2019.11.12
OTHER
2019年10月5日、 科学技術イノベーション分野における日欧間の協力関係の強化を目 的とする「第10回日EU科学政策フォーラム」 が京都で開かれた。本年は「変化する世界における新しいSTI政 策」をテーマに、例年どおり、日欧からの政策立案者、 資金助成機関・研究機関の責任者、研究者、 イノベーターをはじめとする数多くのハイレベルな参加者が集まっ た。
欧州連合(EU)と日本は、長年にわたり科学技術イノベーション(STI)分野での協力関係を培ってきた。本年で10回目の開催となる「日EU科学政策フォーラム」(EUおよび日本の政策研究大学院大学〈GRIPS〉の共催)では、世界の著しい変化に即した新しいSTI政策の事例として、さまざまな計画や枠組みが報告されたほか、両者の協力体制をさらに広げるための活発な提言があった。
欧州では現在、2021年~2027年にかけてEU全般の研究・イノベーションを推進する枠組み計画「ホライズン・ヨーロッパ」の準備が行われている。これは1,000億ユーロ近くの予算の投入が提案されている、野心的な資金助成プログラムである。
日本では、2021年に施行される「第6期科学技術基本計画」(2025年までの5年計画)策定作業が続いている。さらに、人工知能(AI)やビッグデータなどの新技術を駆使した「ソサエティ5.0(Society 5.0)」と呼ばれる豊かな未来社会の実現や、破壊的なイノベーションの創出に挑む「ムーンショット型研究開発計画」に向けた準備も進められている。
本フォーラムの開会にあたり、前GRIPS学長の白石隆名誉教授と共同で議長を務めたパトリシア・フロア駐日EU大使は、近年の日欧関係の進展や、現存する両者間の協力のための制度的枠組みに触れた。さらに「ホライズン・ヨーロッパ」と「第6期科学技術基本計画」の実施を2021年に控え、それぞれの計画に関する情報を交換する絶好のタイミングであることも強調した。
また、「科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)」の尾身幸次創設者兼理事長は、日・EU間の協力関係を新たに広げていくことは大いに可能であり、具体的な一歩を踏み出す時が来たと語った。
本フォーラムは、2015年5月に日・EU定期首脳協議で採択された共同ビジョン「日本国政府と欧州委員会との間の研究・イノベーションにおける新たな戦略的パートナーシップに向けて」と合致するものだ。2019年2月には、日・EU間の経済連携協定(EPA)が発効するとともに、戦略的パートナーシップ協定(SPA)が暫定適用となり、さらに同年9月には、デジタル・インフラ投資協力を目的とするコネクティビティパートナーシップに署名されたばかりである。
欧州委員会研究・イノベーション総局のジャン=エリック・パケ総局長は、こうした一連の流れの勢いに乗って、日欧の協力関係を次の段階へ引き上げることができると語った。また、「ホライズン・ヨーロッパ」より、都市の二酸化炭素排出、気候変動や土壌と海洋の問題、がんなどの地球規模で差し迫った課題に対し解決策を見いだすといった、社会への恩恵が期待されている、と述べた。
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)常勤議員の上山隆大博士は、少子高齢化の問題解決や健全な地球環境の回復、新たな科学技術フロンティアの開拓といった取り組みが期待される「ムーンショット型研究開発企画」で国際協力を呼び掛けるほか、社会科学や人間性を取り込みながら、包括的な社会の変換を目指す「第6期科学技術基本計画」に向けた準備について詳説した。
山脇良雄文部科学審議官は、論文の掲載や引用などの科学研究活動で日本が後れを取っていることの解決策として、文部科学省が国際協力研究を含む人材開発と研究費の支援を改革し、研究環境の改善を図るための研究力向上計画を導入する、と説明した。
STI分野における日欧の連携強化を巡るディスカッションでは、アニータ・ムイズニアツェ教育科学政務官(ラトビア)が、同国のSTIシステムの改革概要を紹介。マチルダ・エルンクランス高等教育研究大臣(スウェーデン)は、EU域外からも研究に参加でき、EUと世界各地のパートナーが協働できるプログラムとして、「ホライズン・ヨーロッパ」を歓迎する、と述べた。
続くSTI政策に関するディスカッションでは、日欧の協力関係を広げ、その進歩を測るマイルストーンを具体的に挙げることが求められた。
例えば、研究者、とりわけ若手研究者が交流できる仕組みづくりや、国際協力を推進し普及することのできる人を増やすこと、また既存の研究協力を土台にそれらを他国へも広げること、などが提唱された。そのほか、日欧の研究者が個人情報などのデータを共有し活用するための具体的な措置を導入することや、STI政策やその見通し、オープンイノベーションに関する情報交換を強化していくことも挙げられた。さらに、市民に対して科学研究への参加を呼び掛け、意識を高めることも提言された。
日欧の研究助成機関が協力して、「FAIR原則」(データ共有の基準)に沿った研究データの扱い方や管理方法を探るという提案も出された。
以上に加え、人工知能(AI)の社会的影響などを異なった文化的視点から捉える共同研究を増やすこと、あるいはデータアナリティクスを用いて日欧の協力関係や研究の強み、活動状況を分析し、新しい取り組みや出資方法を見定めることも挙げられた。社会的な側面では、STI分野における男女平等問題に対し、EUと日本が共通したアプローチで取り組んでいくよう進言された。
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