2016.5.24
EU-JAPAN
日本と欧州連合(EU)双方のビジネス環境の改善に寄与することを目的に、産業界から政府への政策提言を行うための議論の場「日・EUビジネスラウンドテーブル(BRT)」の年次会合が4月20日、東京で開かれた。本年の会合には、欧州の有力企業の経営幹部のほか、欧州委員会のエルジビエタ・ビェンコフスカ域内市場・産業・起業・中小企業担当委員が来日。委員は日本滞在中、関係省庁や経済団体を訪れ、大臣らと会合を持つなど日本と欧州の間の産業協力推進に向け精力的な活動を展開した。
日本とEUの主要企業50社の最高経営責任者(CEO)や経営幹部で構成されるBRTは、日・EU間の貿易、投資促進などに関する共同提言書を日・EU両政府へ提出し、イノベーション、工業規格といった共通の関心事項における産業協力を後押しすることを主な目的に1999年に発足した。テーマ別に日欧のメンバーが1年をかけて議論した内容が、日・EUで毎年交互に開かれる年次会合でまとめられる。
4月20日に都内のホテルで開かれた「第18回日・EUビジネスラウンドテーブル年次会合」のテーマは「持続可能な成長に向け一歩を踏み出す」。会合では、三菱重工業の佃和夫相談役、エアバス社のファブリス・ブレジエ社長兼最高経営責任者(CEO)が共同議長を務め、政府代表として、日本側から鈴木淳司経済産業副大臣、武藤容治外務副大臣、北村経夫経済産業大臣政務官、阪本泰男総務審議官、EU側から欧州委員会のエルジビエタ・ビェンコフスカ域内市場・産業・起業・中小企業担当委員、アンティ・イルマリ・ペルトマキ域内市場・産業・起業・中小企業成長総局副総局長およびフィリップ・デュポンテイユ通商総局極東ユニット長が、また駐日EU代表部のジョナサン・ハットウェル副代表・公使が出席した。
日本とEUの経済は、世界的成長と貿易の鈍化、通貨、石油およびその他の市場の混乱、さらに消費者の買い控え、人口問題、地政学上の問題など、依然として多くの課題を抱えている。こうしたことから将来に対する確信が揺らぎ、企業は利益や現金を投資や賃金に回すことを控える傾向にある。このような状況を踏まえ、年次会合では、テーマである「持続可能な成長に向け一歩踏み出す」の下、「日・EU間の自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)および規制協力」、「循環型経済」、「日・EUの投資環境の改善」の3主要項目について活発な意見交換が行われた。
これまでと同様、今年の年次会合でも、FTA/EPAは討議の中心であった。貿易、投資や雇用の拡大をもたらすFTA/EPAは、日・EU間の経済成長につながるだけではなく、世界経済の成長をも促す。BRTは、日本政府首脳およびEU政府首脳が、包括的、意欲的かつ互恵的なFTA/EPAの早期締結を阻んでいる残存する障壁に重点的に取り組むよう要請する、とした。
経済およびビジネスの理想的なモデルとして「循環型経済」も討議された。循環型経済は、イノベーション、競争力、そして持続可能な成長を促すのに最適であり、双方が共に協力して追求していくべきモデルである。さらに参加者は、新しく制定されたコーポレートガバナンス・コードにより、日本のビジネス環境が改善されたこと、および柔軟で自主的なガイドラインと規準を通じて持続可能な経済とイノベーションを推進することの重要性に合意した。
なお、会合中、ロールス・ロイス社民間航空部門プレジデントのエリック・シュルツ氏がブレジエ氏の後を継いでEU側共同議長に就任することが発表された。
4月20 日の年次会合で採択された日・EU ビジネス界からの共同提言書は、翌21日に総理官邸にてEU側のブレジエ共同議長から安倍晋三総理大臣に、また日本側の佃共同議長からビェンコフスカ欧州委員会委員にそれぞれ手交された。佃共同議長は、日・EUのFTA/EPAの本年中の大筋合意実現へ向けた要望を、ブレジエ共同議長からは、提言書が日・EUのパートナーシップ強化や経済成長に寄与し日・EUのFTA/EPA交渉妥結に資することを願う、との趣旨が伝えられた。
共同提言書を受け取ったビエンコフスカ委員は、謝意を述べつつ、産業界からの提言は、日・EU間のFTA/EPA交渉の加速化や日・EU経済にとって重要であると述べた。安倍総理も、両共同議長をはじめとするBRT関係者に謝意を表した上で、伊勢志摩サミットにおいて世界経済の持続的かつ力強い成長に向けたメッセージを発出したいと述べるとともに、日・EU・FTA/EPA交渉の年内妥結に向け取り組んでいくとの意向を示した。
日欧産業協力の一層の推進に貢献したビェンコフスカ欧州委員会委員
欧州委員会のエルジビエタ・ビェンコフスカ域内市場・産業・起業・中小企業担当委員は、4月20日から22日まで、第18回日・EUビジネスラウンド・テーブル(BRT)年次会合を機に東京を訪れた。
4月20日のBRT年次会合に続いて催された夕食会のスピーチで、まず熊本地震で犠牲になった方々へ哀悼の意を捧げた後、日本との関係について「日本はEUの重要なパートナーである。共に協力し、市場開放という基盤に則って効果的に働きかければ、経済は成長し、ビジネスは活性化し、消費者も恩恵が受けられるだろう。交渉が続いているFTA/EPAが合意に達すれば、日・EU双方の経済に刺激を与える。[…]交渉のプロセスを加速化し、包括的でバランスの取れた合意に達するよう両者が全力を尽くさなければならない」と締めくくった。
ビェンコフスカ委員はBRT年次会合のスケジュールを縫って精力的に日本の関係省庁や日本と在日欧州経済団体などを訪問。経済産業省では林幹雄大臣らと会談し、ビジネス環境や 鉄鋼部門の過剰生産能力の改善について意見交換した。
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