2024.5.14
EU-JAPAN
駐日欧州連合(EU)代表部は、現EUの正式な代表部が日本に開設されて今年で50周年となることを記念し、この1年間EU代表部のSNSや各種広報資料に使うロゴのデザインを公募した。多数の応募の中から、東京都内のデザイナー青木誠さんのデザイン(トップ画像)を最優秀作品として選び、賞品の一環で4月中旬には駐日EU大使公邸でのパケ大使との昼食会に招待。昼食会後、青木さんにロゴコンペに応募した動機やロゴに込めた思いなどを聞いた。
SNSでロゴのデザインを募集していることを知りました。今まで、大使館など公的機関のコミュニケーションに関する仕事をした経験がなく、とても興味をそそられました。こういった機会は望んでもなかなか得ることはできない上に、新しい経験になる良い機会になると感じ応募しました。
応募した時点では、EU代表部の存在を知らず、EUに対しての理解もそれほど深いものではありませんでした。知っているのはニュースで見聞きするような一般的な情報で、EU代表部が日本でどういった活動をしているかについての知識は無く、新しいことを勉強し、新しい知識を得ていくことは良い経験になると考えました。
自分が知らないことが多かったので、まず50年間の歴史をひもとくことから始めました。日本とEUは貿易摩擦も含め色々なことがあった上で現在があるので、その中で信頼や相手に対するリスペクトが生まれてきたのではないかと感じました。そういった長年の関係性をロゴの中に込めることを目指しています。
日本とEUは多岐にわたって接点があり、複雑な関係性があることを理解しました。しかし、それをそのまま複雑なものとして表現した場合、ロゴを初めて見た人が日本とEUが積み上げてきた複雑な関係性を理解することは非常に難しいでしょう。さまざまな事柄を踏まえた上で関係性が整理されてきたので、そのシンプルな関係性をどう表現するかという方向に徐々に考えが変わってきました。一瞬で感じたものの先に理解が生まれてくるので、最初の第一歩をどう表現するかということを軸に考えを組み立てました。
デザインに携わる身として、欧州で生まれた現代につながるデザインの大きな源流を意識し取り入れながら、戦後日本のモダンデザイン、そして日本古来の漢字などの文字に込められた日本人独特の文化的背景や美的感覚も含めてどう表現し、全体としてどう調和がとれたものにするかという点も今回の大きなチャレンジとして捉えています。
EUと一くくりで言っても多言語・多文化であるので、多くの人が知らず知らずのうちに欧州に対して感じている、全体に共通する印象や認識を効果的に取り入れていく必要があると考えました。それを日本的な感覚とうまく調和させていくことを軸に、アルファベットと漢字、楯組みと横組み、それらにそれぞれの特長を抽出し、組み合わせて全体を調和させて構成しました。
EUの人も日本人もアルファベットは読めるので、その点を生かして考えてみたのですが、2つの異文化、色々な背景を持った日本とEUの関係性を適切に表現できるのか疑問でした。ぱっと見た時に感じられる、日本は日本、EUはEU、それぞれ独立した存在の関係性をいかに調和的に表現するかを実現するために試行錯誤しました。
EUに関する情報をたくさんインプットすることで、どういう方向性で伝えるべきかを整理しました。デザインは最後にはロゴとしての形状に落とし込む必要がありますが、最終的なアウトプットに持っていく手前の段階がデザインの肝だと思っています。正しい情報をインプットして、アウトプットを踏まえた上で咀嚼(そしゃく)し、整理し、体系立てて伝えるというプロセスを踏んで視覚化を行いました。
見る人は、過去の50年間を復習する必要はなく、現在の姿やこれからの未来を感じてもらうきっかけになれば良いと考えています。日本とEUが50年かけて築いてきた強固な関係性、それぞれが独立し相手をリスペクトして共に歩んできているという姿が感じられるようにという願いを込めてつくりました。
ロゴをつくるまでのプロセスをもう一度ひもとき、その流れを時間軸に沿って視覚化しました。日本とEUには色々な側面や接点があり、今まで積み上げてきたものがたくさんある中で、それが全て整理されて一つの関係性になっていく流れを表現しています。
大使というともっと近づき難いイメージを抱いていました。しかし、実際にお会いしたパケ大使は日本に対してとても興味を持っていて、もっと知りたい、もっとコミュニケーションを取りたいという思いが強く伝わってきました。そんな大使のお人柄も当然あると思いますが、スタッフのみなさんも含め、気取りなく積極的に人とコミュニケーションを取ろうとする姿勢は、自分とEUとの距離を縮めてくれました。
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