2024.9.2

MESSAGE

新体制下で「共に」発展を

新体制下で「共に」発展を

この夏は、皆様の多くがそうされたように、私の母国フランスで開催されたパリオリンピックに参加した驚異的なアスリート達を応援して多くの時間を過ごしました。中でも、海外のオリンピック大会で獲得した金メダル・総メダル数で最多を更新した日本選手団の活躍には目を見張る思いでした。そして、その興奮冷めやらぬ内に開幕したパラリンピック大会もまた、人間の肉体と精神が持つ無限の可能性を私たちに教えてくれています。

今年6月、欧州連合(EU)各地で、市民は欧州議会選挙で票を投じました。その結果、極右勢力の伸長が見られたものの、親EU勢力である中道政党が議席の過半数を引き続き確保しました。そして、新たに招集された欧州議会でウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が速やかに再選され2期目を迎えることは、域内でグリーンとデジタルの2つの大転換を成功裏に実現しつつ、ロシアの侵略戦争に対するウクライナ支援から世界各地で最も弱い立場に置かれた人々への援助の提供に至るまで、さまざまな分野でEUが今後も国際社会における主要なアクター、そして信頼できる戦略的パートナーであろうとしている何よりの証拠です。

フォン・デア・ライエン委員長の他に、次期欧州理事会議長にはポルトガルのアントニオ・コスタ前首相が就く他、ジョセップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表の後任にはエストニアのカヤ・カラス前首相が就任する予定です。再選されたロベルタ・メツォラ欧州議会議長を含め、主要なEU諸機関の要職は、今回も地理・ジェンダー・政治的立場の点でバランスが取れた人選となりました。晩秋には、残りの欧州委員も選任され、新欧州委員会が発足する予定です。

日・EU関係にとって、このことは継続性を意味すると同時に、欧州が新たな活力を得て、方向性を見直し、新たに設定された政策の優先課題に挑戦していくということでもあります。しかし、新体制下でも日本やより広範なインド太平洋地域との連携の重要性について前任者の見解を共有し、貿易と投資から気候・エネルギー、デジタルおよび研究・イノベーションに至るまで、幅広い分野でこれまでに築き上げてきた関係のさらなる発展に尽力することは間違いありません。

オリンピックのモットー「より速く、より高く、より強く(Citius, Altius, Fortius)」は、2021年に改められ、連帯の重要性を表す「共に(Communiter)」という言葉が付け加えられました。連帯は、EUの主要な価値の一つでもあり、EUの次期首脳陣が今後もEUの域内外で重視するものです。このように新体制の下でEUと日本との連携における新たな章が始まることに、私は大いに期待を寄せています。

ジャン=エリック・パケ
駐日欧州連合特命全権大使

人気記事ランキング

POPULAR TAGS