2017.12.12
EU-JAPAN
環境を重視した革新的な技術と実績を誇る欧州の先進的な中小企業が日本でビジネスチャンスを広げるために、EUが支援を行う「EU Green Gateway to Japan」プログラム。グリーンエネルギーや鉄道技術など、5つのセクターごとに、選りすぐりの企業からなる訪日団が続々とやってくる。
駐日欧州連合(EU)代表部が主導する「EU Green Gateway to Japan」は、環境に優しいグリーンビジネスと関連付けながら、さまざまな産業セクターで欧州の中小企業(SME)が日本の市場に参入し、日本企業と協働できるように支援するためのプログラムだ。「建設・建築技術」「グリーンエネルギー技術」「環境・水関連技術」「ヘルスケア・医療技術」「鉄道技術・サービス」の5つのセクター(下の表を参照)を対象に、2017年から2020年までの3年間で計12の企業団が訪日する。各企業団は選抜された欧州の中小企業からなり、展示会に出展してミーティングや商談を重ね、ビジネスパートナーとなり得る日本企業を見つけて、結果的に協働関係につなげることを目的としている。
EUは世界の中でも、持続可能な開発や気候変動などの地球規模の環境関連政策でリーダーシップを発揮していることから、欧州にはその取り組みの根幹を支える優れた技術を有した中小企業が数多く存在する。これらの企業にとって日本は、自社の技術力を活用できる魅力的な市場だ。
すでにグローバルな規模で展開している大手の多国籍企業とは異なり、欧州各国の中小の民間企業にとって日本市場への進出は、コスト面や法規上の制約、ビジネス習慣や文化の違いなどが障壁となり、チャレンジは容易ではない。そこでEU Green Gateway to Japanは、日・EU間のビジネスの機会を創出することを目指して、これらの企業をさまざまな側面からサポートしている。環境により負担の少ないグリーンビジネスを展開する欧州企業を支援することは、EUや加盟各国にとっても世界規模で環境問題を解決していくための一策といえる。
またこのプログラムは、日欧産業協力センター(EU-Japan Centre for Industrial Cooperation)と協調し、外国の中小企業が単独では取り組みにくい日本の公共調達にも参加できるようにサポートしている点も特徴的だ。公共調達は、本年12月8日に日・EU間で交渉が妥結した経済連携協定(EPA)とも関連しており、日本とEUの市場へ互いによりアクセスしやすくなることが見込まれている。
現在、本プログラムの対象となっている5つのセクターは以下のとおり。
EU Green Gateway to Japanが対象とする5つのセクター(2017年~2020年)
建設・建築技術
スマートグリッド、スマートビルディングとグリーンビルディング、機械セクター、建築資材と建物設備 |
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グリーンエネルギー技術
風力・太陽光・地熱などの発電技術、管理・制御システム、電気自動車、バイオ燃料技術、二酸化炭素排出量の削減を目的とする省エネルギー技術など |
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環境・水関連技術
排水処理、大気汚染制御、廃棄物管理、リサイクル、土壌保全、騒音防止、バイオガス、バイオマス、淡水供給、水処理 |
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ヘルスケア・医療技術
補助技術、医療機器、ヘルスケア向け情報通信技術(ICT)、遠隔医療と遠隔健康モニタリング、ナノ技術ヘルスケア、ライフサイエンス/バイオテクノロジー、歯科医療用製品 |
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鉄道技術・サービス
電子部品および技術を含む鉄道車両と機関車、鉄道インフラ、鉄道サービスの提供と保守、鉄道の指揮・統制・通信(CCC)、鉄道の保安、安全、および危機防止・管理 |
EU Green Gateway to Japanに参加する欧州企業が受けられるサポートは、訪日前の準備段階におけるブリーフィングから、滞在中の商談のセッティングやプロモーションのアドバイス、そしてミッション後のフォローアップにまで及ぶ。
まず、プログラムに参加を希望する企業は、対象セクターとの適合性や、グローバルに展開するためのビジネス戦略、市場進出のための企業体力の有無(資本・人材)といった、いずれも厳しい基準を満たす必要がある。選抜された企業は、訪日する前に「コーチング」と呼ばれる手厚いサポートを受ける。日本のビジネス習慣などに関してブリーフィングを受け、訪日中の会合や商談を行うビジネスパートナー候補のマッチングを進める。また、各企業は商談時に使用するマーケティングツールの制作や商談の進め方についてアドバイスを受ける。さらに帰国後には、フォローアップのレポートを受けられる。
EU Green Gateway to Japanのルーツをさかのぼると、1994年に発足したGateway to Japanというプログラムに至る。現在では、Gateway to Japanは欧州の中小企業が日本を含む複数国の市場に進出するのを手助けするEU Gateway | Business Avenuesというプログラムに発展している。EU Green Gateway to Japanは、その中でも日本のみを対象としたプログラムという位置付けだ。
以下の図でも分かるとおり、開催期間や対象となるセクター、開催国、参加するEU企業の数などはプログラムごとに異なっており、また規模もさまざまだが、「欧州の中小企業が日本、さらに韓国、中国、東南アジア諸国の市場へ参入するためのビジネスチャンスを提供する」というプログラムの主たる目的は、第1回の開催から現在に至るまで一貫して受け継がれている。
EU Gatewayプログラム概要の変遷(1990年~2020年)
第4回(2002年~2007年)までは日本のみを対象としていたが、第5回(2008年~2014年)では韓国を追加。さらに第6回(2014年~2015年)には、東南アジア諸国を追加し、日本を含むアジア圏を視野に入れたプログラムへと徐々に拡大してきている。なお、「EU Gateway | Business Avenues」という呼称は、こうしたアジア圏のプログラム全体を指しており、対象となる国や地域ごとに「EU Green Gateway to Japan」(日本)、「EU Gateway to Korea」(韓国)、「EU Business Avenues in South East Asia」(東南アジア)といったように名称を変えて、地域別のプログラムとして展開している。今期のプログラムにおいては、韓国と東南アジアで、すでに2016年からビジネスミッションがスタートしている(日本は2017年から)。
本年9月20日~22日に大阪で開催された、「スマートエネルギーウィーク大阪 2017」(インテックス大阪、大阪市)。同展示会は、EU Green Gateway to Japanの第1弾の訪日団となる。会期中には、欧州企業36社がEUパビリオンの下に出展し、グリーンエネルギー技術を中心に、太陽光や風力、水力、バイオガスなどの発電や、IoT※1を活用したエネルギー管理などに関連した400件近いビジネスミーティングを実施。参加企業の中には、すでに日本国内での特許を取得済みであったり、日本向けのサービスを具体化していたりと、日本企業との協業に意欲的な企業が結集した。
第2弾となる訪日団は、11月29日~12月1日に開催の大型国際展示会「鉄道技術展2017」(幕張メッセ、千葉市)に参加した。EU域内の中小企業にとっては、事前に準備した商談はもちろん、多くの来場者とオープンに接することもできる絶好の機会だ。最先端の鉄道技術を誇る欧州企業約40社からなる訪問団は、EU・オーストリア・フランスとの共同パビリオンに出展した。
運転技術取得用シミュレーターの設計を専門とするLander Simulation & Training Solutions S.A.(本社・スペイン)のマーケティング&セールスディレクター、アナ・オルソン氏は「日本の鉄道市場は非常に大きいが、同時に参入が難しい。この展示会で関係者からフィードバックを得て、日本市場への納入促進につなげたい」と語った。
公共交通機関を対象に測定サービスを提供しているDeutzer Technische Kohle GmbH(本社・ドイツ)の執行役員兼ゼネラルマネージャー、フレデリック・ドイツァー氏も、「世界各国でビジネスを展開してきたが、日本ではまだ実績が無い。日本は全国的に鉄道網が完備されており、非常に期待できる市場」と、日本とのビジネス交流に意欲を燃やす。
2018年以降、訪日するセクターは次のとおり。なお、グリーンエネルギー技術は、2017年に引き続いて2018年、2019年にも行われる予定だ。
● 2018年4月16日~20日 ヘルスケア・医療技術(東京ビッグサイト、東京都江東区)
● 2018年5月21日~25日 環境・水関連技術(同上)
● 2018年6月18日~22日 グリーンエネルギー技術(未定)
● 2018年11月19日~23日 建設・建築技術(未定)
グリーンビジネスのグローバル市場で、互いに高い技術力を誇るEUと日本。EU Green Gateway to Japanをきっかけとして、日本と欧州企業の協働関係が続々と生まれる中、さらなる経済成長への期待が高まっている。
※1 建物や家電、自動車、医療機器など、身の回りのあらゆる物がインターネットを通じてつながる新しいサービスやビジネスモデル、またはそれを可能とする技術の総称。
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