2019.8.27
OTHER
日本とEUは、両地域の修士課程の学生を対象とした初の「日・EU共同修士課程プログラム」の共同公募を行い、このほど3つのプログラムが選ばれた。EUにおける教育の国際化とともに、高等教育分野での日・EU協力の進展にも触れる。
日・EU共同修士課程プログラムとは、日本と欧州連合(EU)双方の高等教育機関がコンソーシアムを作って提供するもので、双方の学生はプログラムを通し、ジョイントディグリーやダブルディグリーといった修士学位を取得できる。このプログラムのために、日本側は文部科学省が「大学の世界展開力強化事業」、EU側は欧州委員会が「エラスムス・プラス」プログラム内の「修士課程のジョイントディグリー(エラスムス・ムンドゥス・ジョイントマスターディグリー=EMJMD)」の枠組みを通して、共同公募という形で募集された。
公募の審査結果は、2019年7月31日に日本とEUで同時に発表され、応募10件のうち以下の3件が選ばれた。
上記の3プログラムには、日本の文部科学省とEUの欧州委員会が均等に拠出する総額900万ユーロの予算が提供される。また、今回提供される資金の一部から、各プログラムで最も優秀な学生に対し、全額支給の奨学金が最大64人分(毎年日本から8人、EUから8人の4年分)授与される。これらのプログラムの下、世界中の優秀な学生は各プログラムに参加している日本と欧州の大学の少なくとも1校ずつで学ぶことができ、ジョイントディグリーやダブルディグリー、または複数の修士号を取得する。
選定結果の発表に際し、ティボル・ナヴラチチ欧州委員会教育・文化・青少年・スポーツ担当委員は「今回選定された3つの共同修士課程プログラムは、高等教育における日・EU協力のモデルの一部として、学生の才能を育成し、卓越性を促進し、科学技術とイノベーションを強化することで素晴らしい成果をもたらすと確信している」と述べている。
EUは、1987年に欧州内交換留学プログラム「エラスムス(European Region Action Scheme for the Mobility of University Students=Erasmus)」を開始。2004年からは、「エラスムス・ムンドゥス」で交流対象を欧州外にも拡大した。現在は「エラスムス・プラス」(Erasmus+)をEUの中心的な教育資金助成プログラムとして、EU域外の学生にも門戸を開いている。同プログラムは、2020年までの7年間に147億ユーロの予算を拠出し、世界中の約400万人の学生や成人に研究や訓練の機会を提供する。
エラスムス・プラスの中で、日本の大学、学者、学生が参加できるプログラムは以下の3 つ。
① 国際単位移動制度(International Credit Mobility)
② エラスムス・ムンドゥス修士課程ジョイントディグリー(Erasmus Mundus Joint Master Degree)
③ ジャン・モネEU研究コースおよびセンター(Jean Monnet Activities)
このうち、②の「修士課程ジョイントディグリー」では、欧州の複数の高等教育機関で構成する「コンソーシアム」のプログラムを通じて、全世界の学生に欧州の少なくとも2カ国で学ぶ機会を提供する。全課程を修了すると、これらの教育機関が共同で付与するジョイントディグリーまたはダブルディグリー(修士の学位)を取得できる。
なお、「日・EU共同修士課程プログラム」について、エラスムス・プラスの中の「エラスムス・ムンドゥス・ジョイントディグリー」の予算の中で実施されるが、2つのプログラムの仕組みは別個のものである。例えば、日・EU共同修士課程プログラムでは、日本人学生への奨学金が保証されており、また日本人学生も必ず日本の参加大学最低1校で学ばなければならない。
今回決まった「日・EU共同修士課程プログラム」は、高等教育機関の国際交流を推進してきたEUの歩みを経て実現したといえる。日本とEUはここ数年、高等教育分野での連携強化に向けて対話を続けており、今回の共同公募事業が緒に付くまでには、近年さらに高次レベルでの調整が重ねられた。
2016年5月下旬のG7伊勢志摩サミット(主要7カ国首脳会合)に先立って開催された「G7倉敷教育大臣会合」で、新時代の教育の役割や新たな国際協働の在り方についての本格的な協議がスタート。この中で欧州委員会のナヴラチチ委員と日本の馳浩文部科学大臣(当時)が、高等教育分野における両者相互協力への強い関心を示した。
G7教育大臣会合の際の日・EU二者会談を受けた、東京でのフォローアップの後、2018年1月にはブリュッセルを訪問した林芳正文部科学大臣(当時)はナヴラチチ委員と会合を持ち、年内の政策対話実現で合意。この結果開催された同年7月6日の第1回「日・EU教育・文化・スポーツ政策対話」で、ナヴラチチ委員と林大臣は、具体的に共同公募事業を開始することで正式合意した。
日本とEUの首脳たちも、この合意を全面的に支持。ドナルド・トゥスク欧州理事会議長、ジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長、日本の安倍晋三総理大臣は2018年7月と直近2019年4月に行われた日・EU定期首脳協議後の共同声明の中で、日・EUの教育・文化・スポーツ政策対話の実施を歓迎、また直近の共同声明では両地域の大学から成るコンソーシアムを通じた修士プログラム共同公募事業も歓迎した。
以上の一連の動きは、今年2月に暫定適用された日・EUの戦略的パートナーシップ協定(SPA)とも連動する。同協定の第40条は、教育、青少年およびスポーツの分野を規定し、その第2項で「両締約者は、適当な場合には、教育、青少年及びスポーツの分野における協力活動(例えば、共同の事業、人的交流並びに知識及び経験の交換)を奨励する」ことを明記している。
さらに、両者の高等教育分野での関係強化は、EUが推進する連結性戦略(Connectivity Strategy)とも合致する。交通手段、エネルギー、人的交流、デジタル接続など多様な分野を網羅し、EUとアジア両地域の経済的、人的な絆をより深く発展させていく目的を持つ連結性戦略において、今回の共同公募事業は重要な意味を持つ。
選定された各コンソーシアムは、今秋には自身のプログラムに関する情報を掲載したウェブサイトをそれぞれ立ち上げる予定だ。駐日EU代表部でも情報をシェアするので、関心のある日本の学生の方は、ぜひチェックしてほしい。
2024.11.15
WHAT IS THE EU?
2024.11.7
EU-JAPAN
2024.11.6
EU-JAPAN
2024.10.28
Q & A
2024.10.21
FEATURE
2024.10.21
FEATURE
2024.10.28
Q & A
2024.11.6
EU-JAPAN
2024.11.7
EU-JAPAN