シンポジウム「日本とEU:共通の課題と協力の可能性」-9月25日

シンポジウム第一セッションの様子。左からモデレーターの中村英俊早稲田大学政治経済学術院准教授、小池議員、中川議員、イェゼック議員、トムツ議員 (写真提供:早稲田大学、以下同)

日本とEUの共通の課題と協力の可能性について国会議員と欧州議会議員が討議するシンポジウムが、9月25日に駐日EU代表部で開催された。本シンポジウムは、欧州議会対日交流議員団の一部のメンバーの訪日を機に、同議員団、日本・EU友好議員連盟、EUIJ早稲田および駐日EU代表部が共催したもの。

共通の課題として少子高齢化、移民、女性の活用を取り上げた第一セッションでは、女性初の防衛大臣を務めた小池百合子衆議院議員が、労働力人口の危機的な減少への対応には女性の活用が決め手となると、現政権が後押ししているウーマノミクスの推進を提唱、日本の政界、企業の取締役、省庁の幹部ポストにおける女性の比率の低さを指摘した。欧州議会の対日交流議員団団長のペトロ・イェゼック議員は、EUも日本と同様の問題を抱えており、特に労働力人口の減少や高齢化に伴う年金給付の増加は将来的に経済に多大なる影響を与える、と述べた。

EU側からの唯一の女性登壇者、ロマーナ・トムツ議員は、労働力人口減少と高齢化は大きな問題であり、現行の年金制度は持続可能ではない、と問題提起した。また、世界的に見て女性は依然として差別的な扱いを受けていると主張する一方で、個人的な考えとしながらも、女性の活用に向けたクォータ(割り当て)制度には、本来の実力で評価されるべき、と反対する立場を表明した。

第二セッション。左から2人目より石原議員、中川議員、ペテルレ議員、シルバ・ペレイラ議員

国会内の日本・EU友好議員連盟のメンバーであり、クォータ制度を推進する超党派議員連盟の会長でもある中川正春衆議院議員は、トムツ議員の意見を受けて、世界100位以下という低水準な日本の女性活用の状況の中では同制度導入は必要、と理解を求めた。他方、産業の空洞化が進む中、投資家をいかに日本市場に呼び戻すかが課題であり、そのためには人口構造の変化に対する確固たる政策を打ち出すことが重要であると力説した。

日本とEUの協力として、交渉中の戦略的パートナーシップ協定(SPA)および自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)※1を取り上げた第二セッションでは、ロイゼ・ペテルレ議員が、SPAに関し「貿易だけでは共通の課題に対処できない。政治的な枠組みが必要」と説き、40もの分野での協力について政治的な意志を表明するSPAに対する理解を促した。ペドロ・シルバ・ペレイラ議員は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)やEU・米間の環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)の交渉終了が、日・EU・FTA締結の条件という見方は間違っていると指摘。日・EUの交渉はTPPやTTIPとは別に進んでおり、進展は遅いかもしれないが、より野心的で包括的な協定を結ぶという目標を堅持すべき、と主張した。

石原伸晃衆議院議員は、「共通の価値を大切にする民主主義国家が、できるだけ共に繁栄するために、関税を見直していくのは当然。また、経済とは別の分野での協力は可能であり、必要」と日・EU間のFTAおよびSPAの意義に触れた。

シンポジウム盛会を祝って。左より中村准教授、イスティチョアイア=ブドゥラEU大使、後藤田議員、ペテルレ議員、イエゼック議員、石原議員、トムツ議員、シルバ・ペレイラ議員の、各参加者

シンポジウムは、全参加者からの日・EUのさらなる協力の可能性への期待と、日本・EU友好議員連盟事務局長の後藤田正純衆議院議員からの「我々のような成熟した社会は、モノの時代からコトの時代へ移りつつあり、人や体験を重視した交流を深めていくべき」という閉会の辞をもって締めくくられた。

 


※1 ^ :EU側はFTA、日本側はEPAと称している。

 

関連情報

本シンポジウムの案内(EUIJ早稲田のウェブサイト)