2014.11.28
FEATURE
世界保健機関(WHO)が11月21日に発表した世界の「エボラ出血熱」の感染状況によると、「疑い例」も含む感染者は、シエラレオネ、リベリア、ギニアの西アフリカ3カ国を中心に1万5,351人、死者は5,459人と、依然深刻な状況が続いている。エボラウイルスによる急性熱性疾患であるエボラ出血熱の犠牲者、感染者はかつてない速さで増え続けており、ウイルスの感染拡大を食い止めいかに封じ込めるかは、国際社会の責務になっていると言っても過言ではない。
9月には国連の潘基文事務総長が、エボラ出血熱対策の国際緊急首脳会合を開催。各国に必要な支援を早急に行うよう要請した。さらに、11月15日~16日にオーストラリア・ブリスベンで開催された主要20カ国・地域首脳会合(G20)でもエボラ出血熱対策が議論され、流行阻止や治療法の確立に協調して対応することを盛り込んだ緊急の首脳声明が発表された。
EUは、エボラウイルスによる被害拡大に合わせて臨機応変に、迅速に、かつ大規模に感染国への支援を展開している。欧州委員会と各加盟国が、これまでエボラ対策のために資金援助を表明した額は総計でほぼ11億ユーロ。これは10月の欧州理事会(EU首脳会議)で設定した目標額10億ユーロを超えている。うち、欧州委員会はすでに3億7,200万ユーロを人道・開発援助と医療研究支援に提供している。資金援助に加え、人道援助専門家と緊急支援物資が最も患者の多い地域に送られている。
本年3月にエボラ出血熱の急激な拡大が始まって以来、欧州委員会の緊急対応調整センター(ERCC)が状況の監視を続けてきたが、より総合的かつ集中的な取り組みを進めるために欧州対外行動庁(EEAS)や感染国にあるEU代表部を含むEUのあらゆる関係機関を統括する「EUエボラ対策タスクフォース」が新たに設置された。タスクフォースには、加盟国や国際組織、NGOなど他の関連機関の専門家も加わり、対応の調整基盤であるERCC内で日常的に活動し、国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)やWHO、他の主要パートナーとも連携している。
10月7日にEUは、西アフリカへの人道支援として400万ユーロの拠出を決定。このうち100万ユーロはユニセフ(UNICEF)による空輸への資金提供に振り分けられ、10月10日に実施された最初の空輸では、マスクや手袋などの人体保護用品、最重要医薬品、衛生品を含む100トンの緊急用品が現地に輸送、配布された。残りの300万ユーロはERCCの調整による医療援助システムの設置に振り分けられ、西アフリカで働く国際的援助団体関係者がエボラ出血熱に感染していると診断された際は、48時間以内に欧州域内の受け入れ態勢の整った病院へ航空機で搬送できるようになった。
EUは、10月16日にベルギー・ブリュッセルで加盟諸国の保健相らが集まるハイレベル会議を実施し、エボラ出血熱への取り組みをさらに進めることと、そのためにEU加盟国が準備と対応を強化することで合意した。11月1日の新委員会発足に先駆け、10月23日~24日の欧州理事会で欧州委員会の次期人道援助・危機管理担当委員に就任予定のクリストス・スティリアニデス氏をEUのエボラ出血熱対応調整官に任命し、同時に総額10億ユーロをエボラ対策費として拠出することを決定した。この規模は11月6日に見直されてさらに拡大、ほぼ11億ユーロの支援がEUとその加盟各国により公約されることになる。
EUのエボラ出血熱対応調整官に任命されたスティリアニデス人道援助・危機管理担当委員は就任後、11月12日から5日間、ヴィテニス・アンドリュカイティス保健衛生担当委員と共に感染者が多いシエラレオネ、リベリア、ギニアをいち早く訪問。さらに11月13日には、支援のために感染国に渡航し、エボラ出血熱患者と接触する可能性のある保健衛生専門家らを対象とした会合を開催。エボラ出血熱やEUレベルでの活動についての情報周知、組織とそのメンバーが抱える問題の解決、EUの支援領域の特定、協働の可能性などについての議論を行った。
EUではこれ以上の感染拡大阻止という現状への対策だけではなく、根本的解決に向け、エボラ出血熱のワクチンや治療薬開発のための助成にも力を入れている。こちらも大規模かつ迅速だ。10月23日、欧州委員会はEU予算から2,440万ユーロをエボラ出血熱の研究に拠出すると発表した。この資金はEUの研究・イノベーション支援プログラム「ホライズン2020」から優先的手続きにより提供される。「ホライズン2020」が拠出元として選ばれたのは、既に開始され、仕組みが整備されたプログラムであるためだ。
さらに、被害状況の悪化を受けてこの措置は見直され、EUと域内の製薬業界とが協力して、より大規模なエボラ出血熱の研究助成へと拡充することが決定、11月6日に第1回目となる1億6,000万ユーロ規模の公募を開始した。このプロジェクトは欧州委員会が域内製薬業界と共にワクチン、治療薬および診断法の開発に取り組む「革新的医薬品イニシアチブ」(IMI)の下で立ち上げられ、「ホライズン2020」の助成と「欧州製薬団体連合会(EFPIA)」会員企業の出資により、公募で選ばれた研究を助成する。「ホライズン2020と我々の産業界のパートナーによる資金助成により、新ワクチンと薬剤の開発が進み、世界の人々の命が守られるだろう」と欧州委員会のカルロス・モエダス研究・科学・イノベーション担当委員は今後の成果に期待を込める。
資金助成の対象となるプロジェクトはエボラワクチンの開発、ワクチンの製造規模拡大技術、ワクチン輸送と保存技術、ワクチン投薬を広めるための計画、迅速な診断検査技術についての5種類で、選ばれた最初のプロジェクトは2015年初めにも始動する予定だ。
EUのかつてない規模の支援が、エボラ出血熱の現状と、将来のまん延防止に貢献することが期待されている。
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