2016.6.14

EU-JAPAN

ますます充実の「EUフィルムデーズ2016」

ますます充実の「EUフィルムデーズ2016」

「映画で旅するヨーロッパ」をテーマに、今年も「EUフィルムデーズ」が開催される。14回目となる今年、欧州連合(EU)加盟28カ国のうち日本に大使館を置く26カ国全てからの出品が実現した。今回も例年どおり多彩なラインアップとなり、映画を通して欧州を発見する格好の機会となるだろう。会期は東京が6月18日~7月10日、京都が6月25日~7月15日だ。

日本に大使館を置く26カ国全てから出品

映画市場の規模では世界屈指の日本。手軽な娯楽として多くの人が映画館に足を運ぶ中、興行シェアの大半は国産映画が占め、外国映画といえば、ほぼ米国映画を指すのが現状。他方、日本では一般的に欧州映画の評価は高い。そのような背景の下、欧州映画を一堂に集めて上映する機会を作り、同時に「欧州連合(EU)への理解を深めてもらおう」と始まったのが「EUフィルムデーズ」だ。

2003年の立ち上げ以来、毎年開催され、今年で14回目を迎えるEUフィルムデーズ。EU加盟国の在日大使館がそれぞれ1作品(ベルギーのみ2作品)提案する仕組みで、今回は加盟28カ国中、日本に大使館を置いている全ての加盟国、26カ国が参加する。メインのプログラムは27作品。このうち12作品が日本初公開だ。そのほかに特別プログラムとして、2作品のプレミア上映と、講演会と上映の組み合わせ、ならびにアニメーションのクリエイター向けのEUプログラムの紹介と上映の組み合わせが各1件、計4イベントが行われる。

EUフィルムデーズは東京に加え、これまで年によって地方都市でも開催されてきた。昨年は京都で行われ、東京・京都の両会場を合わせて過去最多の約1万2,000人が来場した。京都は伝統的な街でありながら、学生が多い文化都市。同地での開催が大変好評だったため、本年は期間・作品数共にさらに拡大し、映画を通じて海外の文化の多様性や国民性に触れられる格好の機会を楽しみにしている当地の映画愛好家の期待に応えることとした。

上映会場である東京国立近代美術館フィルムセンターと京都府京都文化博物館は、各国大使館・文化機関、駐日EU代表部とならんで主催者となっており、上映技術面を支えている。両館とも商業目的の映画館ではなく、ミュージアムという位置づけ。鑑賞料は500円~520円(一般)と格安である。また、EUや各大使館にとっては良質な映画を常に上映している会場であることで集客面の強みがあると同時に、上映会場にとっても多彩な欧州映画作品をまとめて上映できるメリットがあり、お互いに理想的なパートナーとなっている。

例えば歴史ものに注目してみる

本年も多くの国の参加により、歴史もの、アクション、コメディ、ファミリー向け、アニメーションなど、多彩な作品をそろえることができた。年齢やジャンルの好みに応じ、興味を引く作品がきっと見つかるだろう。ほとんどの作品が日本語字幕付きで上映されるが、英語字幕しかない3本の作品についても、鑑賞者の便宜を図るため日本語のあらすじと解説が配布されることになっている。

今回のラインアップから、例えば歴史に関連した作品に注目してみよう。オランダの作品『提督の艦隊』は、17世紀を舞台とし、英国とフランスの大軍を相手に闘った提督と海軍の活躍を描いた壮大な歴史アクション。アイルランドの作品『ジミー、野を駆ける伝説』はアイルランド独立のきっかけとなった1916年のイースター蜂起にちなんだ物語。ポルトガルの作品『ボルドーの領事』の主人公は第二次世界大戦中、ユダヤ人にビザを発給し続けた外交官、メンデスの物語。ドイツのシンドラー、日本の杉原千畝と並び称される人物だ。

リトアニアの作品『マリヤ、1948年の旅路』は、第二次世界大戦後、ソ連の収容所に送られる途中の少女が脱出し、故郷を目指す物語。ドイツの作品『ロストックの長い夜』は東西ドイツ統一直後、旧東ドイツで起きた難民襲撃事件を題材にしている、現在の社会情勢とも通じる作品だ。

過去を直視し、過ちを繰り返さない、という強い信念に突き動かされているかのように、欧州ではこれまでのさまざまな戦争や東西冷戦、民族や難民の問題を扱った作品が製作され続けている。こうした作品を通して、現代の課題への新たな視座が見えてくるかもしれない。

例えば日本に関連する作品に注目してみる

次に、日本と関連のある作品に注目してみよう。ハンガリーの作品『リザとキツネと恋する死者たち』は日本人歌手の幽霊(役名:トミー谷)が登場するコメディ。ルーマニアの作品『日本からの贈り物』は、孤独な老人の元に音信不通だった息子が日本人の妻を連れて帰ってくる、家族の物語。特別プログラムとしてプレミア上映されるラトビアの作品『ルッチと宜江』は、日本の大学院生の「ノリエ」が、ラトビアで81歳の女性宅にホームステイし、友情を育むドキュメンタリー。日本あるいは日本人が欧州映画でどのように描かれているかを知ることは、興味深いことだろう。

日本人スタッフが製作に関わっている作品もある。ブルガリアの作品『ヴィクトリア』のプロダクション・デザイナーは山村倫さん。ブルガリア在住15年の山村さんは、首都ソフィアにある国立演劇映画アカデミーの人形劇舞台美術科を卒業し、舞台美術や絵本、CDジャケットのデザインなどに幅広く活躍。2011年にはブルガリアの演劇賞「イカル」の、人形劇芸術部門の最優秀賞を受賞している。人形劇の舞台美術で培った経験が、どのように映画に生かされているのかも見どころだ。

家族で楽しめるアニメーション、「映画」が題材の作品の特別プログラムも

ラトビアからは最新の子ども向けのショートアニメーションの特集が出品される。9本のうち8本が日本初公開。どれも10分以下なので小さな子どものいる家族連れでも楽しめるだろう。他にも、特別プログラムの一つとして、欧州のアニメーション教育機関が取り組む人材プログラムの紹介と、同プログラムの若手参加者による作品の上映が行われる。

 

特別プログラムとして、一般公開にさきがけプレミア上映されるオランダの作品『ハリウッドがひれ伏した銀行マン』は、映画への融資を積極的に行い、900本もの作品を世に送り出した実在の銀行マンの生涯を描く。主人公と親交のあった日本の映画人のトークショーも予定されている。また、ポーランドから来日するアンジェイ・ヤキモフスキ監督の講演も、注目したい特別プログラムだ。

 

EUのモットー「多様性の中の統合(United in Diversity)」の「多様性」を、映画は色濃く表す。本年の上映作品はほとんどが2011年以降に製作された新しいものばかりだが、その多様性は新しい作品でも変わらず、見る人は欧州への理解を深めることができるだろう。

上映作品情報、上映スケジュール、チケット情報、会場へのアクセスは、EUフィルムデーズ2016の ウェブサイトで。

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【招待券プレゼント】抽選でEU MAGの 読者4組8名様に、EUフィルムデーズ(東京会場)のチケットをプレゼントします。応募方法はこちらからエクセルシートをダウンロードし必要事項をご記入の上、件名に「EUフィルムデーズ2016」と書いて、6月17日(金)正午までにdeljpn-europe@eeas.europa.eu宛てにお送りください。当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。〈申し込みは締め切りました。多数のご応募ありがとうございました〉

関連情報

映画で旅するヨーロッパ~EUフィルムデーズ~」(2015年5月号 注目の話題)

新文化産業振興策 クリエイティブ・ヨーロッパ」(2014年10月号 政策解説)

欧州映画を世界に発信するEUの振興策」(2013年5月号 特集)

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