2015.5.19
EU-JAPAN
巨額の資金を注ぎ込んで世界的ヒット作品を生み出す米国映画とは一線を画す欧州映画。娯楽性が高い米国映画に飽き足らず、多様な人間模様を丁寧に描く欧州映画に魅了されるファンも多い。そんな欧州の映画を一堂に集めたユニークな映画祭「EUフィルムデーズ2015」が5月29日から6月21日まで東京国立近代美術館フィルムセンターで、また7月1日から同12日まで京都府京都文化博物館で開催される。
EUフィルムデーズは、欧州連合(EU)加盟国の在日大使館や文化機関が、欧州への理解を深めてもらう手段の一つとして、各国が推薦する映画作品を一堂に上映する映画祭だ。日本とEUの市民交流の促進を目的に、毎年5月に行われる「日・EUフレンドシップウィーク」の一環として開催されているもので、昔から日本で人気のフランス、イタリアなどの西欧諸国のほか、コアなファンを惹きつけてやまない中・東欧、最近おしゃれな女性の間で人気上昇中の北欧、なかなか触れる機会のないバルト三国やバルカン諸国などの国々の映画も上映される、貴重な機会として人気を集めている。
2003年の第1回の参加国は11カ国。持ち寄った11本の映画を3カ国がそれぞれ用意した会場で持ち回り上映していた。その後、回を重ねるごとに参加国も増え、2015年は、EU加盟全28カ国(うち日本に外交機関を擁すのは26カ国)のうち、過去最多の24カ国(東京会場)が協力している。
域内に数多くの伝統、文化、言語が存在しているEU。それら文化の多様性の保護と促進は基本的原則の一つであり、「United in Diversity(多様性の中の統合)」はEUのモットーになっている。映画は、このようなEUが重視する文化的多様性をさまざまな表現で映し出しており、欧州への理解を深めてもらう上で非常に有益なものになっている。
EUフィルムデーズのような欧州各国の映画を集めての上映会は、形式は違うが日本のほかカナダ、シンガポール、インドなどでも開催されており、各地で欧州映画の存在感を高めるのに一役買っている。
EUの映画産業振興策「MEDIA」120年前に欧州で生まれた「映画」を産業として保護・促進していくことはEUの重要な使命でもある。そのため、EUは総合的な文化振興支援策「クリエイティブ・ヨーロッパ」の中に映画産業振興に特化した総額8億ユーロに上る「MEDIA」という資金助成プログラムを設け、映画の製作・配給、また映画産業に関わる人材の育成などを支援している。 |
米国映画と対比されがちな欧州映画だが、その特徴には①映画の結末が予定調和的なものではなく、鑑賞者の想像に任されている作品が多い、②文化的に深く、洗練されている、③さまざまな言語、文化に触れることができる――などがある。例えば、『自転車泥棒』(日本公開1950年〈以下、同〉、イタリア)、『禁じられた遊び』(1953年、フランス)、『鉄道員』(1958年、イタリア)、『地下室のメロディー』(1963年、フランス)、『ひまわり』(1970年、イタリア)、『ベルリン・天使の詩』(1988年、フランス・西ドイツ合作)、『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989年、イタリア)などは、映画ファンのみならず、一度はその題名を耳にしたことがある作品ではないだろうか。どの映画も人生の悲哀や機微を巧みに描いた作品が多い。
EUフィルムデーズは、「普段接することのない、あるいは極めてその機会が少ない作品が上映される」ということが特長の一つ。さらに期間中は、上映作品の映画監督などゲストの来日もめじろ押しで、彼らを中心としたトークイベントなども数多く予定されている。
5月29日から24日間開催される「EUフィルムデーズ2015」のキャッチフレーズは、「映画で旅するヨーロッパ」。作品は、オーストリア、ベルギー(オランダ語作品とフランス語作品、各1本ずつ)、ブルガリア、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロヴァキア、スロヴェニア、スペイン、スウェーデンの24カ国が提供。日本初公開の映画は12本に上っている。なお、ほとんどの作品には日本語の字幕があるが、一部英語字幕で上映されるものもある。
EUフィルムデーズ2015のパンフレットはこちら(画像クリックで作品紹介の載ったPDFがダウンロード可)。
以下、本年のラインアップから日本初公開かつ日本語字幕付きで上映される作品をピックアップして紹介しよう。
EUフィルムデーズの入場料は、東京会場の一般料金が520円など、大変鑑賞しやすい設定となっている。駐日EU代表部広報部は、「この機会に、一人でも多くの方に、まだ知られていない欧州映画を鑑賞し、隠された魅力に触れていただきたい。映画を通して今の欧州を知り、EUを理解してもらうきっかけになれば嬉しい」と考えている。
上映スケジュール、チケット情報、会場アクセスなどはEUフィルムデーズ2015のウェブサイトhttp://eufilmdays.jp/をご覧ください。
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