2016.6.20
FEATURE
本年創設20周年を迎えた「アジア欧州会合(ASEM)」の第11回首脳会合(ASEM11)が、7月15、16日の2日間、モンゴル・ウランバートルで開催される。EUからは、ドナルド・トゥスク欧州理事会議長とジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長が出席する。
アジア欧州会合(Asia-Europe Meeting=ASEM)は今から20年前、それまで比較的弱かった欧州とアジア両地域の結び付きを強化する必要があるという共通認識の下、非公式な対話の枠組みという形で立ち上がった。1996年3月にタイ・バンコクで開催された第1回ASEM首脳会合には、日本を含むアジア10カ国と欧州連合(EU)加盟15カ国(当時)の首脳および欧州委員会委員長が参加。
その後、アジアは通貨危機を乗り越え大きく成長し、またEUは中・東欧に拡大するとともにリスボン条約で大幅な機構制度改革を行うなど、双方は変容と発展を続けた。特にEUに関しては、ASEM 創設時にはその行政執行機関である欧州委員会がメンバーであったが、機構改革の結果、2014年より欧州委員会に代わり、EUとしてASEMのメンバーに名を連ねるようになった。
現在では、アジア側は21カ国ならびにASEAN事務局、欧州側はEU加盟28カ国にEU域外の2カ国を加えた30カ国およびEU、と大所帯となったASEM。その全ての参加国(下表)を合わせると、世界全体の人口の6割以上、国内総生産(GDP)は6割近くを占める。
欧州:30カ国1機関 | アジア:21カ国1機関 | ||
オーストリア | リトアニア | ブルネイ・ダルサラーム | カザフスタン |
ベルギー | ルクセンブルク | カンボジア | 韓国 |
ブルガリア | マルタ | インドネシア | モンゴル |
クロアチア | オランダ | ラオス | ニュージーランド |
キプロス | ポーランド | マレーシア | パキスタン |
チェコ | ポルトガル | ミャンマー | ロシア |
デンマーク | ルーマニア | フィリピン | ASEAN事務局 |
エストニア | スロヴァキア | シンガポール | |
フィンランド | スロヴェニア | タイ | |
フランス | スペイン | ベトナム | |
ドイツ | スウェーデン | (以上ASEAN加盟国) | |
ギリシャ | 英国 | オーストラリア | |
ハンガリー | (以上EU加盟国) | バングラデシュ | |
アイルランド | スイス | 中国 | |
イタリア | ノルウェー | インド | |
ラトビア | EU | 日本 |
2018年2月現在
ASEMの首脳会合は2年ごとに開催され、外務大臣会合、経済大臣会合、財務大臣会合などの閣僚会合や高級実務者会合も定期的に行われている。ASEMは常設の事務局を置いていないため、各会合の開催にあたってはEUとアジアそれぞれから2カ国・機関ずつが調整役を務めている。EUの場合はその外交機関にあたる欧州対外行動庁(European External Action Service=EEAS)、およびEU理事会の半年ごとの輪番制議長国がASEMの調整役を務めている。
EUはASEMプロセスを全面的に支持しており、ASEMの連携を強め、持続的な協力のための堅固な基盤形成を目指し、ASEMダイアログ・ファシリティという支援の仕組みを2008年に立ち上げた。これにより、発展途上国の参加が容易になるなど、発展度合いの異なるASEMメンバーのバランスの取れた参加を確保している。
ASEMは形式にとらわれない非公式会合となっていることが大きな特徴だ。そのため民主主義、人権、法の支配などの基本的な価値といったデリケートな議題についても、自由な意見交換が行いやすくなっている。それは、設立当初より相互尊重と相互利益に基づく平等な関係の下、開かれた包括的な対話と協力の枠組みを持つことを目指しているからである。この、いわば発展的なASEMのプロセスは、以下の「政治」、「経済」、「社会・文化・教育」の3つの分野を柱に進められている。
その時々の主要な地域情勢や安全保障などの共通の関心事項について意見交換をし、両地域ひいては世界の安定に向け相互理解を深め、政治協力の基盤を構築する。近年では特にテロ、エネルギー安全保障、防災などのグローバルな課題を取り上げている。EUは、自身の地域統合、環境問題・持続的な開発、社会的統合の強化、文化的多様性などに対する取り組みを通じて得られた知識と経験を、ASEMを通じてアジアと共有している。会合の成果は、両地域のコンセンサスとして議長声明などの形で発出される。
アジア・欧州間の貿易や投資の活発化ならびに多国間主義の促進など、経済・金融分野での協力関係のさらなる発展を、対話を通じて強化する。またグローバル化と持続可能な開発に焦点を当てつつ、気候変動問題をはじめとする環境問題などの課題への取り組みについて議論する。民間部門が参加する協議の場として、アジア欧州ビジネスフォーラム(Asia-Europe Business Forum=AEBF)を開催、毎年アジアと欧州の経済団体や民間企業のリーダーが集うほか各国首脳も参加し、官民の意見交換や民間レベルでの交流を促進している。
アジアと欧州のより深い相互理解のためには、両地域の文化的なつながりの強化と民間レベルでの緊密な交流が不可欠であるとの観点から、さまざまな文化・芸術・教育交流を実施。担当閣僚会合を通じて、両地域間の対話と理解の促進を図るほか、若者や学生など次世代を担う人材育成を進める。本分野で特筆すべきは、2000年に始まったアジアと欧州の研究・教育機関をつなぐ「ユーラシア大陸横断情報ネットワーク(TEIN)」プロジェクトだろう。今や5,000万人が利用する世界最大のネットワークに成長したTEINには、EUが相当な財政支援を行っている。
また、市民交流では、ASEM関連で唯一の常設機関で、シンガポールに拠点を置くアジア欧州財団(Asia-Europe Foundation=ASEF)が中心となって事業を実施している。主な事業としては、アジアと欧州の芸術文化情報のポータルサイト「ASEM Culture 360」による情報交換プラットフォームの形成のほか、ASEFヤング・リーダーズ・サミットやASEF大学(サマースクール)などを開催し、人材交流を進めている。
ASEM10周年にあたる2006年にフィンランド・ヘルシンキで開催された第6回ASEM首脳会合(ASEM6)では、議長声明と合わせて、「ASEMの将来に関するヘルシンキ宣言」を発出。その中で2016年までの来る10年間におけるアジア・欧州の連携の深化や重点的行動分野の特定など、ASEMの活動指針が示された。20周年の節目となるASEM11では過去20年間のASEMの活動やヘルシンキ宣言の達成度、将来に向けたビジョンをまとめたウランバートル宣言が出される予定だ。また世界経済や気候変動問題、ポスト2015開発アジェンダなど幅広い分野にわたって首脳どうしの議論が交わされる見通しである。
ASEM11の開催に先立ち、ウランバートルでは4月より関連イベントが始まっており、閣僚級会合では第12回ASEM財務大臣会合(6月9~10日)、光州広域市(韓国)で第7回ASEM文部大臣会合(6月22~24日)を開催。グローバル化が進み、存在感の強まる欧州とアジアのパートナーシップを支えるASEM。20周年の節目に、首脳たちがどのような成果を打ち出すのか、注目したい。
EUとASEMの関係(EEASのサイト)
ASEMに関する公式情報サイト
ASEM11の公式ウェブサイト
アジア側の参加国の情報を更新(2018年2月)
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