2013.1.11
EU-JAPAN
「ヨーロッパハウス」は2011年8月に東京・港区に完成した、オフィス棟と住居棟からなる駐日欧州連合(EU)代表部の新拠点だ。その特異なデザインは「ヨーロッパの建築物を日本に持ち込む」という趣旨を体現している。しかも、外観だけではなく、館内にもさまざまなEU加盟国のアートが展示されており、この建物がEU代表部の事務所や職員の住居であると同時に、EU加盟国すべてのもの、すなわち、真の意味でのヨーロッパハウス(欧州の家)であることを具体的に表している。
在外公館が展示している芸術作品は、本国の外務省から提供されているものもあれば、独自に購入している場合もある。EU代表部の場合、在京のEU加盟各国大使館の協力の下、それぞれの国を代表する作品を提供もしくは紹介してもらっている。
2011年春から加盟各国大使館にアプローチを始めたところ、作品を寄贈、もしくは長期貸与してくれる大使館が少しずつ増え、打ち合わせスペースなど、多くの人が目にするところに、作品が展示されるようになった。駐日EU加盟国大使が毎月集まる会合や、各大使館の担当参事官が会する分野別会合などが開かれる大広間には、ハンガリー大使館から長期貸与された、ブタペストを描いた作品(写真左)が展示されている。 この絵の作家であるミヒャエル・クーデンホフ=カレルギー画伯は現在日本で暮らしており、日本との縁が深い。というのも、画伯の伯父は、第一次世界大戦後に汎欧州運動(欧州統合構想)を提唱した政治家で思想家のリヒャルト・クーデンホフ=カレルギー氏で、氏の母は日本人、青山光子である。なお、昨年、欧州統合に並外れた貢献をした人物に2年ごとに与えられる「クーデンホフ=カレルギー・ヨーロッパ賞」を受賞したヘルマン・ヴァンロンプイ欧州理事会議長は受賞の挨拶で、「欧州統合計画の原点は平和のためのプロジェクトであり、クーデンホフ=カレルギー氏の思想の中核をなすこの考えは、90年を経た現在もなお変わらぬ重要性を持つ」と述べている。こうした背景を受け、ハンス・ディートマール・シュヴァイスグート駐日EU大使は画伯の絵が展示されているこの大広間を、「クーデンホフ=カレルギーの間」と名づけている。
また、ポルトガル大使館から提供されたのは日本人作家・白須純氏の作品(写真右)。ポルトガル・タイル(アズレージョ)に書道用の柔らかい筆を用いて描いた繊細な作品になっている。
アイルランドからは、同国を代表する画家リチャード・ゴーマン氏の作品(写真左下)が提供された。ゴーマン氏も日本との関係は深く、日本に長期滞在した際に、和紙による作品を製作している。
さらには、2013年1月現在まだヨーロッパハウスに搬入されていないが、ドイツ大使館から、2012年にアーティスト・イン・レジデンスとして日本に招待されたドイツ人作家が日本で制作した彫刻が提供されることになっている。
その他にも、 日本に関係の深い作家の作品や加盟国を代表する作家の作品など、さまざまな美術作品の提供を受け、現在、20カ国から提供された23作品2シリーズの計30点が展示されている。加盟各国からの希望があれば、いつでも作品を公開。27加盟国(2013年7月にはクロアチアが加わって28加盟国)すべての作品がヨーロッパハウスに集う日もそう遠くはないだろう。
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2013年7月12日 更新
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