見えるかもしれません。

しかし、EUには柔らかい一面もあるのだということを、強調したいと思います。28の加盟国の多様性が豪華なタペストリーを織り成し、料理であれ芸術であれ、スポーツであれ旅であれ、世界の誰しもが共感できるような何かを供しているのです。

したがいまして、今年の前半に、欧州委員会とEU外務・安全保障上級代表が、「国際文化関係のための戦略」を発表したことは、全く驚くべきことではないのです。それは、EU外交政策において文化が極めて重要な役割を果たし得るとの理解に基づき、EUとパートナー諸国の間の文化協力の促進を目指すものです。文化は、EU経済にとって欠くことのできない構成要素であり、欧州が強い競争力を有する部門でもあります。去る10月18日、当代表部において、初めての「ヨーロッパツーリズムメディア・ワークショップ」が開催されました。16のEU加盟国が集まり、自国の魅力とともにそれぞれ日本からの観光客に何が提供できるかを一斉にアピールする場となりました。ワークショップに訪れた人からも、展示をした加盟国からも、好評を博しました。

文化は、社会と経済の両方の発展を牽引するのみならず、人と人をつなぐツールとしても有効です。文化交流を進めることにより、人々は胸襟を開いて対話をするようになり、互いへの尊敬が育まれます。それがひいては、固定概念と偏見を打ち破ることにつながる、と確信しています。日本もまた豊かで壮麗な文化を有する国であり、それを世界中に周知する活動を積極的に続けています。EUと日本という同じ考え方を有するパートナー間の関係において、文化がより一層特別な役割を果たすことを希望します。

 

ヴィオレル・イスティチョアイア=ブドゥラ
Viorel ISTICIOAIA-BUDURA
駐日欧州連合特命全権大使