2014.1.28
FEATURE
産業革命以降の二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出増加により、地球は温暖化が進み、それに伴う台風やハリケーンなどの自然災害も世界各地で発生している。国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が2013年9月に発表した第5次評価報告書では、気候システムの温暖化は疑う余地がなく、1880年~2010年において世界の平均地上気温が0.85℃上昇していると述べ、温暖化は人間の活動に起因するとほぼ断定した。また、温暖化に伴い、ほとんどの地域で異常高温の頻度が増すこともほぼ確実だと述べている。さらに、多くの科学者が、世界の平均気温の上昇が産業革命以前の水準と比べて2℃を上回ると、地球環境に壊滅的な被害を及ぼす恐れがあると指摘している。
深刻化する地球温暖化に対応するため国連気候変動枠組条約が採択されたのは1992年のことだ。1997年に京都で開かれた第3回締約国会議(COP3)では京都議定書が採択され、先進国の温室効果ガス排出に対し法的拘束力がある数値目標を各国ごとに設定した。2008~2012年に温室効果ガスを1990年の水準に比べ欧州連合(EU)は8%、米国は7%、日本は6%削減し、先進国全体では少なくとも5%削減することを目指すと合意した。
京都議定書は先進国のみに削減を義務づけているが、昨今の温室効果ガスの排出量を見ると、経済発展が著しい開発途上国、特に中国やインドの排出を削減しなければ温暖化の進行は抑えられないとの意見が強くなってきた。
実際2010年のCO2排出状況をみると、世界全体の303億トンの排出量のうち、中国が24%、米国が17.7%、EUが9.8%、インドが5.4%、ロシアが5.2%、日本が3.8%を占めている。
これに対し途上国は、これまでの温室効果ガスの排出は先進国に責任があるとし、経済発展の足かせになりうる排出量削減義務化には反対してきた。
EUは世界全体の温室効果ガス排出量の約11%を占めている。上述のように京都議定書ではEU(当時は15カ国)は2008年~2012年で1990年比8%の削減を約束したが、目標を上回る12.2%の削減を実現した。
EUはまた2007年3月、EUの温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で20%削減すると発表した。具体的な主な削減方法は以下の通りだ。
これまでのところ、EUは順調に削減目標に向かって進んでおり、EU28カ国の2011年の排出量は1990年比で18.3%削減されていた。しかもその間のGDPは40%以上の伸びを記録した。
そして2011年3月、EUは2050年に向け1990年比で80~95%削減する目標を掲げ、ロードマップを作成・公表した。また本年1月22日、欧州委員会が2030年に向けての削減目標に関する政策提案を発表した。この提案は3月の欧州理事会で議論される予定となっている。(囲み記事参照)
2011 年に南アフリカのダーバンで開かれたCOP17では、先進国だけに削減義務を課している京都議定書の次の枠組みとして、途上国も含むすべての国が参加する枠組みを2015年のCOP21(パリ)で採択し、2020年から運用することが合意された。
ダーバンではまた、2013年で終了する京都議定書の約束期間に続く第2約束期間(2013~2019年)を設定したが、日本やロシア、カナダがこれに参加しないことを表明。翌2012年ドーハで開かれたCOP18では京都議定書の改正文書が採択され、2013年1月1日から第2約束期間(~2020年末まで)がスタートすることになった。
そして2013年11月11日にワルシャワで開かれたCOP19に求められていたのは、2015年のCOP21で目指す次期枠組みに関する合意のための道筋をつけること、また2020年までの温室効果ガス削減を進めるための取り組みの強化に関する合意だった。
途上国側は、先進国からの資金援助がきちんと行われるように具体的な道筋をつけることを求めた。また、巨大台風など地球温暖化によってもたらされる深刻な被害に対応するための新たな仕組みの設置を要求した。これまで気候変動枠組条約の下では「適応」対策を進めるための仕組みは存在したが、こうした「適応を超えたところ」で発生する「損失と被害」(loss and damage)に対応するための仕組みは存在していなかった。
IPCC第5次報告書は、このまま温室効果ガスの排出が続くと、地球温暖化は進み気候系のあらゆる要素に影響がでるため、大幅な削減が求められていると指摘した。この指摘を受けてEUは、世界全体の温室効果ガスの排出は遅くとも2020年までにピークを打ち、2050年までに少なくとも1990年の水準の半分にすべきだということを再確認した。
EUはCOP19で、すべての国が参加する次期枠組みを2015年末のCOP21で採択するための道筋をつけることが重要と考え、具体的な文章の素案を2015年の5月までに準備するために、各国が削減目標案を2014年内に提出することが望ましいと主張した。特に、2015年合意のために2020年までの削減目標を策定するプロセスにすべての国が合意することが必要と考えた。
2020年に向けた行動について述べると、EUをはじめ世界80カ国以上が2020年までの削減目標を掲げている。しかし、それは世界の気温上昇を2℃未満に抑えるためには十分ではない。そこでEUはまだ削減目標を提示していない国の参加を求めていた。また、そのためにも、国際協力が必要だと主張した。
さらにEUは、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を段階的に減らす目標を温室効果ガスの削減目標に組み入れることを求めた。HFCはオゾン層を破壊しない代替フロンだが、強力な温室効果ガスでもある。
先進国から途上国への資金援助については、地球温暖化による海面上昇や異常気象による被害を受けやすい途上国への「損失と被害」の取り扱いを含む、これまでに合意した資金援助の仕組みをどう運用するかについて具体的に決めることが必要だと主張した。
先進国は2020年までに途上国にあらゆる資金源から年1,000億ドルを供与するという合意がなされており、EUと加盟国は2010年~2012年に途上国に「ファストスタート」資金として72億ユーロを提供する約束をし、すでにそれを上回る74.3億ユーロを拠出している。
COP19は当初の会期を1日延長した11月23日、合意文書の採択に至った。各国は、自主的に策定した削減目標案を2015年のCOP21よりも「十分に早い時期」に、また可能な国は2015年の3月末までに提出することが決まった。目標の位置づけに関し、途上国の主張により、「約束」を意味する「コミットメント」という文言ではなく、より緩やかな「貢献」という意味の「コントリビューション」という言葉に変わった。
途上国が要求した、巨大台風など温暖化に伴う自然災害による「損失と被害」への対処策は、結局、2010年のCOP16で合意された「カンクン適応枠組み(CAF)」の下に「ワルシャワ国際メカニズム」という専門組織を設けることで合意した。
森林はCO2を吸収、固定する。森林が減るとCO2が吸収されなくなり、さらに土壌内のCO2も放出される。森林破壊による温室効果ガスの排出は実に世界全体の2割を占める。途上国の森林部門における温室効果ガス排出は無視できない大きさであり、森林減少などの対策に関する国際的な枠組みの実現は長年の課題となっていた。今回、REDD+(途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減)についても一連の合意が成立した。森林保護によって排出が抑制された分に応じ、途上国に資金が支払われることになり、技術ガイダンス、組織も含む支援の調整に関する枠組みを決定した
EUはCOP19の結果について、「気候変動問題への国際的取り組みの一歩前進だ」と歓迎している。コニー・ヘデゴー気候行動担当欧州委員は声明のなかで「ワルシャワの会議は、パリ(で開催されるCOP21)で意欲的な結果を得るための道がどれほど大変なものかということを示した。しかし、最終段階での話し合いは、我々は前進することが可能だということも示した。(中略)ワルシャワでは、ぜい弱な途上国の温暖化による損失と被害を援助するメカニズムに合意したことも、喜ばしい成果だ」と述べた。
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