2020.3.31

Q & A

欧州中央銀行の新型コロナ危機対応の資産購入計画とは?

欧州中央銀行の新型コロナ危機対応の資産購入計画とは?

新型コロナウイルスの感染拡大による非常事態を受けて、欧州中央銀行は2020年3月18日に「パンデミック緊急購入計画」と題する一時的な資産購入措置を導入した。

Q1. 欧州中央銀行が導入する計画の内容について教えてください。

新型コロナウイルス感染症の発生と急速な拡大に伴う、経済への深刻なリスクの発生に対応するため、欧州中央銀行(ECB)の政策理事会は2020年3月18日、「パンデミック緊急購入計画(Pandemic Emergency Purchase Programme=PEPP)」を開始することを決定しました。これは、民間・公的部門の有価証券を対象とする、7,500億ユーロ相当の一時的な施策です。

政策理事会の記者会見に臨むラガルドECB総裁(右)(2020年3月12日、フランクフルト)
© European Central Bank 2020

Q2. なぜこのような計画が必要なのでしょうか?

2008年~2009年のショックと異なり、今回の新型コロナウイルス感染拡大による危機は、世界の隅々まで巻き込むものです。そのため、感染拡大対策が続く限り人々や企業の活動は収縮し、大部分の経済活動は一時的に停止状態となります。ユーロ圏の経済活動もかなり停滞し、公共政策だけではこれを防ぐことはできません。

金融部門の流動性を維持し、経済の全部門を支える資金調達条件を担保するため、金融政策は重要な役割を果たす必要があります。資金調達条件を引き締めるような施策は、新型コロナウイルス感染拡大による影響を悪化させるのです。

ECBの政策理事会は、自らの権限の範囲で必要な全ての対策を講じ、また、必要な量と期間、資産購入計画の規模を拡大し、その構成を調整する十分な用意があるとしています。

Q3. 新しい購入計画の実施期間は?

ユーロシステム(ユーロ圏の各国中央銀行が単一政策を実施する仕組み)は、PEPPによる購入を3月26日に開始しました。加えて、同月12日の政策理事会後に発表した1,200億ユーロ相当の純資産購入を含む、「資産購入計画(APP)」下の買い入れも続行しています。

PEPPに基づく買い入れは、新型コロナウイルス感染拡大の危機的な局面を越えたと判断した段階で終了しますが、いずれにしても、本年末までは継続されます。

© Pixabay

Q4. 本計画はどこで、どのように実施されますか?

ECBは、ユーロ圏の全ての国々に及ぶ、金融政策の速やかな波及を妨げるいかなるリスクも容認しないとの強い姿勢を示しています。

公的部門の債券購入については、引き続き各国中央銀行のECBへの出資割合(Capital Key)に応じて国別購入割合が決まります。しかし同時に、PEPPは柔軟な形で実施するよう構築されています。これにより、資産クラス全体や国家間で、購入額の配分を時とともに変動させることが可能になります。

Q5. 本計画では、何が対象となりますか?

PEPPでは、ECBの既存の資産購入計画「APP」の対象となっている全ての適格資産のカテゴリーを対象とします。加えて、ギリシャ政府発行の国債に対する適格要件は免除され、同国債も購入対象とします。

さらに、PEPPおよび「企業部門購入計画(CSPP)」(APPの一環)の双方で、適格資産の範囲を金融機関以外のコマーシャルペーパー(CP)に拡大し、購入することもできます。

 

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関連情報
Pandemic emergency purchase programme (PEPP) (ECB公式サイト、英語)

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